DRAGON CARNIVAL 3
ケインと名乗る軽薄そうな声の男はニッコリとフィエロに挨拶をした。
知り合いなのだろうか?冷や汗の吹き出る中アルトはフィエロの様子を伺った。
フィエロは特に何か表情が動くということはなく普段と変わらず、いや、無表情で突然現れた来訪者を見ていた。
「その威圧紛いのものを飛ばすのを止めてもらえるかな?うちの弟子が怖がってしょうがない」
「おや、これは失礼…お?」
こちらを見て表情が変わった。いや、そんなことよりも驚いたのは今出しているこの感覚は彼らにとっては威圧ですらないものだということだ。ではなんなのか、アルトには全くもってわからなかった。
ケインがその得体の知れない気配を消し、後ろの男にも消すように命じる。
すると先程までの感覚は消え元の状態へと戻った。
「カッ!ハァハァ!!」
「ゲホッ!?うおぇ!!」
急激な変化に体が酸素を取り入れようとしてむせる。
どうやら後ろの男はケインの部下かなにかで従えているような感じだった。
一見して鎧の男のほうがやばそうではあるがこちらのケインという男もそれを御せる力を持っているということかもしれない。どちらにしろ今の俺たちでは手も足も出ないのは間違いないが…。
と、成長している割にはまだまだ天井が高いことを再確認するアルト。
「それで、なんのようなんだ?お前たちがここに来るなんて何年ぶりだ?」
「そうだねぇ、もう十年以上は経ってるかもねぇ」
昔を思い出すように顎に手を当てて上を向くケイン。
「そうか、もうそんなに経つのか」
「フィエロ、君はまだ飼い慣らされているのかい?」
ケインがさらりと言ったその言葉で初めて眉をひそめたフィエロ。
「そういうお前はどうなんだ、今の今まで一体何をしていたんだ?そこにいるそいつも誰だ?」
「誰ってフィエロ、君はいつからそんなに薄情なやつになったんだい?」
「なに?」
ケインは煽るかのように両手を肩の高さまで掲げてやれやれといったポーズをする。
その表情はなんとも憎たらしかった。
「こいつはドゥヴァさ、ドゥヴァ・ヴォルディエイモン。忘れたとは言わないよな?私たちの頼れる冒険者仲間を」
「ドゥヴァ!?ドゥヴァだって!?」
初めて驚きの表情で赤色の鎧を着た男を見つめる。
しかし当の本人であるドゥヴァ自身は特になんの反応のせずただ棒立ちしているだけだった。
先程のようなオーラを出していないドゥヴァはまるで飾られた甲冑にも見えなくもなかった。
だからだろうか、まるで人間味、いや、生き物のような感じがしないのは。
「あの戦いの後、私たちはお前と別れた、いや別れざるを得なかった。君にも色々あったようにこっちにも色々あったのさ。ドゥヴァだってあの後は酷いものだったよ…」
「それで何しに来たんだ、まさか昔話をしに来たなんてことはないだろ」
フィエロはケインの言葉の続きを遮るように要件を聞いた。
「おっと、そうだったそうだった、君の顔を見てたらつい懐かしくて…単刀直入に言うと君の力が欲しい、私の仲間に加わってくれないか?」
「はぁ?」
ケインのそれまでの感情は表情から消え、まるで別人のようになる。
フィエロはというと怪訝な顔をしていた。
しかしケインはそんな事お構いなしに話を続ける。
「実はこれから一つ大きな事をする予定なんだ。それに備えて今私たちは戦力を欲している。今までも募い、集めた、中には君も聞いたことがあるような手練だっているんだ。その中でもこの三人、悪名名高い錬金術師、肯定禁忌のトーラス・ケンブリオン。悠久監獄から唯一脱獄した大魔女、逆行改竄のニーシャ・キュクライン。理りに生き理りを断つ侍、事象否定のワタリガラス」
誰も彼も聞いたことのないような…うん、多分聞いたことのない名前が出てきた。まあこの世界のことにいまだ疎いアルトには致し方ないことだがそれを聞いていた当の本人であるフィエロは違ったようだった。
「それだけの戦力があるのにまだ俺を欲しがるのか?戦力過多も良い所じゃ無いのか?戦争でも起こすのか?」
「あーうん、近いね。けどちょっと違う。国だよ」
「国…だと?」
その後の会話はアルトとキースにはわからなかった。聞き逃したというわけではなく、ただ二人が少し離れたところで続きを話したからだ。だから会話はわからなかったけれど表情はいくらかわかった。
ケインの何かを企むような笑みもフィエロが驚いて汗をツーと流す驚愕もだ。
ただ事ではないのだとそれだけでわかる。圧倒的力を持つ者の企てとは一体何なのか。
「国って…シャルディオ王国のことじゃ無いよな…」
不吉なことを言うキースを横目にアルトも少しだけそう思ってしまた。
そりゃそうだ、現在いるこの場所がシャルディオ王国内だから、そんなことを聞けばそう思ってしまう。
しばらくして二人が戻ってくる。フィエロは少し疲れた表情をしていた。二人の話も終わったのでこれで終わりかと、そう思っていたが違った。
「ねぇ君、君だよ君!ちょっと話をしようよ!」
どういう訳なのかケインがこちら、アルトの方に向かって手招きをしているのだ。
「お、俺…ですか?」
フィエロがなんのつもりだとケインの腕を掴んで止めるがケインが続けて言った言葉でアルトはケインと話をすることを決めた。
「同郷のよしみでさぁ」
アルトに対して、キースでもレイトンでもクレアでも無い人間がこちらに向けて言う同郷という言葉が持つ意味、それは紛れもない、疑いようのないものだった。
そう、彼は、ケイン・コーラサンドラはアルト・リバイクと同じ転生者であるということだ。




