Armour Zone 5
睨み合うアルトとレオナルド。
二人の腕には互いに似た腕甲冑が存在していた。
明らかに違うのはアルトが右腕でレオナルドが左腕ということだけだろう。
「こちらから行くぞ」
「わっ!?」
「アルト!」
レオナルドは地面を蹴り距離を一気に詰めた。
そのまま左拳をアルトの顔面へと叩き込む。
しかしアルトはそれを一重に躱す。
内心危なかったと言わざるをえなかったがもっと早いスピードを見ていたので体と頭が反応することができたのだ。
「さぁ、アルトお前も出すがいい」
「いきなり何をするんだ!」
「さっき言っただろう?」
「さっきって、俺の特異体質とお前の特異体質を賭けるって話か?」
「ああ」
「そんなこと出来るわけ…」
「できるよ。事実だ」
初めて知る事実にアルトは戸惑っていた。
とは言うもののアルトが実際にこの力に関して知っていることなどたかがしれていた。今まであったことのある人物もあの二人だけである。その二人も特に何か教えてくれることはなかった。
ただ自分の力がおかしいとわかったぐらいだろうか。
「…それって俺を殺すってこと?」
恐る恐る聞くアルト。
最悪そうなるだろう。生き残っても腕が無くなるかもしれないと想像してしまう。
そしてその想像は当たっていた。
「勿論だ、俺は高みを目指す。前の世界じゃ無理だった。だがこの世界なら努力が顕著に現れる。目に見えて」
「だからって殺すことないだろ!?」
「じゃあお前は黙って殺されてくれるか?」
「ッ!…」
その言葉に息を詰まらせる。
アルトを見据えるレオナルドの目には冷ややかなものが宿っていた。
それが何を意味するのか今のアルトではわからない。
ただ、それがレオナルドが本気であるということだけは少なくともわかった。
アルトは黙って右腕に意識を集中して巨人の腕を発現させた。
それを見てレオナルドの口角が上がる。
「行くぞアルト!」
「お前を倒してやる!」
「その意気だ!」
「お、俺師匠呼んでくる!」
そう言ってキースは屋敷へと駆け出す。
瞬間レオナルドの姿が振れて消える。
ここで一つレオナルドは勘違いもとい油断をしていた。
それはアルトの見た目が子供だったことも原因だろう。
アルトの背丈は七歳にしては高く大きい方だった。
レオナルドはというと十七歳、身長も178である。
結論を言うとレオナルドは侮ってしまったのだ。
結果レオナルドの攻撃は寸でで避けられてしまった。
「なっ!?」
レオナルドは決して弱くない。それだけは言っておこう。
彼はこの世界に来てから人一倍努力して生活していた。
が、しかし、それを上回る密度の生活をアルトはしていたのだった。
故に通常時のアルトと特異使用時のレオナルドはほぼ同じぐらいの強さだった。
そしてそれはアルトが力を使ったことによって抜かされてしまったのだ。
「それ!」
「ぐはっ!?」
アルトは避けた瞬間にレオナルドの背中に打撃を与える。
そして直ぐに後ろへ跳んで距離をとった。
レオナルドは直ぐ様呼吸を整えると気を引き締めた。
そして反省する。
この時レオナルドはある意味幸運だった。
再認識といってもいいだろう。相手は子供ではない。
それは転生者ならではのものだった。
「いやはや、浮かれてしまった。今のでわかったよ。現状俺はお前よりも弱いことが…」
「ほっ、良かった。じゃあもう帰って…」
「本気を出す」
くれるんだね。と言いかけて遮られる。
レオナルドが左腕に意識を集中して力を込めて握る。
「全身武装」
その言葉を合図にレオナルドの姿は一変する。
全身を白いオーラが包み込みその姿を銀色の全身甲冑が包む。
その姿は西洋甲冑というよりかはロボットのようなヒーローのような姿をしていた。
スマートな姿がそういったイメージを一層際立たせた。
内心ではちょっとかっこいいと思ってしまうのは転生者の性か。
しかし実際はそうも言ってられなかった。
明らかに雰囲気が変わったのだ。
「行くぞ、今の俺の全てを見せてやる」
「まっ!?」
返事など聞く耳持たずとレオナルドは渾身の拳を叩き込む。
今度ばかりは避ける間もなく一撃を食らってしまう。
