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異世界に持ち込んだのは幻想生物の肉体だった件。  作者: 青髭
第一章【異世界転生者達】
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ちいさな冒険者 4

 昼食を終えたアルトたちが次に向かったのは武器屋だった。

 王都では以前立ち寄った村みたいに一緒ではなく武器屋は武器、防具屋は防具とそれぞれ専門の鍛冶師が営んでいた。

 なので質も他の村よりは上である。


 扉を開け中に入ると来店を知らせるベルがカランカランと店内に響く。

 店主がこちらを見ていらっしゃいと言う。

 店主の見た目は頭の禿げた割にそれ以外、横周りがもじゃもじゃしていた。丸眼鏡も相まって科学者みたいだなとアルトは思った。見た感じ年齢もだいぶ上のようだしね。


 とりあえず自分たちに合った武器はないかと色々と見て回る。

 武器だけを専門に扱っているだけあって様々な武器が置いてあった。

 壁に掛けてあったり立てかけてあったりする武器は値段が銀貨一~三枚だった。


 改めて銀貨三枚とか言われてもピンとこないので一度日本円にして考えてみた。

 銅貨をおよそ百円と考えると銀貨は千円で金貨が一万円になる。

 つまり前に話したこの世界の人が月に稼げる金額は約二千五百円になる。

 少ないと感じるだろうがこれでこの世界の人はやっていけるのだ。

 まず家賃はない、光熱費もない。食料や水はまとめて売られているのでおよそ一週間分からしか売っていないのだ。だから成り立っているらしい。


 と、話がズレてしまった。壁などにある武器の他には角の樽の中に無造作に入れられた剣の山があった。

 樽も三個あるので相当な量だ。

 樽に付いた値札をみると銅貨五枚と書いてあった。なぜだろうと首をかしげていると店主のおじいさんが話しかけてきた。


「そこにあるのは全部失敗作じゃ、値段も適当じゃから物によっては安くするぞ?」

「まじか」


 どうするか、一応まだ短剣はあるので必要かと聞かれればそんなことは無い、しかしこの短剣だけでは心もとない。

 なので予備としてもう一本短剣を買おうと決めたアルト。

 と、そういえばキースは何してるんだと思って見てみるとカウンターの奥の天井付近の壁に飾られている剣を見ていた。たぶんロングソードだろう。


「あれが欲しいのかキース?絶対高いぞ?」


 あんなところにあるんだから高くないわけがない。

 見た目は普通の剣だ、といっても俺たちぐらいの背はある。なので俺たちから見たら大剣にも等しい。


「分かってるって、見てただけだし!」


 とは言いつつもとても欲しそうな顔をしている。

 嫌な予感しかしない。


「買ったところであれは装備できないだろ?振る前に振り回されるぞ?」

「この剣に興味があるのか?」


 そう言っているとまたもや店主が話しかけてきた。

 キースが剣を指差す。


「やっぱ高いのか?」

「そうだなぁ、これに値段をつけるなら金貨一枚は欲しいところだ」

「金貨一枚…」


 買えない額ではなかった。しかし買ってしまえばこの先の食料がなくなってしまう。

 それにしてもやっぱり高いなぁとあの剣を見てみる。


「なんでそんなにするんだ?見た感じだと普通の剣にしか見えないんだけど?」

「あれは素材と作ったやつの腕がいいもんだからさ、確かに特に装飾も無ければ魔剣や聖剣の類でもない。ただ素材がいいだけの良い剣さ」

「ふーん、そいつすげーんだな」

「ああ、すげーもすげー、こと鍛冶に関しては右に出るものはいないと言われるほどじゃ。そうじゃ、試しに持ってみるか?」

「え、良いの!?」


 そう言うと店主は椅子に登って剣を取り出してきた。

 キースはキラキラした目でそれを受け取る。

 と、流石に自分の身長程の剣を持ってバランスを崩す。そのまま後ろ向きに倒れてしまった。


「いてて…」

「大丈夫かお前さん?」

「全く馬鹿だなぁ…ほら」


 そう言いながらアルトはロングソードを右手で軽々と持ち上げた。

 やっと重りが無くなって体を起こすキース。


「わりぃ」

「はい店主さん、剣は返します」


 剣を返そうとカウンターに戻したアルト。

 しかし店主は目を丸くしてこちらを見ていた。

 ん?何かまずいことをしてしまっただろうか?

 まさか今ので剣に傷が?もしかして弁償?銀貨ぐらい飛んでく?


