第14話:安住の地
アルトは、幾つものチート能力を得て、その運用の仕方を考えていて、ふと思った。
「創造神様、チートばかり考え過ぎてるンじゃねぇの?
もっとこう……極めつけの欠点があって、利点でソレを補って、活躍する物語の方がウケるンじゃねぇの?」
チートで無双する物語は、既に時代遅れと云うことか。そうかも知れないな。
「俺の欠点は……仲間に裏切られる程に恵まれて無かったと云うことかな?」
昔は、『完全無欠のヒーロー』なんてものが好まれたけど、今はちょっと欠点がある、『人間らしいヒーロー』の方が、むしろ好まれているのかも知れないな。
「アルト。私たちじゃ不満?」
「いや……創造神が悩んでいるようでな。ちょっと、意見と云うか、アイディアを口にしてみたんだ」
「創造神様。私をアルトのお嫁さんにしてください」
……セレスティナが、真剣に祈りを捧げて来た。
「莫迦だな。俺に願えば良いのに」
「叶えてくださるの?」
「定住の地を得たらな」
「定住の地なんて、何処でも良いではありませんか!」
「住めば都、ってか?
でも、安全な場所が良いなぁ……」
この世に、絶対に安全な場所なぞ無い。
神の加護のある地ですら、その加護を得る為の紛争に悩まされている。
或いは、出雲大社なら、日本人にしか真価が無く、ある程度の安全性はあるかも知れないが。
「環境の良い場所には人が住んでいるし、他人がいる限り、ソコは安全とは言い切れない。
でも、治安の良い場所なら、ある程度の安全性はあるかも知れないが、災害や戦争は、いつ訪れるか判らない。
いっそ、川の近い山の中にでも住めば良いかと思ったが、既に『山』は呪われている。
『山の不動産』ほど怖いものは無い」
「なら、川岸は?」
「氾濫のおそれがある。呪われていると云う意味では、山程ではないにせよ、川も呪われている」
「人里ではダメなの?」
「少なくとも、村はダメだ。呪われている。
町は……俺たちが嫌われるだけだろう」
「じゃあ、孤島で良い」
「孤島は、津波の時に逃げ場が無いぞ?」
「そんな……じゃあ、私たちに安住の地は無いの?」
「無いだろうが……旅を住処にすれば良い」
「そんな……じゃあ、私たちの子供が望めない」
「子供を望むには、遅過ぎたンだろうなぁ……」
そうだな!俺が子供に恵まれなかったから、お前らも子供には恵まれんよ!
「……ねぇ。創造神様、狭量じゃない?」
「さあな。器が小さいから、成功出来なかったのかも知れないしな!」
「いや。創造神様が小さいのは、肝っ玉デス」
「本来、女の子として産まれてくる筈だったのに、兄貴の魂を宿したことで男に産まれてきたせいかも知れないな!ドッチかって云うと、辰より卯で、肝っ玉も卯相当にしか無いンだろう」
「だから、卯は可哀想で、食用として余り融通されていないンデス!」
「文字通り、三日天下だからなぁ……」
「いも……弟も、長生きを願ったのなら、三万日天下の人生を歩めたかも知れなかったのにねぇ……」
「三万日……何年だ?」
「82年デス」
「まぁ、男にしちゃ、長生きの方か。程々程度に」
「本人は、年内にでも□ぬつもりで『神に近づき過ぎて』しまうつもりみたいデスけど」
「ん?キリカ。創造神に毒を盛った?」
「ン!ドラゴンも意識を混濁させる毒デス」
「獅子は、卯に飽き足らず、辰も狩るつもりか……」
「創造神か死神か、判らん奴なのデス」
「冥王星の星の生まれらしいからなぁ……。
その分、兄貴が海王星の生まれか」
「私たちを生まれさせてくれたのは創造神様よ?
