Armour Zone 4
闘技場を出た後は市場を覗いていた。
そこは一層賑わいを見せていた。闘技場も賑わってはいるがあれとは別の賑わいがここにはあった。
新鮮な野菜や旅に欠かせない携帯食の数々、不思議な効果を発揮するいわゆるマジックアイテムも中にはあった。
剣や槍といった武器も勿論あった。
色々と見て回ると店を出している人はどうやら様々だった。
冒険者らしき人物に始まり怪しげな魔術師らしき人物も見えた、無論普通に承認や農家の人らしき人もいた。
「すげー」
「人がゴミのようだ…」
「アルトそれはちょっと…」
「冗談だよアハハ」
などと異世界ネタをかますと普通にキースに引かれてしまった。
そんなところがちょっと寂しいと思ってしまうあたりアルトは少しホームシック気味なのかもしれないと感じてしまう。
そういえば父さんや母さんはどうしてるだろうか?きっと俺の死に泣いたに違いない。
本格的にホームシックになりそうだったのでアルトは気持ちを切り替えることにした。
ふと目に入ったマジックアイテムらしき短剣を手に取ってローブを深く被った店主らしき人物に尋ねた。
「これはどんな道具なんですか?」
「これかい?これは封魔剣という剣さ」
「封魔剣?」
店主の声は予想とは真逆で若々しいものだった。イメージとしては好青年みたいである。
「文字通り魔物を封印することができるんだよ。使い方は色々だね、例えばある村にとてつもなく凶悪で強大な魔物が突然現れたとしよう。当然その村では対処できない。しかしこの封魔剣があれば大丈夫!一度鞘から引き抜いて魔物に突き刺せばあら不思議!立ち所にその魔物は剣に封印されるって代物さ!」
途中から熱が入って商品の説明をする店主。
「で、いくらなんですか?」
「そうだねぇ、金貨千枚ぐらいかな?」
「たかっ!?」
「たけぇ!想像以上に高かった!」
「そうなんだよねぇ、作ったはいいけど誰も買ってくれないんだよねぇ。みんな同じ反応だし」
「いやいやいや、当たり前ですよ!そういうのは国にとか領主に直接売ったほうが良いのでは?」
「あ、君頭いいねぇ!その手があったか!こうしちゃいられない、とっとと店畳んで行ってみるよ!ありがと!じゃあね!これはお礼だよ!」
店主は素早く露店を畳むとアルトとキースに四角いキューブを渡してどこかへと行ってしまった。
残されたアルトたちは手の中にある黒一色の四角いキューブを凝視する。
大きさは手のひらサイズ。もしこれが六つに分割されていたらルービックキューブである。
しかしこのキューブは仕掛けという仕掛けは無くただ単に四角いだけの置物だった。
「なんだか怖いなぁ」
キースが得体の知れないマジックアイテムを見てそうつぶやいた。
そんな二人を遠くから眺める男がいた。
「見つけた」
冒険者用のフードを深く被る男は一言そう言うと二人を見失わないように跡を付け始めた。
そんなこと露知らず二人は街を一通り周って帰路についた。
…。
……。
二人は途中から誰かが付けていることに気がついていた。
なまじ修行という名目でワイバーンとかくれんぼしかり鬼ごっこをしてはいない。
必要以上に誰かの視線というものに敏感なのだ。
普段は気にもとめないがこう長時間見られているとそうも言ってられなかった。
そして夕刻、屋敷に向かう途中でアルトは振り返り際にその視線の主に声をかけた。
「誰ですか?さっきから覗いてる人は?」
キースも無言でそちらに振り向く。
すると路地裏に潜んでいた人物が姿を現した。
「なんだ、バレてたのか」
フードをとってその素顔を見せる。
そこには見覚えのある男がいた。
プラチナブロンドの髪に獣のように鋭い黄色い瞳、そう、闘技場に現れた冒険者の男がそこにはいた。
「俺の名前はレオナルド・ルーデルク。そっちは?」
「アルト・リバイクだ」
「キース・キンブリー」
「ふーん、アルトにキースか…まっそっちのお前には用事はないんだがな」
そう言って興味は無いとキースを指差す。
「アルト、お前いくつだ?」
「は?」
「歳だよ、いくつだ?」
「えっと…七ぐらいか?」
「いや、若すぎだろ…」
放り出されたのが確か四か三歳だった気がする。そして修行は大体三年なのでそのぐらいで間違いがない。
少々驚いているようだったが問題はないとレオナルドがアルトに指差す。
「俺と勝負しろ」
「俺と?」
「そうだ、分かってんだろ?」
分かるって何がだ?レオナルドが好戦的なところか?正直意味不明である。
「分かるってなにが?」
「いや、なにって…そうかお前他に同じ連中と会ったことが無いのか」
なにやら向こうで勝手に納得したようだったので特に言及するのは止めた。
が、しかし、次の瞬間アルトは息を呑んだ。
レオナルドが左腕を変化させたのだ。まるでアルトの腕のように。
「俺の巨人仕掛けの腕とお前の巨人仕掛けの腕を賭けて勝負だ、アルト!」
自分と同じ特異体質者、ましてやそれは紛う事なき巨人の腕である。
どちらの腕かと細部が多少異なる以外はアルトと同じ特異である。
この日アルトは初めて同タイプの特異体質者に会うのだった。




