ちいさな冒険者 7
シーフのエリナ、クレリックのキャッサの所へ行くと二人は近くにいた残りの二匹を仕留め終わっていた。キースも参戦したようでナイフをジャイアントビーから引き抜いているところだった。
もう片方のジャイアントビーは外殻が潰れていた。どうやらキャッサがメイスで潰したようだ。
「どうやらそっちも片付いたようだね」
「注意してたし楽勝っすよ」
残る討伐数は十五、アルトとキースが倒し方を覚えたので残りはちゃちゃっと済ませるべく先程よりも広めに索敵することになった。
キースはまだ一人で倒せるほど腕力が無く同じくナイフを主武装として戦うエリナが補佐として付き添っていた。
斯く言うアルトはというとオーレリアたちも驚いた様子で戦闘を見ていた。
「驚いたね、そんな見た目で大人みたいに剣を振るうなんて、その歳で冒険者なんてやるだけはあるってことかい?」
「ええ、まぁ」
どう返答したらいいか分からずに曖昧に答えるアルト。
実際問題そう安々と自分が特異体質であることを言うのが憚られたのだ。
この人たちは確かに親切だ、自分たちに簡単にではあるが戦い方を教えてくれているし頼もしい。
しかしアルトはどこか彼女らの視線が気になっていた。こうどこか見られているような感覚があるのだ。
いや、危険なことをしないか等注意して見てくれているだけなのだろうと思ってはいるがどこか違和感を感じていたのだ。
そんなことを思いながらも特に変わった出来事も無くジャイアントビーの討伐数が十八までになっていた。
一つ疑問があったので聞いてみた。倒したジャイアントビーから素材を剥ぎ取らないのかというものだ。
曲がりなりにも魔物であるので素材は武器屋何かしらに使えるのではと生前のゲーム感覚で聞いてみる。
どうやら今回は倒すだけを目的としているので取らないそうだ。
しかし魔石などは綺麗に残してとると高く買ってもらえるらしい。そうなると更なる技術が必要なので今は諦めることにした。
と、エリナが残りの二匹を見つけた。
一匹は木を齧り、もう一匹は辺りを警戒しているのか周囲をくるくると飛んでいた。
「それじゃアルトにキース、二人で仕留めてきな」
「了解」
「…わかった」
ある程度場数は踏んだので仕留め損ねることはないだろうがキースがまだ若干の不安を隠せずにいた。
左手に持った盾をしっかりと構えて草陰に隠れる。
アルトも同じようにして隠れた。
「どっちを狙う?」
「できれば二匹同時に仕留めたいな、仲間を呼ばれると厄介だし」
「俺が木の方を狙うからアルトは飛んでるやつやってくれ」
「わかった」
さり気なく難易度の高い方を押し付けるキース。
まあ特に気にすることでもないので了承した。
飛んでいるジャイアントビーが後ろを向いて奥に行くタイミングで一斉に飛び出した。
アルトが飛びかかってこちらに気づき振り返ったジャイアントビーの胴を貫いた。
魔石が砕ける感触が短剣越しに伝わってきた。よし!、と思いアルトはキースの方を見た。
キースは一度盾でタックルしてジャイアントビーを怯ませて地面に落としたようだ。
そしてすかさずに胴にナイフを両手に持ち全体重をかけて貫いた。
「ふぅ、どうやらやったみたいだなキース」
「ああ、怖いのは怖いけど大丈夫みたいだ」
まあそうだろうよ、これでも魔犬オータスと死闘を繰り広げたのだ。
あれに比べたらどうということはない相手なのだ。
とりあえず終わりましたよとオーレリアたちに呼びかけようとして口が止まった。
そこには武器をこちらに向けるオーレリアたちの姿があった。
「武器を捨てて両手を挙げな坊や達」
「まっ、予想はできたけどね…」
「え、え?」
アルトは素早く右手に持っていた短剣をオーレリアたちの方に放り投げた。
キースは訳もわからないといった様子だったがオーレリアが威嚇射撃をすると盾とナイフをアルトと同じように捨てて両手を挙げた。新人狩りか奴隷商人に売るのか金銭目的か、おおよそそんなところだろう。
「いい子だ…エリナ」
オーレリアが合図を送るとエリナは懐から細長い筒を取り出した。
それを口に当てる。吹き矢だ。そうわかったのと同時に放たれた針が首元に刺さる。
「うっ…」
次第に視界がおぼろげになって行き遂には平衡感覚も無くなっていく。
どうやら麻酔かなにかを盛られたらしい。気分が悪く、きもちわるい。
せめて即効性があって欲しかったと思いながらアルトは意識を手放した。
倒れて意識のないアルトとキースを不敵な笑みを浮かべながらオーレリア達が近づいて来る。
彼女たちは二人と装備を回収するとその場から消えていった。