「お前さん…」

「ごめんなさい!」


 条件反射のように頭を下げるアルト。

 まずは誤って誠意を見せるのだ、そうすれば多少は大目に見てもらえるかも知れない。


「何を謝ってんだアルト?」

「バカお前のせいだよ、お前も早く頭を下げるんだよ!」

「え?え?」


 アルトは無理矢理にでもキースの頭を下げさせる。

 が、しかし、次に帰ってきた言葉はアルトの予想外のものだった。


「お前さん、よくこの剣が持てたな?」


 店主の顔は驚きに満ちている。

 よく考えてみれば、いや、普通にそのとおりである。

 キースが持てなかった剣だ、であれば同い年のアルトが持てるはずがない、軽々と。

 では何故か?答えは簡単だ。


「あ、そっか。俺特異体質なんですよ」


 そう、この右腕は人ではない、マルキス辺境伯に聞く所によると巨人。

 俺の腕には巨人がついている。

 巨人仕掛けの腕ブラキウム・エクス・ギガス、それが俺の腕だ。

 大層な名前だがまだ上手く使えてはいない、せいぜい大人ほどの力が出せるぐらいだ。


「なんと特異体質持ちか、それはまた数奇な…実はな、この剣の製作者もお前さんと同じ特異体質者なのじゃよ」


 それを聞いたとき、アルトは今日一番の驚きを覚えた。

 俺と同じ転生者がこの特異体質を持って生まれる。

 鍛冶に特化した神の身体を持って生まれたに違いない。


「そうなんですか…」

「これも何かの縁かのぅ、それにしてもお前さんら一体いくつなんじゃ?」

「四歳です」

「四歳!?…なんでまた子供二人だけで武器屋なんかに」

「えっと詳しくは言えないんですけど…」

「俺たち武者修行中なんですよ!これでも魔犬ぐらいなら倒した実績あるんだぜ!」

「ほうこんな子供がのぅ…」


 嘘は言っていない。嘘は言っていない。

 ただ少し説明は少ないが…。


「修行と言ったが旅か?」

「はい、そうです」

「いつこの街を出る?」

「明日の昼ごろには」

「ではその時になったらまたこの店に来なさい」

「え?」

「お前さんらにこの剣をプレゼントしちゃる。だから扱いやすいように剣を二振りの短剣に打ち直す」


 突然の申し出に困惑する二人。

 確かにそれはかなりありがたい。そんな良い物をタダでもらえるのだ。

 しかしながらどう答えていいものかわからなくなってしまった。

 それを察してか店主が笑いながら言う。


「なに遠慮するでない、この剣もずっと飾られててくすぶっておったのじゃ、装飾も無く飾りのための剣でないこやつをずっと飾っておくのも酷い話じゃ、それにお前さんらにならくれてやってもいいと思えただけじゃ、年寄りの頼みと聞いて受け取ってはくれんかのぅ?」

「そういうことなら」

「ぜひ!やったなアルト!」

「お前はもう少しだな…」

「はっはっはっ、子供が遠慮を覚えるのはまだ早いわい」


 そうして、俺たちはその剣を貰うことになった。

 二本の短剣に打ち直すのには時間がかかるらしいので明日また来てくれとのことだった。

 これでこの旅も大分安心できると思う。

 アルトとキースは店主にお礼を言って店を後にした。

 ちなみにだが、防具屋には行かなかった。剣が増えるので自分たちの体格ではもう容量オーバーなのだ。


 ということで、俺たちは今この街でも五本の指に入るほど大きな建物の前に立っていた。

 その建物からは重装備の戦士や杖を持った魔術師、獣人やエルフやドワーフも出入りしていた。

 そう、この建物は冒険者組合の本拠地とも呼べる施設なのだ。

 ここに来た理由はだって?決まっている冒険者になるためである。


 昔、といっても数ヶ月程前だが、まだ俺たちが普通にクーリカ村で暮らしていた時だ。

 お隣のグレンおばさんに聞いた話を思い出したからである。

 冒険者は都合がかなりいいらしい、理由としては冒険者になるとカードを発行してもらえるらしく、それは冒険者の証であると同時に身分証明にもなるのだ。

 それに冒険者組合はそれなりに大きな街にはどこにでもあって、他の国にもあるので稼ぎにはそれほど困らないらしい。

 だからアルトたちはこの機会に冒険者に登録することに決めたのだ。


「良し、行くぞ」

「おう」


 二人は冒険者組合に入っていく。

 中には机がいっぱいあり、そこにチームを組んでいるであろう冒険者がなにやら話し込んでいたり、報酬を稼いでいたり、素材の物々交換をしていたりと様々だった。入ってまっすぐ進むと受付が八人いるカウンターがあり、その横には横長の掲示板があった。掲示板には色々な紙が所狭しと貼ってあった。

