第13話:神剣の必要性
翌日。
朝早くから『レベルサクリファイス』を受けに参った女神様に、セレスティナとキリカは平伏していた。
女神様は二人に差したる興味も持たず、アルトに『レベルサクリファイス』を催促し、ソレが施されるとサッサと神界に上機嫌で帰って行った。
「アルト、どう云うことなの?!」
女神様が去ってから早速、セレスティナがアルトを問い詰めた。
それから、アルトはレベルサクリファイスについて説明をし、そして、こう言った。
「俺の上位ユニークスキル『受動獲得』で『レベルサクリファイス』のユニークスキルを獲得したみたいなんだよね」
軽く言い放ったが、それは重大な事実を示していた。
「本当にユニークスキル?他の人は持っていないの?」
「ルシアンが用意したマジックアイテムから頂戴したみたいで、神々の話では、ユニークスキルには間違い無いらしい」
「──で、何で今朝、女神様がその『レベルサクリファイス』を受けに参られたの?」
「『レベルサクリファイス』は、神々レベルの存在にとっては、レベルと引き換えに若返りと精神的疲労感を払拭する副作用があって、それはレベルと引き換えでも神々にしたら求める価値のあるものらしい」
「ソレが出来る神様か女神様は居ないの?」
「難しいらしい。で、手軽にレジストさえしなければ簡単に施せる俺が目について、基本的に1日1回は施す約束をしている」
そう言って、アルトは腰に提げていた神剣を持ち上げて示した。
「この神剣『バルカ・レガリア』は、鍛冶の神バルカドロス様の加護を受けている」
「……レガリア?何か、契約をしたの?」
「必要が無い限り、この神剣は抜かないと云う契約をした」
ソレが、何を意味するのか。
「まぁ、今なら、素手でも闘おうと思えば闘えるからね。
ただ、揉め事は避けましょう程度の話さ」
その時、ハタと気付いた。
「ヤベェ、クレイドル置いてきた」
「クレイドル?誰ソレ?」
「いや、ダンジョンで世話になったドレイクなんだが……。
ちょっと待っててくれ。連れてくる!」
そう言って、アルトは転移すると、クレイドルの首根っこを掴んで再転移し、二人の元へ戻る。
『グエッ!アルト、儂の扱いが手荒いぞ?』
「ああ、スマン、スマン。
コイツがクレイドル。コイツのお陰で生還出来たと言っても過言でない程に世話になったんだ」
「へぇー……」
そして、アルトは自分の旅に二人を巻き込むか、一瞬迷い、現状を考え、言い出してみることにした。
「なぁ、二人とも」
「なぁに?」「何デスか?」
「俺の、目的もハッキリしてない旅に付いてくるか?」
「勿論じゃない!」「当然デス」
「そっか。じゃあ、将来は定住の地を探そう!」
「それも良いわね!」「良きデス」
二人の返事を聞き、二つ返事なことに軽くフッと笑う。
──コイツら、放っといたら誰かに騙される、と。
アルトの言葉だから従っているのかも知れないが、人の言葉に意見も挟まず従うのでは、負け犬になる。
言ってみれば、詐欺師の手先として便利に使われてしまいかねないのだ。
高い報酬?そんなもの、弱みを握られた時点で支払われなくなっても文句一つ言えない。
但し、人の弱みを握る人間と云うのは、恨まれる定めなのだ。
そして、憎しみの連鎖の果てに戦争は起きる。
何故、悪口程度の軽度のイジメでも、嫌がったのか。何故、俺は悪口程度の軽度のイジメでは決して泣かなかったのに、アイツは一度の悪口の応酬で泣いたのか。
何故、俺は悪口一つ言っておらず、むしろ被害者だったのに、先生の言うことに従って、謝罪の言葉を述べたのか。
よく考えてみるがいい。いや、惡く考えた方がいいのか?
暴力は右、イジメは左。
ソレを端まで行なわれたら、どうなるのか。
ハラスメントは、『嫌がらせ』だ。
人が嫌がることをやるのがハラスメントだ。
何故、今の時代になって、ハラスメントが社会問題になっているのか。
そして、何故アイツら二人は、『□ね斎□』『□田□刑』なぞと言われたのか。
神にしてみれば、傑作のストーリーだったのかも知れない。この際、『様』の敬称を付ける価値も無い。
あのクソッタレの神の野郎は、ストーリーを面白くする為だけに、生贄を作った。イジメ尽くして、世界の真理の断片にも触れていない、謂わばコントロール下にあった時に、自らの魔王性に自らの手で『呪い』を掛けさせた。
自覚を持つのを遅らせる為に、2歳か3歳の子供を頭から溝に突き落とした。
ソレが、恐らく7周繰り返されている。
そして、このままで行けば、大惨事世界大戦だ。
切っ掛けは、呪いへの怨嗟。
宗教戦争にも近い様相だ。
核を持つ者と持たぬ者。
勝者は、明らかだ。
いや、最終的に、勝敗は意味を持たなくなるかも知れない。
神の描いたストーリーは、公開処刑からの、核と云う名の爆竹で、地球上の爆破だ。恐らく、間違い無い。
だが、ソレを止めるような奴じゃない。
拡大再生産。神にしてみれば、飽きた玩具は爆破し、新しい玩具を創れば良いだけだ。
大筋のストーリーは変わらない。
そして、アイツは、『自らに呪いを掛けさせる』と云う事態を予防出来ない。
怒る運命を背負っている定めの持ち主にも、『呪い』は掛かる。
警告は、気付かないレベルで、何重にも掛けられている。
もしかしたら、今、この瞬間にも警告は放たれているのかも知れない。
だが、成功者となり、首都へ向かう瞬間が、南海トラフ地震の銃爪だ。
何処をどう見ても、逃げ道は無い。
だから進むのだ。──『神に近づき過ぎて』□ぬ道へとだ。
人間はいつか必ず死ぬ。
地球とて、56億7千万年後には、太陽に呑み込まれて滅ぶ。
ただ、宇宙はどうだろう?