子供も、望めばくださるかも知れないじゃない」
その時、キリカが真理を一つ言う。
「ヤればデキるのデス」
ボッと、赤面するアルトとセレスティナ。
「二人とも未経験なら、私がアルトに経験させてから、それから二人でヤることをヤれば良いのデス」
「……!キリカ。貴女は経験が?」
「任務によっては、必要だから、経験はさせられたのデス」
「可哀想に……」
「お陰で、アルトの初めてを頂けるかもデス」
「俺、初めてじゃないけどな」
「「ハァッ!?」」
アルトは、二人と視線が合うのを両手で防ごうとしながら、誤魔化す為にこう言う。
「いや、『英雄候補』になる際に、そう云う接待を受けたと云うか……」
「酷いッ!私はアルトに一途だったのに!」
「いや、ヴァルザックに半ば無理矢理に連れて行かれたんだ!俺の意思でどうにかなる事態じゃなかったんだ!」
「ヴァルザックぅ〜!!」
セレスティナの怒りの矛先は、ヴァルザックへと向かった。
「じゃあ……セレスティナ。今夜の宿で……その……ヤる?」
「ヤります!」
セレスティナは意地になってしまった。こうなったら、梃子でも動かない。
『我に支点を与えよ、さらば地球をも動かさん』とまで言われた梃子でもだ。きっと、ノックバック不能の能力持ちだ。
「あの……今晩は野宿になる可能性が高いのだけれども」
「だから何だと云うのです?」
「マジか……テントの中でか……」
「何か問題でも?」
「いえ!あの……」
「アルト、私が警護するのデス」
「そう云う問題じゃなくて……」
「何か問題があるとでも言うのですか!」
「いや、セレスティナとは……その、雰囲気の良い時にと思っていたから……」
「雰囲気が惡いですか?
善は急げと云うじゃないですか!」
「いや、善なのかなぁ……」
「子供が出来たら、『ゼン』と名付けようではありませんか!ホラ、急ぐ理由が出来たでしょう?」
「んー……今、どうなのかなぁ……。
獅子座の生まれにでも産まれて来たら、『ゼン』なんて虫は知らないし……」
「何か文句があるなら、仰ってみなさい!」
「ヒイッ!……まぁ、良いか。
じゃあ、これから何処へ向かう?」
「……そう云えば、アルトを追って来たから、目的を果たせてしまいました。
アルトはこの先、何方へ向かうおつもりでしたの?」
ようやく、セレスティナから修羅場感が失われた。
アルトは、そう云えばと旅の目的地を思い出した。
本来ならば、とある貧民街に、フォルトゥ・ブレサ様の昇神化の際に、救い損ねた『最初の金貨一枚』を授けに、アルトが代理で『トリガード・ポイント』に『代わりの金貨一枚』を落としに行く予定だったのだ。そして、その金貨一枚にフォルトゥ・ブレサ様の加護を重ねて、貧民街一帯が救われる切っ掛けが出来る予定だったのだ。
それを果たして、より一層のフォルトゥ・ブレサ様の加護を重ねて得るのが、今のアルトの目的だ。
「二人とも。先を急ぎたい。転移しても……良いか?」
「ええ。私は構いません」
「私も良いデス」
なら、とアルトは右手でセレスティナの、左手でキリカの肩を押さえ、元いた位置に転移した。
「あー……急げば、町の宿に間に合うな」
「急ぎましょう!」
急にセレスティナは活発的になった。まるで、野宿で初めてはイヤだと言わんが如く。
「さあ、どちら?」
「あー……コッチを道なりに」
「コチラですね!?」
セレスティナはサッサと歩く。なのに、何故かその姿は気品に溢れていた。
こりゃ、上等の宿を取らないとダメだなとアルトは諦めを付け、キリカを急かし、アルトも早足で歩く。
すると、丁度日没を眺められる頃に町に着いた。
そのまま、宿町に向かい、上等の宿でダブルの部屋一つとシングルの部屋一つを取り、夕食もその宿で摂った。
そして、キリカをシングルの部屋に閉じ込め、アルトとセレスティナは向かい合ってベッドに座り、セレスティナが顔を手で隠すとこう言った。
「あとはお任せします」
アルトは、落ち着いてセレスティナと唇を重ねた。




