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異世界巨神考  作者: 九行 透
第二章 「ろぼっと始動と神話の終わり」
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11/21

壱話

第二世代

“模倣者”「ネズレ」

全長:約27フレド(訳注:8.2m)

主武器:斧槍他


 第二世代の機体について語る前に、まずは“ろぼっと”という言葉について語るべきであろう。

 現在、“ろぼっと”という言葉は「人が搭乗して制御する、人型ないしそれに近い形状の大型魔導機械」という意味で広く使われている。すでに一般名詞と化してはいるが、実は語源を探るとかのシライ・マサトに行き着く。正確には彼の定義はもう少し単純で、以下を指すものであったという。

「人が操縦する、大型の人型機械」

 要はそれまでに無かった新たな概念を表現するのに彼が示した単語を丸ごと用い、それが定着したということだろう。シライの出自は不明であり異世界から来たとの噂もあるが、彼の出身地には“ろぼっと”に類するものが存在していたか、少なくともその構想があったものと推定される。

 とはいえこの定義からみると、第一世代の機体は純粋な“ろぼっと”とは言い難い。シライは“ろぼっと”に乗り込んだわけではなく、己の魔力で機体を形成し、制御していたからだ。その意味では第二世代の「ネズレ」こそが、本来の意味でこの世界に誕生した初の“ろぼっと”だと言えるだろう。



―― 帝国暦334年:王国首都・騎士団宿舎 ――


 王都は常ならぬ緊迫感に包まれていた。

「帝国、軍を発す」

 間諜からのその急報により、軍司令官と主要貴族に緊急招集がかかったのだ。軍需物資を載せた荷車や伝令が互いを押しのけるようにしてあわただしく行き交い、商人や職人たちがそれを不安そうに眺める。

 そんな混乱の中、王国上級騎士たるクグニス・カガリは騎士団の緊急会議への出席を終えると、宿舎の一角に割り当てられた自分の部屋へと帰還した。

「お帰りなさいませ。いかがでしたか?」

 椅子に乱暴に腰を下ろしたクグニスに従卒――世話役の兵士が水を差し出すと、微妙に苛立った表情の彼は一気にそれを飲み干した。叩きつけるように杯を置き、何とか怒りを消した顔を従卒に向ける。

「いろいろ言っていたが、要は「とりあえず出撃」だそうだ。3日以内にな。準備を始めておけ」

 そこでわずかに声の調子を落として続けた。

「ところでニィズはどうした? まだ部屋か?」

「はい。相変わらず閉じこもりっぱなしの様子で、食事も満足にとられていないようです」

「そうか……」

 諦めたように息をついたクグニスに、従卒が遠慮がちに声を掛けた。

「あの、質問をよろしいでしょうか」

「何だ?」

「その、ニィズ殿はどのような方なのでしょう? ただ丁重に遇せよとしか命じられていないのですが」

 遠慮がちに訊ねるまだ若い従卒に、クグニスは顔も向けずに投げやりに返答した。

「シライ殿は知っているだろう。彼の妹だよ」

「は?!」

 驚く従卒に、彼は言葉を続けた。

「正確には妹分だな。元は貧民の出で、しかも孤児だったらしい。魔術の才能を見込んだシライ殿が連れ出して、それから懐いてずっと一緒にいたという話だが、細かいことは俺も知らん。ちなみにだな」

 クグニスは面白くも無さそうな顔で言った。

「純粋に魔力の大きさで言えば、ニィズは俺より上だよ」

「カガリ殿よりも、ですか。あの歳で?」

「シライ殿が直接鍛えていたからな。だから」

 彼は再度、溜め息をついた。

「兄貴がああなって、奮い立つのを期待したかったんだがな。やはり無理か」

「はあ」

 従卒が困ったような声を出した時だった。壁の向こうが急に騒がしくなった。

 馬の嘶きらしき音に、貨車から発する重い車輪のきしみ音。それらを操る人々の声。

 それらがないまぜになった音が、次第に近づいてくる。

「ん? こっちか?」

「そのようです。見てきます」

 従卒は答え、扉から出て行った。しばらくして駆け足で戻ってくる。

「カガリ殿! 王立魔導院より、届け物が到着したと――」

「来たか!」

 一声叫んで立ち上がるなり、クグニスは従卒を押しのけて駆けだした。慌ただしく廊下と玄関を抜け、一気に外へ。

 宿舎の大門の向こうに大型の馬車が止まっていた。4頭立ての馬の後ろに、布で覆われた巨大な何かを乗せた馬車が。

「カガリ殿で、いらっしゃいますか?」

 駆け寄るクグニスを認めた御者が丁寧に訊ねてきたが、彼は聞いていなかった。荷台に直行すると、横腹に足を掛けて一気に飛び乗った。

 そして身長の数倍に達する巨大な「何か」に掛けられていた布を剥ぎ取ると、その下から現れたものを見て一瞬息を呑み。

 そして歓喜の笑みを浮かべると、あわてて走り寄ってくる従卒に向けて振り返って叫んだ。

「ニィズを引っ張り出せ、そして伝えろ。兄貴が残した“剣”が来たとな!」

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