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誤魔化し

モニターに映る男子学生の姿を見て、俺の心臓は今日一番のスピードで脈打ち始めた。「おい、世古! 誰か迎えに来たぞ! 男だ!」『えっ、嘘、今日だっけ……!?』電話の向こうで、俺の声をした真鈴が初めて焦りの色を見せた。『あ、思い出した、グループワークのリーダーの佐藤くんだ。今日、映画祭のプレゼン資料の最終確認で、一緒に校舎に行く約束してたんだわ……』「どうすんだよ! 喋ったら一発でバレるぞ!」『落ち着いて。さっき言った通り、声が出ないフリをして。風邪で喉が完全に潰れたってジェスチャーで押し通すの。スマホのメモ帳を開いて、すぐ見せられるように準備して!』インターホンが再び鳴る。俺は意を決して、真鈴の身体を揺らしながら玄関へ向かった。ドアを開けると、少しチャラそうな雰囲気の男子学生――佐藤が立っていた。「よっ、世古、お待……って、なんだその格好。まだメイクもしてないじゃん」佐藤は俺の顔を見るなり、怪訝そうな顔をした。俺は慌てて首を振り、片手で喉を抑えながら、掠れた息の音だけを出した。「あ、あ……」と声を絞り出すフリをする。「え、何? 声出ないの?」すかさず、用意していたスマホの画面を突き出す。【風邪で喉が完全に潰れました。声が出せません。耳は聞こえるので、このまま一緒に行きます】「マジかよ、災難だな。映画祭の最終調整なのに……。まぁ、世古の作業は終わってるし、今日の打ち合わせは俺たちが進めるから、お前は頷いてるだけでいいよ。ほら、早く準備して行こうぜ」「頷いてるだけでいい」という言葉に、俺は心の底から安堵した。しかし、本当の地獄はここからだった。

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