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夜明けの星の黙示録【R15】  作者: アレクサンドル・スケベスキ
第七章 スタルディア星王国編

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第108話 帝国戦闘教義

――翌日:カナン


「おうアレク。来てやったぞ」


赤鬼姉妹の二人に声を掛けられた。


■スカエルヴァ

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】


■オリガ

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】


兵士訓練の為、召集していたルベル=オーガが到着したようだ。


集まったルベル=オーガの人数は10人。

いずれも、魔人族―オーガの女たちだ。

本職の傭兵だけあって、皆身体がデカくて迫力がある。


「おお、来たか!よろしく頼む」


スカエルヴァめ。

交渉がまとまりかけた時、

温泉宿の貸し切りや飯など当然のように追加の要求を積み上げてきやがって。

足元見やがったこと、忘れんぞ……


「そんじゃ、早速模擬戦すっか。

 どんなもんか見せてみろ」


おいおい、いきなり模擬戦だと!?

こちとら碌に訓練も積んでいない素人だと伝えただろ。


「くれぐれも

 ケガだけはさせないように頼むぞ」


「わーってるって」


呼んどいてアレだけど

こいつら頭のネジ外れてるからな…不安だ。


「よろしくお願いしまーす!」


元気よく挨拶するのはレイ、リル、アルフの聖騎士3人組だ。


■聖騎士3人組

―――――――――――――――――――

・レイ:人間族:ケルティア人:♂:8歳

・リル:人間族:ケルティア人:♂:7歳

・アルフ:人間族:ケルティア人:♂:6歳

―――――――――――――――――――


教会の信者が増えたことで、

新たに「司祭」となったヘレンが任命した聖騎士達である。


■"性犯者"ヘレン

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】


「みんなー!がんばってー♡」


そんなヘレンは、黄色い声でレイ達を応援してやがる。

運動会と勘違いしてねぇか?


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ルベル=オーガと訓練生が向かい合う。


訓練生の数は、各村から集まった総勢30人。

正規の兵士のジョブの者もいるが、

兵士候補も含まれている。


対するルベル=オーガは10人。

数だけ見れば、こちらに3倍の戦力差があるのだが……

さて、どうなる。


「いつでもいいぞ」


スカエルヴァの合図で模擬戦が開始される。


「うおおおー!!」


同時に、レイが単騎突撃をかます。

その気持ちは分かるぞレイ。

好いた女の前でいいところを見せたいのは

男のサガだよな。困ったもんだ。


レイの背中を追うように、

リルとアルフのチビっこ二人も元気よく駆け出した。

その勢いに釣られ、兵士たちまで突撃を開始する。


「フンッ!」


スカエルヴァが訓練用の投げ槍を豪快に放つ。

槍は一直線に飛び、レイの進路のすぐ先へ。


※ズドン!!※


地面に突き刺さった瞬間、土が盛り上がり、

小さな丘みたいに隆起した。


おいおいおい!!

訓練用とはいえ、時速200キロ位出てなかったか!?

直撃したら死ぬぞ!!


それを見たチビ達は、

「ムリムリムリ!」と言わんばかりに

鮮やかなUターンを決め、こちらに戻って来た。


よし。チビ達はそれでいい。

本番は後ろの兵士達だ。


もうすぐ訓練生がルベル=オーガに接敵する。

さあ、どうなる。

……


勝敗は、交戦した瞬間に決まってしまった。


ルベル=オーガとぶつかるや否や、

訓練生は軽々と吹っ飛ばされ、後続は恐慌状態で逃げ出した。


あれよあれよという間に潰走状態となり、

接敵から僅か10秒―――

訓練生は見事なまでに壊滅していたのだ。


「……どうだった?」

「どうだったも何もないだろ」


あまりの弱さに

さすがのルベル=オーガ達も絶句している様だ。


「あっちのダークエルフ達はマシなようだし、

 弓兵中心でやっていくしかねぇんじゃねえか?」


隣でタリオンから指導を受けているエル=ネザリの傭兵たちは、

スカエルヴァから見ても戦えるらしい。

まぁ、これは収穫か。


「そうは言ってもなぁ。何とかならんか?」


俺がぼやくと、

スカエルヴァはヘレンの所で休んでいるレイ達に視線を巡らせた。

そして口元を歪め、ペロリと舌を出しながら言った。


「まずは男にならねぇとな…

 今から男にしてやろうか♡?」


ビクっとするレイ達を庇うように、

すぐさまヘレンが反応する。


「ダメです!レイ君たちはまだ

 精通していないんですよ!」


どうしてチビ達の精通事情に詳しいんですかね?

ヘレンの"性犯者"の称号、

暫く大人しくしていれば消え去るらしいが、

一体いつになったら消えるんだろうな?


そんなやり取りをしていると、

イーリア、オリヴィア、フィーラの3人がこちらへ歩み寄ってきた。


「あの、次は私たちも参加してもよろしいでしょうか」


…次?

