DRAGON CARNIVAL 7
アルトははっとして目を覚ました。
昨日は起きた出来事もあってかぐっすりと眠っていたがアルトの体は普段と変わらない時刻に起きたのだった。
辺りを見渡せばそこは真っ暗な空間ではなくアルトにあてがわれた私室だった。
と言っても間取りは他の部屋の変わらず置物や荷物が変わるぐらいだった。
アルトは額の汗を拭うとベッドから出て洗面所へと足を運んだ。
廊下を出て一階に降りる。
今更だが洗面所とは言うが風呂と兼ねていて水自体は毎日アルトとキースが瓶に運んでいる。
まあ最近はアルトは瓶自体を運ぶようになったが。
で、洗面所にはその水瓶が一つ置いてあるのだ。その上にある柄杓のようなもので水をすくって顔を洗う。
一応は風呂場でもあるので排水口はある。風呂の中と入口のすぐ横にある姿見鏡の下だ。
アルトは頭から水をかぶる。これで汗も取れて気持ちが良くなった。
ふと昨日のことを思い出して自身の右腕を変化させた。
右腕は所持者であるアルトの意思に反応してその姿を変える。
銀一色の肩から手先までの篭手、いやこの場合もう篭手と括っていいものか疑わしい。
見ようによっては隻腕とも見られかねないと思った。
「俺って思ったより強くなってないよなぁ、なぁ巨人の腕さんよーなんとか言ってくださいよー」
無論腕に話しかけても帰ってくる声などあるはずもなく静寂だけが辺りには漂っている。
アルトは溜息を吐くと洗面所を出て脱衣所へ戻り服を着る。
言い忘れていたが洗面所の前に脱衣所が存在する。
そして先程までは裸だ。そうネイキッド!
なんやかんやでアルトは厨房の方へと足を運んだ。
入る前から包丁の音が聞こえていたので既にキースが調理を開始したのが分かる。
アルトが厨房に入るとキースは野菜を切っている最中だった。
「おはよアルト。いま手が離せないからちょっと鍋の火加減見ててくれよ」
「おはよキース。わかった。てかもう動いて大丈夫なのか?傷は癒えてるけど…」
「ああ、塗ってもらった薬が効いたのかな?むしろ前以上に軽く感じるよ」
「へぇ」
アルトは煮込まれている鍋の蓋を開けると既に切り終わっている野菜を中にドバドバと流し込んだ。
野菜に関しては前の世界とそこまでの差はなかった。逆に差が極端なものも中にはあったりするがそういうのは扱いが難しいものが多いので素人には扱えないのでここには置いていない。
「そういやそろそろ食料庫の中が空っぽになるな」
「ああ、さっき師匠が来て街に行くって」
「街?村じゃなくて?」
「うん、なんでも野暮用があるんだって…じゃあこれも入れちゃって」
「よっと」
キースに渡された最後の食材を鍋へと投入する。
最後に香辛料をいくつか入れて味付けすれば完成だ。
単純な野菜のスープで調理が楽なので基本これがメインになっている。これにパンと焼いた肉で完成である。
早速アルトとキースはフライパンを熱して食料庫に残っていたステーキを三枚持ってきて焼く。
「街となるとあそこかな?」
そう言って思い出すのはここへ来る前に一度立ち寄った大きな町である。
しっかりと領主がいて商人も多く出入りしているので結構大きな街だ。
そしてその回りに点在するように村があるのだ。
そして普段は食材や物資を一番近くの村に出て買っていた。アルトたちがフィエロにとお酒を買った村だ。
「名前なんて言ったっけキース?」
「覚えてないなぁ」
何分三年程前である。そりゃ記憶も霞む。
などと思っても未だアルトたちは七歳程である。意識面での成長はかなりのものだけどね。
アルトにだけ言わせれば実質精神年齢二十歳超えているのだ。
「まあ師匠についていけば問題はないでしょ」
「そうだな、っと、キースその肉の方が少し大きいからくれよ」
「はっ?嫌だね!」
「ケチッ!」
こうして三人で朝食を終えて軽く組手する。
その後は遠出用の衣服に身を包んだフィエロを筆頭に下山するのだ。
一応御付ということでアルトとキースもそれなりの格好をする。
なんて言うかお坊ちゃん的なイメージに誓い。それにフィエロ愛用のマントを羽織るのだ。
「師匠、なんで今回に限って街なんですか?」
疑問なので聞いておく。一応言っておくが一番近い村でも馬車で三日程かかる。
街となるともってのほかだ、一週間ぐらいだろうか。
だが、ここが師匠流である。
走るのだ。ラン!ラン!
フィエロは吸血鬼であるので身体能力は通常の人間の比ではない。
村までなら走って往復で一日に短縮できる。往復でだ。つまり三日を半日にできるのだ。
一週間なら一日程でつけるのだ。故にフィエロは馬車を持っていない。
流石に王都辺りに行くのなら馬車を使うかもしれないが今のところフィエロには必要はないのだ。
で、アルトの質問の答えはというと。
「食料調達もそうだが領主として一度出向くだけだ、嫌々な」
「え、あそこの領主って別にいるんじゃ?」
キースはうろ覚えな記憶を頼りにそう答える。
「何言ってるんだ?名目上ここら一帯は俺の領土ということになっている」
「「へ?」」
アルトとキースが揃って間抜けな声を出した。
「言っただろ名目上と、当然代理の領主が区画ごとに統治している。ああそうだ、俺は名目上は辺境伯だからな」
兄弟揃って結構な御身分で。
と、そう話していると山を抜けて麓についた。
ここからフィエロは二人を担いで風よりも早く走るのだった。
最初こそは重力に耐えれずに気絶したが何度か味わっているうちに慣れてしまった。
が、しかし、目がとてつもなく痛い。風系統の魔術であるウェンでどうにかごまかしていた。
そろそろあのかみさまではないがゴーグルが欲しい。
…かみさま?はてなにか忘れている気がするがまあいいか。
こうしてアルトたちは街へと繰り出したのだった。




