ちいさな冒険者 8
目を覚ますとそこは見慣れない場所だった。
まあ、それも当然といえば当然であるが。ともかくそこはアルトにとって知らない場所で、自分の目の前にいる女性、オーレリアには馴染みなのだろうと推測した。
現在の自分の状況を整理してみようと思う。
場所は分からないがどこかの宿だろうか、六畳ほどの部屋にベッドと机とちいさなタンスが置かれていた。
現在アルトはベッドの上にパンツ一丁で手足を繋がれている状態だった。
そして同じくベッドの上でこちらに覆いかぶさる下着姿のオーレリアがいるだけだ。
手足を繋がれていなければ押し倒された状況にも見て取れるだろう。
…これは一体どう言う状況なのだろう。眉をひそめて困惑する。
とりあえずこの部屋にいるのは自分とオーレリアだけということは理解した。
「えっと…一体何をしているんですか?」
「あんたの寝顔を見ていたのさ」
「は、はぁ…」
その時、アルトはいや明人は全てを悟ってしまった!
そう、彼女たちは変態、変質者の類いであると!
オーレリアの顔色を見れば一目瞭然かも知れない、紅く頬を染め、うっとりとした瞳、少々荒い息遣い。
まさにやばい人のそれである。
まさかショタコンの一味だったとは、これではキースが危ない。
なにせここにオーレリア一人だけということはあちらは四人がかりということになる。
…あれ?そっちのほうが羨ましいのでは?ハーレムじゃね?しかも若さ的にはあちらの方が…いやオーレリアさんも十分綺麗ですよ。けど歳は自分より二回りほど上である。
「あふん」
と、オーレリアがアルトの身体を人差し指で腹から胸にかけて沿ってきた。
色々と考えて不意を食らったせいでへんな声を出してしまったではないか。
「可愛い声を出すんだねアルト」
「う、うるせぇ!てかキースはどこにやったんだよ!」
赤くした顔を誤魔化すようにしてキースの居場所を聞くアルト。
「あの子なら隣の部屋にいるよ、今頃エリナたちとよろしくやってるかもね?まあこっちはこっちでアンタを独占させてもらったからいいけどね」
やはりキースはハーレム…じゃなかった。別の部屋に捕まってるのか。
「なにが目的だ!」
「何って…ナニだろうね?」
アルトの質問に耳元で囁くようにして答えるオーレリア。
更にはベタベタと体中を触ってくる。くすぐったいことこの上ない。
「や、やめ…」
「ふーん、なかなか鍛えてあるじゃないか、アンタぐらいの歳にしてはいい体付きだね」
と、遂にオーレリアはアルトの体を舐めまわし始めた。顔、胸、腹、腕、脇、あらわになっている所を隅から隅までだ。
「あひゃひゃひゃひゃ!?」
「どうだい、私でアンタの貞操捨ててみないかい?」
そんな言葉前の世界じゃ聞いたことも見たこともなかったよ!いや、こっちの世界でもなかったけど!
なにせまだガキなんで!聞くわけがない!聞いてどうするってもんですよ!
「いやいやいや!?」
「大丈夫、痛くしないさ」
「痛いって何!?あれ?ナニするって話しじゃなかった?痛いってもしかしてそっちの貞操が危ないわけ俺!?」
「安心しな、そっちもあっちも貰ってやるからさ」
「ぎゃー!誰かー!誰か助けてー!ここにショタコンで変態変質者の痴女が今まさに僕の貞操をダブルキルしようとしてます助けてー!!」
鎖で繋がれた手足をジタバタと振り回す。
つーかなんで鎖で繋がれてんだよ、俺は猛獣かなにかか!
「んもう、暴れても無駄だよアルト、アンタは普通と違って腕力が大人並にあるみたいだしね、大丈夫、痛いのは最初だけだよ…」
そう言いながら迫り来るオーレリア。
大丈夫、痛いのは最初だけだよ。なんてセリフは聞きたくなかった!どちらかというと今後の人生で俺が言ってみたいセリフだ!
やばい、やばいよやばいよ、このままじゃ性的に弄ばれちゃうよ。
「…だ」
「ん?何か言ったかい?」
それで何をするのかオーレリアは自身のマスケット銃の銃口になにやら半透明のカバーをつけていた。
それを見たアルトに遂に火が付いた。まるでそれは目の奥で何かが弾けたかのような気分だった。
「嫌だ!俺の…俺の貞操の捨て場所はッ…俺が俺の意思で決める!!!」
「なんだって!?」
その瞬間、アルトから自由を奪っていた拘束具の鎖が音を立てて壊れた。
アルトを中心に風が吹き荒れる。
そのままアルトはベッドに立ち、手足に残った枷をちぎって捨てた。
打破する力が欲しい。この理不尽な状況を打破する力がッ!!
「こ、これは?」
「アンタまさか!」
アルトの右手から肘関節辺りまでに突如として銀色の装甲が出現したのだ。
これは篭手?まるで騎士甲冑から右腕部分だけを取ってつけたような感じである。
しかしそれはアルトの体に違和感なく装着されアルト自身その篭手に違和感など抱かなかった。
「これが俺の力!やってやるさ存分に!」
「何をする気だい!?」
そう言うとオーレリアが反対の壁まで距離をとった。
右腕を後ろに引いて拳を構える。迷いのない行動だがアルト自身はなにができるかよくわかっていなかった。
ただこうすればいいという感覚があるのだ。
目はオーレリアを捉えている。外さない。篭手からカシャッと何かの音がしたが問題ない。
「喰らえ!俺の必殺技パートゼロ!」




