Wild Challenger
案の定冒険者組合であるギルドはこの時間でも開いていた。
仕事柄長時間にも及ぶ依頼があるようでこの時間でも必ず一人は職員が待機しているとのこと。
そういうわけでアルトはなんとかギルドにたどり着いて中に入っていた。
「ど、どうしたんですかそんな格好で!?」
ギルドにいたのは自分たちの登録を担当していた黒髪ポニーテールの受付嬢さんだった。
キースはいつの間にか寝ていたので奥にある休憩室で横になっている。アルトはロビーの椅子で毛布にくるまりながら淹れてもらったココアを飲んでいた。
受付嬢が自身もカップを片手に手前に座ってきたのでアルトは事の顛末を話した。
「それは災難だったね…彼女たちに浮いた話が無かったのはそういう理由だったんだぁ…」
「おかげで酷い目にあいました」
「えっと、とりあえず荷物は無事だと思いますよ。彼女たちも人の物を盗むほど落ちぶれてもいないので、あれでもここらじゃ評判は良いんですよ」
「良い人たち…ではあるのかなー」
ジャイアントビーの倒し方はちゃんと教えてくれたし、吹き矢は射たれたけど別段どこか怪我しているわけでもない。
それに間接的ではあるがアルトの力の発現にも助力してくれたのだ、あの後オーレリアがどうなったのかは知らない。アルトが想像できるのは壁を壊したことによる宿屋からの説教を受けるオーレリアというものだけだ。
その場合当分の間はタダ働きかもしれない。まあ自業自得なので然程気にしてはいない。
「とりあえず荷物は帰ってきて欲しいかなぁ…」
「明日まで待ってみてればきっと返しに来てくれますよきっと、疲れてるでしょ、休憩室で寝てきても良いよ」
「お姉さんは大丈夫なんですか?」
「私はまだここにいるから平気、それじゃおやすみ」
「おやすみなさい」
そう言うと空になった二つのカップを持って受付の奥へと消えていった。
アルトも言葉に甘えて休憩室にあるソファで横になって寝ることにした。
色々とあってか睡魔は目を閉じると直ぐに押し寄せてきた。アルトはそのまま深い眠りに入った。
朝、窓から差し込む日差しで目が覚めた。周りを見渡して今自分がどこにいるのか思い出した。
と、休憩室の机に自分たちの荷物が置いてあるのに気がついた。
急いで中身の確認をする。どうやら全部あるようだ。お姉さんの言っていたことは本当だったようだ。
アルトは服を急いで着替えると装備を整えた。と言ってもカバンを背負って腰に短剣を挿して終了である。
「キース、起きろキース!」
「うぅぅん…朝?」
そしていつまでも寝ているキースをたたき起こす。キースは寝ぼけているのか上半身を起こしても心ここにあらずといった感じであらぬ方向を見つめている。
そんな様子が少しイラッときたので机の上にあった花瓶を掴んで花を取り出し中に入った水をキース目掛けて思いっきりかけた。
「ぎゃぁぁ!?」
突然のことに驚いた様子で飛び跳ねるキース。
やっと覚醒したキースはアルトに怒鳴る。
「な、何するんだよアルト!?って寒!な、なんで俺パンツ一丁で寝てんだ!?ってここどこだよ!?」
「質問の多いやつだな。とりあえず机の上に荷物あるから準備しろよ。俺は腹減ったよ。飯にしようぜ」
「お、おう…そうだな、俺も腹減ってるみたいだ…ん?何か忘れているような…」
「早く着替えないと風邪引くぞー」
「ああ」
アルトが急かすとキースは何か忘れていることを忘れてテキパキと着替える。
着替え終わると外に出てお姉さんに挨拶をした。
お姉さんは笑顔で挨拶を返してくれた。ああ、ええ人や。
外に出て大通りを歩いているとキースが質問してきた。
「そういや俺たちなんでギルドなんかで寝てたんだ?昨日の記憶が…」
「朝飯はどこがいい?昨日入った酒場?それとも別の場所探す?屋台もいいなー」
「そうだなぁ、今日は屋台で売られてる串焼きを食べてみたいなー」
キースが昨日の記憶を掘り起こそうとするがアルトは一気にはぐらかして話を逸らした。
あんな体験はキースにはまだ早いのだ。今後に影響が出てしまう。決して俺が悔しいからではない。
は、ハーレムなんて今後いくらでも作れるんだからっ!羨ましくなんて無いし!
心の中で言い訳をしているとキースが朝からやっている屋台を見つけた。
「あそこ覗いてみようぜ!」
駆け足になるキースを追ってアルトも駆け足で屋台に向かう。
屋台からは食欲をそそる香辛料と肉の香りがした。
屋台のおじさんに何を売っているのか聞いてみると鳥のもも肉に色々な香辛料で作ったオリジナルの調味料をまぶして焼いて、それを酸味の強い果物の汁をかけた特性の串焼きだそうだ。
説明を聞いてるだけで口の中がよだれで溢れてくる。
とりあえず二本づつ買って食べてみた。
さっぱりとした味わいの美味しい串焼きだった。これはまた食べてみたいものである。もう日本づつ頼んでその場を後にした。
しばらく街を歩いて見て回ったあとに昨日の鍛冶屋の所に出向いた。
もう店は開いているようで開けてみる。いらっしゃいと言ってこちらを確認すると科学者のような見た目の店主が来たかという表情になって奥へと入っていった。
どうやらもう出来ているようだ。
直ぐに店主は奥から二振りの短剣を持ってきて二人に渡した。
店主に促されるように鞘から引き抜く。装飾という装飾は一切ない実用性だけの武骨のような短剣である。しかしながらその重さ、硬さは折り紙つきである。鞘も短剣に合わせて上質だが飾り気はないようだ。二人は短剣を鞘に戻してしまった。アルトは腰に、キースはカバンの横に引っ掛けた。
「ありがとうございます。こんな良い物を譲っていただいて」
「ありがとうございます!」
「なに、いいってことさ、またこの街に来た時には必ずこの店で装備を整えてくれよ?」
「それは勿論!」
「その時はまたいい品用意しててな!」
「ああ、そうさせてもらうさ」
そういう言ってアルトたちは鍛冶屋を後にした。
保存食と水をとりあえず二週間分購入してカバンに詰め込んだ。
これでもうパンパンである。
停留所に行くと既に馭者のおっちゃんが自身の荷物を運んでいた。
「お、坊主ども、よく眠れたか?」
「ええ、観光もできたし良かったです」
「この街は飯が良かったな」
「ハハハ、そいつは良かったな。じゃあちと早いが出発するか!」
アルトとキースが馬車に乗り込むとゆっくりと馬車は動き出した。
なんというかこの馬車の感覚がとても懐かしく感じたのであった。