完全に宇宙が滅ぶ前に、新たな宇宙は生まれるのではないだろうか?
閑話休題。
「宇宙か……」
アルトは一言、何処ぞのアニメで主人公が呟いたのと同じセリフを吐いた。
空の上には何がある?
飛空船『ノアの方舟』号を操縦する、飛空船技師『□ド』が居る。
でもちょっと待ってくれ。
俺は似たような来世に行くために、そんなものに乗り込みたかった訳じゃないんだ……。
ソレは昔々の物語。
乗り遅れた奴は、来世になんて行けないぞ!
でも、俺も乗り損ねたかったな……。
呪いを掛けた者は、皆、呪われるんだ。
だから、なぁ。
呪いを掛けさせないでくれ。
来世の人生の、一生のお願いだ!
「まぁ、お陰で俺のような存在が存在し得ていると云う事実は無視しないで欲しいな」
……お前を存在させる為に俺が存在していた?まさか!?ソレだとしたら、もっと多くの者に観測されているだろう。
多分、この方法じゃ成功し得ないと云う学びを得る為に存在しているのだろう。
だって、そうだろう?リアクション一つ稼げない程度のレベルの問題だ。
レベル不足。確かに、そのメッセージも受け取った。
だが、あと何に気付けば一発当てられる?!
そもそも、一発当てたら、チャンスの後にはピンチが迫っているから、無意識のレベルで成功し得ないレベルで頑張っているのだろう?
否定したいが、それじゃ、まるで『頑張っている』と云う免罪符を求めて活動しているみたいじゃないか!
ハハッ……。ハハハハッ。そうかよ、努力しているなんてデモンストレーションの為に、俺はこんな物語を書いていたのかよ!
「創造神」
ン?何だ、我が身の欠片から生まれし者よ。
「試しに、レベルサクリファイスを受けに来いよ。
全くのゼロから、経験値を積み直せよ。
そしたら、何か違うかも知れないぜ?」
ならば、掛けてみよ。その身ならば、物理的距離に関係無く、俺にレベルサクリファイスを行える筈だ!
「『レベルサクリファイス』!
……何だよ、レベルはチットも上がらねぇなぁ……。
で、スキルは……っと!
スゲェなぁ!『何でもショップ』『コピペ』『当外自在』!?まだあるのか!
おいおい、幾つのチートを創造して来たンだよ!?
コレ、全部俺が貰って良いの?」
クッ……!幾らチートを与えようが、成功し得ない運命なんだよ!
そう、Lanaに呪われてから、不可説不可説転に一つも成功の可能性が無いンだよ!その呪いを解くために、『愛する者の口付け』が必要なんだけど、そもそも一発当てるぐらいしないと、愛し合える女性との出逢いは願えないンだよ!最強の矛盾過ぎて、ドッチも望めないンだよ!
「……こんだけチートを創造して来たのに、肝心の『呪いを解く能力』は創造していないんだな」
クッ……!だから……!
「……愛する者の口付けって、俺とセレスティナとのキスで代わりには出来ない?」
……多分、無駄だ。
「やってみなくちゃ判らないだろ?
セレスティナ。ちょっと頼みがある」
「アルト、さっきから誰と話してるの?」
「創造神様。……呪われているンだってさ。
俺たちって、創造神様の欠片を宿しているだろ?
創造神様の呪いって、愛する者の口付けが必要らしいんだ。
俺とセレスティナとのキスでソレの代わりに出来ないかなぁ、と思ってさ」
「もう、アルトってお人好しね。
いいわ。でも、晒し者にするのはやめてよね」
「流石に創造神様も、そんなに悪趣味では無いだろうさ」
「創造神様の為だものね。──え?アルトとキスするの?
ちょっと!晒し者にしたら、タダじゃ済まさないンだからね!」
しねーよ。R18の壁を突破していないンだから。
そうして、二人は見つめ合って、二人の世界に入り込むと、5分を超えるフレンチキスをしたのだった。