今の惨状を見たうえで、まだやる気なのか。


「お、おう。いいぞ」


反射的に了承しちゃった。

三人は軽く頷くと、近くの兵士たちを呼び集め、

何やら真剣な顔で作戦会議を始めた。


「話し合って強くなるなら苦労しないぞ」


オリガから突っ込まれる。

俺もそう思うのだが……


「まぁ、もう一戦頼むわ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


模擬戦の第二回戦が始まった。

聖騎士のちびっこ達が抜け、

代わりにイーリア、オリヴィア、フィーラの3人が入った形だ。

だが、さすがにどうこうできる戦力差では無いと思うのだが。


……ん?

あいつら、今度は10人×3列の陣形を組んでやがる。

前衛は盾と槍、2列目は長槍、

3列目は盾と剣で装備を揃えているな。

何か試すつもりだな?


「シールドウォール!」


イーリアが何やら号令を出すと、

前衛の10人が盾の壁を作りながら前進を開始した。


「ほぉ」


スカエルヴァは感心している様だ。

ルベル=オーガは投擲などのアクションは無駄だと思ったのか、

動かない。


…もうすぐ接敵するぞ。その時。


「ファランクス!」


前衛と2列目が槍を構えた。

前衛は突き、2列目は上から叩くような格好だ。


「おお!?」


随分不格好に見えるが…

ルベル=オーガが戦い辛そうにしている。

あの密集した槍は見た目以上に厄介なのか?


なんか…ルベル=オーガが捕まった格好になり、

戦いになっているぞ!?


「アンヴィル・ハンマー!」


号令と共に3列目が横に飛び出す。

オリヴィア、フィーラもここに加わっており、

ルベル=オーガの側面に襲い掛かった。


「ちぃ!」


今まで様子見だったスカエルヴァはまずいと思ったのか、

正面に対する攻勢を強めた。


「インヴァーテッド・ヴィー!」


だが、呼応するように盾の中央が後退していき、

逆V字の形をとる。徐々にルベル=オーガ達を引き込んでいく。


あれ、これ……

ルベル=オーガが包囲されかけてないか?

あるのか?まさかあるのか!?


………だが、ここまでだった。

ルベル=オーガが本気を出してきやがった。


挟撃を試みたオリヴィア、フィーラは共にオリガに倒されると、

スカエルヴァが盾兵を突破し、3列目の指揮官、イーリアを捕らえた。

訓練生たちここで降伏(サレンダー)


だが、負けたはずの訓練生たちは

興奮した様子で健闘を称え合っている。


「惜しかったよな!今の!」


逆に、勝ったはずのルベル=オーガは落ち込んでいる。

戦闘の素人たちに、プロであるはずの傭兵が、

本気を出さざる得ない所まで追い込まれたのだ。


「姉御…今のは…」

「……嬢ちゃん、あんた何者だい?」


やべぇ。スカエルヴァの奴、キレてないか!?

慌てて止めに入る。


「あー、彼女の名前はイーリアだ。

 訳あってカナンで滞在していてな。

 珍しい"軍師"のジョブを持っているんだ」


そしてイーリアの方に振り返る。


「それよりイーリア、驚いたぞ。

 今のが"帝国の戦術"ってやつか?」


「は…はい。

 正確には"帝国戦闘教義"と言います」


「…?どう違うんだ?」


「装備や地形に合わせて”陣型”を組み、

 敵に合わせて"戦型"を整え、

 そして"戦術"をもって勝利に導く。

 これら全てを総括したものを、

 "帝国戦闘教義"といいます」


……なるほど。

”陣型”、"戦型"、"戦術"。

この3つの要素を組み合わせて戦うのが、

戦闘教義(ドクトリン)ってやつなのか。

何やら複雑そうだぞ。


…ん?

気が付けば、訓練生たちの予想外の善戦に、

なんだなんだと人が集まって来ており、

イーリアを取り囲んで小さな輪ができていた。


カラドクもタリオンも、いつの間にか弓の訓練を放り出し、

他の者たちと一緒になってイーリアの話に耳を傾けているではないか。


そんな中、フィズルが食い気味に質問する。


「あ、あの!1つ目の要素、

 ”陣型”にはどのような型があるのでしょうか?」


「はい。基本的な陣形は10個ありまして…」


■帝国・基本陣型

―――――――――――――――――――

1.横陣――"ライン"

2.縦陣――"カラム"

3.三角・楔形(くさびがた)陣――"ウェッジ"

4.四角・方陣――"スクエア"

5.菱形陣――"ダイヤモンド"

6.円陣――"サークル"

7.散開陣――"スカーミッシュ"

8.斜め一列・雁行(がんこう)陣――"ギースライン"

9.鉤形(かぎがた)陣――"フック"

10.逆V字陣――"インヴァーテッド・ヴィー"

―――――――――――――――――――


なんと…1つ目からいきなり数が多い。

ちょっと心が折れそうだ。


だが、そんな俺の気持ちなどお構いなしに、

フィズルは目を輝かせ、次の質問を投げかける。


「なるほど!では戦型(せんけい)には

 どのような型があるのでしょうか?」


戦型(せんけい)は兵科によって分かれています。

 先ほどのは歩兵戦型ですね…」


■帝国・歩兵戦型

―――――――――――――――――――

1.盾による前方防御壁――"シールドウォール"

2.盾による全方位防御――"テストゥド"

3.盾と槍による密集戦形――"ファランクス"

4.槍による横陣戦形――"パイクライン"

5.槍による円陣戦形――"シルトロン"

―――――――――――――――――――


確かに"シールドウォール"とか、

"ファランクス"とか号令かけていたな。


…いやちょっと待て。ここで兵科毎に分かれるだと?

