DRAGON CARNIVAL 4
俺は今ケインという男と一緒に広場の隅にいた。
理由は簡単で話をするためだ。
というかケインって名前はこっちでの名前なのだろうか、向こうの名前なのならきっと忍者をやっていたに違いない、きっとブラックだそうに違いない、あと栄養剤の宣伝とかしてそうなどと変なことを考えていると向こうから話しかけてきた。
「失礼なこと考えてるでしょ?」
ブンブンと顔を振って否定する。
心の中を読むとは侮れないやつである。
「それで話って?」
「話といっても大したことじゃないよ。見た目からしてこっちに来たのは最近だと思うからどんな感じなのかなぁと思ってね。率直に聞くけどその腕は一体なんの腕なんだい?」
「答えるとでも?」
少しの間睨み合う、こっちの腕を気づかれたのは少し驚いたが詳細を語ってやるほどの仲でもない。
「最初の威圧感は謝るからさぁ!あれだって別に君たちに対してのものじゃなかったんだよ。フィエロを驚かせようとしただけなんだ!」
先程の印象とは逆方向の気さくさを見せるケインに戸惑いを隠せないアルト。
そう言いながら背中を叩いてくるのがうざったらしい知人みたいで嫌だった。
「で、これが君の腕かい?どれどれ…」
「なっ、お前!」
不意を突いてアルトの右腕を掴み上げる。
それに気づいたフィエロがこちらに近づこうとするがドゥヴァとよばれた男が邪魔するように割って入る。
ケインはお構いなしといった具合で細目を開いて腕を観察した。
ケインの両目は右と左で色が違っていた。言うなればオッドアイというやつだ。
右目が日本人のような黒であるのに対して左目はオレンジというか赤というか、まるで太陽を彷彿とさせる色合いをしていた。
「太陽神の目なのか…?」
ついぼそっと言ってしまったのがケインに聞こえたようだった。
しかしケインは特に気にしたような様子もなく返事をした。
「あ、わかっちゃう?やっぱりこっちに来るような人たちはそっち系に詳しい人ばっかだよねぇ」
「離してもらってもいいか?」
「ああ、ごめんごめん。それにしても君の腕はちょっとばかりおかしいね」
「おかしい?」
「何かロックのようなものがかかっているみたいに感じたよ。そのせいでなんの腕なのかわからなかったよ」
やれやれと手を上げるケイン。
ロック?なんのことを言っているんだ?
アルトからしてみればケインの言っていることは不可解でしかなかった。
そんなことをできるような相手は思いつくだけで一人だけだ。
「私の目を教えるから教えては貰えないだろうか?」
「…わかった」
これはちょっとした賭けだとアルトは思った。
「良かった。じゃあ私からだね、私の目は天陽神仕掛けの目というんだ」
「俺の腕は巨人仕掛けの腕だ」
「巨人か…」
そう互いの特異体質を教えあった。
こちらは巨人なのにあちらはなにやら天陽神などという仰々しいものだった。
与えるものに差があるんだなぁ、あのかみさま結構勝手に押し付けてきたしもしかして本当に売れ残りを押し付けたんだな。
しかし次の言葉でアルトの疑問は解消された。
「グロウアップはしていないんだね」
「グロウ…何?」
「グロウアップ、要するに自身の特異体質の成長だよ。進化と言っても良い。聞いてない?」
「初耳、あのかみさまはなんの説明も無いまま俺をこっちに送ったもんだからさ…」
「なるほどねぇ、君には少し興味があるかも…ちょっと腕の力を見せてはくれないだろうか?」
最初はためらったが、この際である。アルトは見せておくことにした。
腕を前に出して武装を出現させる。
「肘まである篭手、つまり武装タイプなんだね」
「種類があるのか?」
「大まかには二つ、君やドゥヴァが持つ武装タイプと私が持つ異能タイプってとこかな、武装タイプは文字通り体に鎧や盾や剣なんかを装備するもの。異能タイプは火を操ったりとかの方が伝わるかな?」
「なるほど…超能力とかみたいなものか」
今のところその異能タイプにはケイン以外会ったことがない。
そもそもこの世界に来てから初めてあったのがこいつらだ。
「そうだ、さっき言ってたグロウなんちゃらってどうやったらできるんだ!?」
一番気になることなので意気込んで聞いてみる。
「グロウアップね、それは勿論戦って経験値を得るのが妥当だね。あとはその人の性格と感情でどう成長するかが変わるよ」
本当に妥当な感じだと思った。やはりレベルを上げるのが重要か。まあレベルなんてこの世界には無いが…冒険者のランクは全く違うものだろうしね。
「あとはそうだな、同じ特異体質者を殺すことかな」
ケインはあっさりとそう答えた。
「へ?」
次の瞬間、ケインがフィエロに顔を蹴り飛ばされるのを一瞬だけ目撃した。
突然消えたように見えたキースは驚いてキョロキョロとフィエロを探していつの間にかアルトの近くにいることに再び驚いてた。
今…俺は…死んでいたのか?
しかし生きている。あの一瞬だけ殺気がアルトを襲った。
殺気を放った本人はフィエロの蹴りで山脈の壁にめり込んでいた。
「酷いことをするねフィエロ」
「何が酷いことだ、人の弟子にちょっかいをかけることを許した覚えは無いぞ」
「それは勘違いだよフィエロ。私は君に敵対することはない。これは事実だ」
「…」
「それにアルト君が次の段階を望んでいるようだったのでそれを手伝ってあげようと思ったまでさ」
そう言うとケインは右腕を上げる。
そして指をパチンと鳴らした。
「ドゥヴァ、私たちの後輩が成長を望んでいる。手助けをしてあげようじゃないか。君の力を見せてやれ」
「…オ…オマエガソウノゾムナラ」
ドゥヴァが初めて喋ったこともそうだったが何よりも異様な気配に驚きを隠せなかった。
何をしたのかドゥヴァの体が隆起して巨大化していく。
背中から翼が飛び出し首が伸びる。
目の前には一体の赤いドラゴンだいた。
「…黙示録が赤龍仕掛けの血潮ノチカラヲ…スコシダケミセヨウ…チイサキキョジンヨ…」
そう言って全長50メートルはありそうなドラゴンが拳をこちらに飛ばしてくる。
あ、死んだ。本当にそう思った。
しかしそれをフィエロが手で受ける。
「手助けもなにもこいつが死ぬだろうが、やっと喋ったかと思ったらこれか…」
「コレハコチラノモンダイダ…ジャマヲシナイデクレフィエロ…」
「意味がわからない」
そうフィエロが言うとドゥヴァ全身が発行して別の機械的な音声が響いた。
「Limited Domination!」
「な、なんだ今の!?」
あれが異能タイプの技ってやつなのか?
しかしさっきの話だとドゥヴァは武装タイプじゃ…。
と、考えている暇もなく先程の力の効果が現れた。
それは…。
「あ、あれは!?」
キースが山脈の頂上の方を指差して叫ぶ。
「俺はそんな力を知らないぞドゥヴァ」
「…アシドメヲサセテモラウ…ナニ、コレハオマエタチヲコロスモクテキハナイ」
アルトたちの目の前には山脈の頂上に住むドラゴンたちが群れをなして現れたのだった。




