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異世界に持ち込んだのは幻想生物の肉体だった件。  作者: 青髭
第一章【異世界転生者達】
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ちいさな冒険者 9

 威勢のいい掛け声と共にアルトの右腕が銃弾のように飛んで行く。

 そのまま右腕はオーレリアの腹部を直撃して後ろの壁をぶち壊した。

 正直驚いている。なにせ腕が取れたのだからね!

 取れたと言うべきか外れたと言うべきかは謎だがとりあえず痛みのようなものは無かった。


「ロケットパンチマジか…」


 ロケットパンチする巨人なんているのかと、自分はまだまだそこらへん知らないんだなーと思うアルト。

 よくよく外れた腕と残った部分を観察してみる。

 残っているのは関節部分を覆っている部分だった。切り口は別に空洞とかになっているわけではなく蓋のようなものがついていた。いや蓋といったのは見た感じがそうであるというだけであってそのままの意味ではない。


 飛ばした腕の方はなんと動く動く。細かい動きなんかも今まで通りでタイムラグとかも特にない。

 感覚もあるしちゃんとした自分の手と腕である。

 と、動かしていたら瓦礫と一緒に寝ているオーレリアの胸を鷲掴みしてしまった。まぁ、いいか。


「な、ななな何事ぉぉぉ!?」


 この声には聞き覚えがある。語尾にっすが無いが間違いなくオーレリア一味の一人であるエリナのものだ。

 そうか、そういえばオーレリアがキース達は隣の部屋でよろしくやってるとか言ってたな。

 そう思いつつアルトはベッドを降りて空いた壁の穴から隣へ移る。

 そこには案の定キースとオーレリア一味他四名がいた。

 部屋の構造自体はさほど変わらないがベッドの位置がこちらはアルトが壁に空けた穴のすぐ隣だったということだ。

 危ない危ない、もしベッドの配置が一緒だったら大惨事だったかもしれない。


 アルトは一度オーレリアの胸から自身の腕を回収して元に戻す。

 切り口同士を合わせるとガチャッと音がして綺麗に戻った。そのまま手の感覚を確かめるが問題はない。

 そう、こちらの問題はないのでそちらの問題に目を向けた。


 本当なら直視したくない光景だったがそこにはうら若き乙女達に組んず解れつもみくちゃに揉まれ、顔を赤くし沸騰しているキースの姿があった。


「う、うら、うらぁぁぁぁぁ!!」


 別に羨ましくなんてない!何がと聞かれたら答えづらいが羨ましくなんてないんだ!

 もう吹っ切れてしまおう!アルトの中で何かのゲージが振り切れた。

 アルトは腰を低く姿勢を落とし、右足を前に出してその足に腕を置くと四人を睨みつけた。


「やいやいやいやい、お嬢さん方!よくもまぁこんな幼気(いたいけ)な純粋無垢な童子を拐ってくれたじゃぁねえか!この落とし前、きちんと払ってくれるんだろうねぇ!?」


 子供と思えない立ち振る舞いに面食らう面々、キースはというと既に茹で上がっていてそれどころではなかった。


「…ま、まさかリーダーを吹っ飛ばしたのはアルト君っすか!?」

「ちょびっとは強いと思ってたけどまさかそこまでとはねー!キャッサ驚いちゃった!」

「…でも…可愛い…」


 前二つは当然といえば当然の反応だが最後の反応はオーレリア一味であるが故だろうか。

 クールな見た目で女性ウケしそうだけどクリスさんも結局はショタ好きなのだ。

 そしてそのセリフに深く頷いて頬を染めているカレン。

 調子が狂うとはこの時のための言葉ではなかろうか?そう思えるがエリナの対応でそんな考えも消える。


「ここはしょーがないっすね、どうやらアルト君もやる気みたいですし…」

「ナイフなんて構えて…やるってぇのかい?」

「撤収!撤退!そして煙幕!」

「な、なにぃぃ!?」


 四人はオーレリアを残して素早く自身の手荷物と衣服を取ると脱兎の如く逃げていった。

 無論アルトも煙幕を突っ切って廊下に出たがそこにはクリスが待ち構えていた。いや、構えてなど居らず既に剣を振り下ろしていた。


「ッ!?」

「またね?」


 咄嗟に篭手でガードをする。しかし振り下ろした剣には刃がなかった。鞘に収めたままだったのだ。

 峰打ちのつもりだろう。まんまとしてやられたのだ。ガードした次の瞬間にクリスはあろう事かおでこにキスをしてきたぐらいだ。

 アルトはその場で呆然と立ち尽くした。


「負けた…」


 と、下の方から騒ぎを聞きつけて誰かが上がってきた。

 アルトはこのままだとまずいと思い部屋に戻りキースをおぶると出入り口とは反対の壁を思いっきり叩きつけた。壁は崩れ人一人分の穴が開く。

 そこは二階で地上から数メートルはあるがアルトは迷わずに飛んだ。

 そのまま落下して落ちる直前に先程よりも強めに今度は地面を殴った。

 その拍子にバランスを崩して道にキースを転がし自身も反対方向に転がってしまった。


「イテテ…けど上手くいったかな?」


 と、慌ててキースを回収してその場から去っていく。

 気づけば辺は既に真っ暗だった。所々に明かりはあるもののかなり暗い。

 アルトは急に止まって血相を変える。


「しまった、俺たちの荷物!」


 色々とあり過ぎて手荷物の行方を確認するのを忘れてしまった。

 一番の心当たりは先程の宿だろうか。

 正直もう戻りたくない。


「路銀がぁ…」


 路銀だけではない。招待状に武器もカバンも旅には必需品である。

 結局討伐の報酬も受け取っていないアルトたちは現状身ぐるみ剥がされた孤児にしか見えない。


「寒い…はくしゅんっ!」


 パンイチで上に衣服を着ていないのでキースの体温が直で伝わって来るのがなんか嫌だ。

 俺はいたって普通なんです。ノーマルなんですよ!


「とりあえず冒険者組合にでも行ってみようかな。あっ、こんな時間だし空いてなかったらどうしよ…」


 アルトは途方に暮れながら知らない道を感覚だけで歩くのだった。

説明が足りないと思った箇所があると思ったのでここで追記しておきます。


アルトとキースが四歳と書いてありますが見た目は六、七歳になります。


m(_ _)m

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