そのまま吹き飛んで街路を転がる。
一撃で強制的に吐き出された空気を必死に取り入れる。
ヨロヨロと立ち上がりチカチカする視界の中でどうにかレオナルドを視界に捉える。
「アルト、君は強い。だから君も全身武装をするんだ」
「はぁはぁ、全身武装なんて…できない」
こちらに近づいていたレオナルドの歩が止まる。
「俺より強いのにそんなわけがないだろ?レベルはいくつだ?」
「はぁ?レベル?そんなの無いよ」
「は?」
「?」
「なに言って」
「人の家の前で騒がしいなお前ら」
二人の会話が噛み合わなくなったところでキースがフィエロを連れて駆けつけた。
フィエロはアルトとレオナルドを交互に見ると煩わしそうにする。
「なんだ…お前?」
「なんだとはえらい言い草だな、強いて言うならお前らが戦ってる家の前の主人でそこのガキの保護者代理だ」
「関係ない、これは特異体質者同士の問題だ」
「別にお前らが戦うのに難癖なんて入れないさ。ただ人の家の前で騒がしくするなって話だ」
「師匠!?止めてくれるんじゃ!?」
「知らん、ここで負ける。死ぬようじゃそこまでだってことだ甘ったれるな。まだ始まってないならまだしももう戦ってるんなら最後までやれ、ただ他所でやれ」
フィエロはしっしと手のひらをひらつかせる。
と、そんなフィエロを見て隙を作ってしまったレオナルドにアルトが攻撃を仕掛けた。
しかしその拳はいとも容易く防がれてしまった。
いや、防いですらいなかった。アルトの右拳はレオナルドの胴に当たっただけだった。そこに外傷は一切無かった。
「なっ…」
レオナルドの顔だけがこちらを向いた。
「俺の勘違いか?今のは攻撃か?」
急に攻撃が軽くなったとレオナルドは思った。
いや、先程の違和感も相まって何かがおかしいとも感じ始めている。
「おい、アルト。この世界に来るとき説明は受けたのか?」
「説明?」
その様子を見てレオナルドはおおよそ説明を受けてないと気がついた。
いや、それだけじゃない。
説明を受けずとも分かることがアルトには分かっていなかったのだ。
「そうか、それならいい。それはお前の不運として受け入れろ」
「ッ!」
攻撃が来ると感じて咄嗟に腕をクロスして防御の姿勢に入る。
「気休めだな」
「グッ」
歯を食いしばって耐える。
「硬さはあるようだな。それにしても全身武装しただけでここまで差が開くとは思わなかったぞ?」
そこからは一方的な攻撃だった。
なまじ過酷な修行で鍛えていないので倒れてはいないが攻撃ができなかった。
エラー。そんな言葉がアルトの脳裏に過ぎった。
ついこの前のことだ。成長による進化と思いきや何かロックされていると言われてくすぶった。
決定的な情報差もある。
アルトはこの世界にレベルなど無いと思っていた。いや、実際には無い。
現にキースもフィエロもレベル等と言ったことはないからだ。
しかしレオナルドはレベルを聞いてきた。それは転生者にはレベルがあるということ。
それはきっとロックという事と関係があるのだろう。
それが解けなければレベルは現れず武装範囲も増えないということかもしれない。
この日、アルトは何度目かの危機に貧していた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
アルトは何を思ったのかがむしゃらに攻撃をし始めた。
何をとレオナルドはその猛撃を両手で逸らす。
「窮鼠猫を噛むというやつか?」
「ただのやけだ!」
「ハハッおもしろい!」
レオナルドはアルトの顔を右手で鷲掴み持ち上げる。
「アルト、お前に良い物を見せてやろう」
そう言うとアルトを思い切り投げ飛ばす。
今度は街路に転がるでは生ぬるく街路を抉った。
そこはまるで隕石でも落ちたかのように削れている。
「追加武装、巨人仕掛けの腕の第二の能力!第二武装!」
レオナルドの背中に自身程の大きさのバックパックが現れる。
それは太い羽根のようでもあるが明らかに違うものだった。
二つに割れ、伸びるとそのまま更に上下に割れてレオナルドの腕を包み込んだ。
そこに現れたのはアンバランスな腕を持ったレオナルドだった。
「行くぞ、アルト」