最終的にはどれだけの数になるんだよ。


「弓兵や騎兵の戦型もあるのか?」


カラドク、お前も興味深々か。

まぁ、弓兵を指導する立場だ。覚えておきたいか。


「はい。弓兵や騎兵の戦型も存在します。

 一応、ラエルノア魔法教団の魔法戦型、"マグナ・マギア"も習うのですが…

 帝国では魔法戦型が発達しておらず、存在を押さえる程度に留まっています」


ラエルノア魔法教団も戦型を持っているだと!?

そう言えば十字軍に参戦していたんだよな…

そりゃ持っているか……ラエルノア達も戦って来たんだよな。


「"シルトロン"と言うのは初耳ですね」


タリオンまで会話に参加する。

何やらある程度心得があるような言いっぷりじゃねーか。


「"シルトロン"は近年、北方ノルド…

 グリム=ガルド剣王国で発展した戦型です。

 騎兵に強く、弓矢に弱い特徴があります」


「なるほど…」


戦型毎の強弱も覚えているのか…うひゃ~。


フィズルが息を呑むように問いかける。


「それで…戦術はどのようなものがあるのでしょうか?」


せめて戦術が少数であれば、俺でも覚えられそうか?

頼むぞっ…!ごくり…!


「戦術は数が多くてですね、代表的なものでも…」


■帝国・戦術

―――――――――――――――――――

・"突撃戦術(チャージ)"

 └敵陣へ突入する。自陣の損耗も激しい。


・"金床戦術(アンヴィル・ハンマー)"

 └部隊を二手に分け、挟撃する。


・"包囲戦術(エンベロープ)"

 └敵の側面、背後に展開し包み込む。


・"両翼包囲網(ダブル・エンベロープ)"

 └敵の側面を同時に攻撃し、包囲殲滅する。


・"攻囲戦術(オブセッシオ)"

 └城を取り囲み、攻め落とす。


・"十字砲火(クロス・ファイア)"

 └弓矢、投擲、魔法を効率的に浴びせる。


・"空洞戦術(ホロウ・スクエア)"

 └中央に補給、ヒーラー、負傷者を配置する。


・"殺傷領域(キルゾーン)"

 └敵を誘い込み、集中射撃を浴びせる。


・"各個撃破(ピースミール)"

 └多数対少数を繰り返し、優位に立つ。


・"焦土作戦(テラ・ウスタ)"

 └敵の補給線を伸ばすため、自領の資源を絶つ。


・"撤退戦術(リトリート)"

 └戦地から脱出を図る術。

  数ある戦術の中で最も難しいと位置付けられている。

―――――――――――――――――――


あ、うん。無理だ。

とても俺に扱えるものではない。

こういうのは全部フィズルに任せよう。


俺が心を折って諦めていると、

スカエルヴァが一歩前に出た。


「驚いたね…まさかここまで体系化が進んでいたとは。

 嬢ちゃん。アタシに”帝国戦闘教義”ってやつを教えてくれないかい?」


!?

どうしたんだよスカエルヴァ!?

お前はこっち(脳筋)側だろう?


「ええ、皆さんのお力になれるのであれば、

 是非そうしたいのですが、

 皆さんにお伝えしなければならないことがあるのです」


そうしてイーリアは静かに語り始めた。


自分は元々スタルディア星王国の帝国士官学校に在籍していたが、

ブルスター家のクーデターに巻き込まれ、カナンまで逃げてきたこと。


そして――

軍師という役職は、本来なら最後の1年をかけて"味方を切り捨てる訓練"を受けるのだが、

自分はその最終課程を修了できていないのだと。


………凄まじいな。

帝国は戦闘をここまで体系化させ、

されに人の心を絶った軍師まで育て上げていたとは…

かつての帝国が、金星で覇権を握った理由を垣間見た気がする。


「構いやしないよ。

 それじゃあ、嬢ちゃんまだ"人間側"ってこったろ?」


スカエルヴァの申し出に、

フィズルとカラドクも続く。


「は…はい!

 私でよければ是非……!

 皆さんよろしくお願いいたします!!」


ついさっきまで、カナンでどこか浮いていた存在のイーリアが、

今では皆の視線とリスペクトを一身に集めている。


――"与えねば返らぬ"か。

ここで自分の居場所を掴み取ったのだな。イーリア。

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