 あれが依頼掲示板か…本物を見るのは初めてだ。

 まぁ別に大して珍しくもないものに興奮してしまうのは転生者故だろう。


 とまぁまずは冒険者登録である。

 アルトとキースはそのまま真っ直ぐにカウンターに向かった。

 その間に好奇の目で何人かの冒険者がこちらを見ていたが幼さ故しかたないと思った。

 けどちょっと恥ずかしいです。


 てかカウンターが高い、武器屋のカウンターも高かったけどやっぱ基本は大人が来るから子供ほどの高さなのである。ファーストフード店に来てる子供がそんな感じだろう。

 しかし受付のお姉さんはちゃんと見えるので問題はないと見た。黒髪ポニーテールの綺麗な人だ。


「椅子、いります?」


 受付のお姉さんが気をきかせてくれた。

 うう、やっぱり恥ずかしい。笑い声が聞こえるが俺たちのことでは無いと信じたい。


「えっと、それではようこそ冒険者組合へ、本日はどのようなご要件でしょうか?依頼の申し込みでしょうか?」


 こんな子供にもしっかりと対応してくれるあたりこのお姉さんはいい人だ。

 しかし今回は決して依頼の申し込みではない。


「あの、冒険者になりたいんですけど…」

「冒険者にですか?」

「ああ!俺たちその為に来たんだ!」

「そうだったのですか。では手続きをさせて頂きます。登録料として銅貨五枚頂けますか?」


 アルトたちは銅貨を受付嬢に渡す。

 受付嬢はそれを確認するととある道具を持ってきた。

 それは鉄板のようなもので四角く、四角い枠が掘られている。

 アイパッドとかにイメージは近いだろうか。かといってそういう操作はできないみたいだが。


「こちらに手を当ててください。そうすることで貴方の情報を読み取ります」


 なるほど、これはアイパッドモドキなのではなくスキャナーだったのか。

 アルトは早速右手を当てる。するとビリビリとした感覚と共に体を何かが探るような感覚が襲ってきた。

 スキャナーとは言ったがなんとなく呪具の類ではないかと思ってしまう。

 続いてキースも行ったがやはり同じような表情をしていた。


「はい、これで終了です。カードを発行しておりますので今しばらくロビーでお待ちください」


 そう言われたので二人は待つことにした。

 とは言ってもただ待つのは暇なので依頼掲示板を見てみることにした。

 うう、ここでも高さが…。早く高校生くらいになりたい。生前は身長もそれなりにあったので視線が恋しい。などと奇妙なことを思ってしまう。視線が恋しいってなんだよ。


 改めて見れる範囲で依頼を見てみる。

 張り出されている紙にはその依頼の名前と簡単な内容と難易度が記されていた。

 採取系に討伐系、護衛とかもあった。定番なのがやはり採取だろうか、薬品などに使うのかもしれない。

 そういうものは決まって危ない所にあるもので、一般人は近寄れないのだろう。


「おい見ろよアルト!」

「なんだよキース?」


 そう言いながらアルトの服を引っ張るキース。

 キースが指をさした依頼書は討伐クエストだった。

 なになに?魔犬オータスの討伐だって?

 内容は魔犬オータスの群れを倒すものだった。オータスにはいい思い出がない。

 まあ半分以上そこのキースのものだが…。

 報酬は金貨一枚か。意外と多いなと思ったが少し傷んでいた。少し古いのだろう。

 といっても受けるわけではないしどうでもいいです。


 それから掲示板を一通り見て回ったころで再び先程の受付嬢に呼ばれてカウンターに出向いた。

 二人は金属製の厚さ二ミリほどの冒険者カードを受け取った。

 これが冒険者カード。


「くれぐれも無くさないようにしてください。再発行手数料もありますし何よりこれには個人の情報、強さやどんな技があるのかが記録されています。基本的には自分以外の方には読めませんが読む方法は無いわけではないので」


 それは怖いな、絶対に無くさないようにしよう。

 カードをみると簡単にだが色々と書かれていた。

 まず名前、アルト・リバイクとしっかりと書かれていた。ここでもし藤宮明人と出ていたらどうしようかと思ったよ。

 次に年齢と性別、スキルとは使える技のことだろう。その欄には特に記載はされていなかった。

 特異体質や魔法魔術適正に関しては記載はされないようだ。

 と、右下の端に少し大きく枠がありそこにEと書かれていた。

 気になったので受付のお姉さんに聞いてみる。


「すいません、このカードの右下のEってなんですか?」

「え、もうEなんですか!?」

「え?」

「え?」

「アルトはEなのか?俺はGって書いてあるぜ?」


 聞く所によるとその表記は冒険者としてのランクだそうだ。

 経験値を得ることで徐々に上がっていくそうだ。

 全部で下から順にG、F、E、D、C、B、Aそして最高峰のSとなるらしい。そこに+が付いたりするがそれはまた別の時に話そう。

 GとFが駆け出し、E~Bが冒険者、まあBは既にベテランらしいが、そしてAとSこれがつくのは勇者や英雄級と言われる程の実力らしい。


 と、普通ならまずGからスタートするらしい、確かに中には最初からアルトのようにEやD、更にはCからスタートする人もいるらしいがそういう人は決まって既に戦闘などを経験している戦士であるらしい。

 受付のお姉さんが驚いたのはそのためだろう。

 理由は心当たりがある。巨人化したというアルトは執拗に魔犬オータスを殺していたらしい。

 中にはリーダー格のオータスもいたらしくそれが原因だろう。


「わかりました。ありがとうございます」


 アルトはお礼を言ってカウンターから離れた。

 受付嬢は何とも言えない表情をしていたが致し方ない。

 二人はこの後の話をするために近くの机に着いた。

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