ちいさな冒険者 6
王都の北西には森がある。
名前をノーテル大森林という。大と付くだけあってその広さは大きく、深く入ってしまうと行き慣れた人以外は迷ってしまう程には広い。時々だが遭難者も出るので不用意には入らないように注意勧告が出されていた。
といっても立ち入りを禁止しているわけでもないので出入りは自由である。
アルトたちが今回入ったのは手前側、まだ外がかろうじて見える程度の浅いところだ。
ノーテル大森林の依頼は大抵がこの範囲で出来るものがほとんどである。中には珍しい素材のために奥へ行く依頼もあるがそれは先程言ったような慣れた人が受けるような依頼である。
ジャイアントビー討伐依頼にしても依頼が出された理由は森の外へ出さないようにするためであり、奥の方でジャイアントビーがどの程度繁殖しようが関係がないのである。
ただ、行き過ぎるとその限りではないが。
「あれですか?」
「ああ、あれだ、確かに近場に出てるみたいだね」
アルトが草の隙間からジャイアントビーの姿を確認する。
全長一メートル程の凶悪な面構えをした蜂である。なにあれ、普通に怖いんですけど。
メガネウラという名前の古代トンボが確か一メートル程だっただろうか、当時の地球の支配者だったらしいが目の前で騒音を響かせる化物蜂に比べればまだ可愛いに違いないだろう。などと軽く現実逃避してみたがいつまでも止まっているわけにもいかないので行動を起こすことにした。
まず、近くにいる他のジャイアントビーを探す。これはみんなが合図を送れる範囲で行った。
結果アルトたちの範囲内には計五匹のジャイアントビーがいることがわかった。
意を決して飛び出そうとしたところでオーレリアが腰に腕を回して止めてきた。
「バカッ、まずは手本を見せるから見ておけ」
耳元でそう囁いて腕を話す。
オーレリアは腰のホルダーから銃を取り出す。取り出したのは一発装填式の銃、いわゆるマスケット銃だろうか?それを構えてジャイアントビーに向けた。
「ジャイアントビーの狩り方は基本この一つだ覚えておきな」
そう言うと引き金を引いた。火薬に火がついて引火し、破裂音と共に予め込められていた鉛弾がジャイアントビー目掛けて飛んでいく。
そのまま弾はジャイアントビーの胴を貫いた。
するとジャイアントビーは電池の無くなったおもちゃのようにピタリと止まってしまう。
オーレリアはすぐに仲間に合図を送って他のジャイアントビーが来ていないことを確認する。
「ふぅ、バレてはいないみたいだな…」
「あんな音出してバレないもんなのか…それにしてもよくあれを一撃で倒せましたね」
「ん?ああ、ジャイアントビーは雑魚だからな、それに魔物ってのはどれも身体のどこかに魔石っていう核を持ってるんだ。それを壊してしまえば例えドラゴンだろうと一撃さ、といってもジャイアントビーの怖さはそこじゃない、一匹なら平気だが数で来たら最悪逃げの一手、上手く撒けないとどこまででも追ってくる。そうなったら街には入れないし疲れて走れなくなってジャイアントビーの餌になって終わるのがオチだね」
移動しながらその話を聞いて背筋に寒いものが走る。
あの図体だ、単純な顎の力で一体どの程度の威力なのだろうか、それにお尻の先端にいやらしく沿って突き出ている細長い針、あれは刺しやすいように少しだけ内側に沿っているのだ。
「毒はいかほど?」
「即死はしない、早ければ助かる程度の毒だ」
それを聞いてホッとするが次の言葉でその安心が吹き飛んでしまった。
「まぁ腐食性の毒だから五体満足にはまずならないな…」
聞けば刺されてから五秒ほどで毒がその効果を発揮し始めるらしい。
刺されたところから徐々に徐々に腐っていく毒…考えるだけで恐ろしい。
と、他の仲間が把握していた二匹目のジャイアントビーを視認する。
餌なのか木に留まり木をガリガリと齧っていた。
「ありゃ巣を作る気っすね。こんな所に巣なんて作られたら目も当てられないっすよ…」
「害虫は此処で殲滅だ」
と、もう一匹が同じ木に留まり木を削り始めた。
「どうやら好機だな、カレン行くぞ」
「了解です。じゃあクリスさんは上に留まっている方を」
「ああ」
そう言うやいなや二人は音もなく飛び出す。二人はどうやらマジックアイテムなる物で足音を消せるようだ。
カレンは曲刀で、クリスは長剣で思いっきりジャイアントビーの背中を背後からブスリと貫いた。
核である魔石の破壊に成功したようで二匹とも動かなくなった。




