楽屋の緊迫と、課された「特技披露」
拒否する間もなく、俺はコンテスト運営の女子スタッフたちに拉致され、ステージ裏の楽屋へと連行された。周りを見渡すと、他学部で有名な読者モデルの美女や、お嬢様系の美少女たちが、完璧なドレスやメイクで出番を待っている。その中に、フリフリのメイド服を着た、顔を真っ赤にしてガタガタ震えている俺(真鈴)が放り込まれたのだ。スタッフから進行表が手渡される。「世古さん、1次審査は自己紹介とウォーキング、2次審査は『特技披露』になります。世古さんは『デジタルアートのライブペインティング』で申請されてますので、ステージ上の大型液晶タブレットを使用してください」「ライブペインティング……!?」絶望だった。真鈴の身体はペンを握る感覚を覚えているが、俺の脳みそには、大観客の前で即興で人を感動させる絵を描く技術なんて一ミリもない。冷や汗が背中を伝い、ブラジャーのアンダーゴムが緊張で余計に苦しく感じられる。下半身はストッキング一枚で、ステージの袖から吹き付ける秋風が、ミニスカートの裾を揺らして股間に心許ない寒さを与えていた。その時、楽屋のパーテーションの隙間から、見覚えのある「俺の身体」が顔を出した。中身は真鈴だ。彼女は俺の太い腕で腕組みをしながら、鋭い視線で俺を見つめていた。『……聞いたわよ。ミスコンなんて聞いてないんだけど』頭の中に、スマホのインカムを通じて彼女の低い声が響く。「世古! 助けてくれ! ライブペインティングなんて、俺がやったら一瞬でド下手くそなのがバレる! お前の、プロ手前の天才クリエイターとしてのキャリアが、私の身体が、みんなの前で恥をかくんだ!」真鈴(中身)は、俺の顔のままフッと不敵に笑った。『いい? 私の身体は、国際アニメ映画祭(ANIAFF)のロゴやポスターを手がけた「世古真鈴」の肉体よ。私の4年間の努力を、その辺の読者モデル崩れに負けさせるわけにはいかないわ。……今から、私の言う通りに動きなさい』




