最も重い2日目 ―― 映画祭プレゼン本番の死線
翌日、生理は最も経血量が多く、痛みがピークに達する「2日目」を迎えていた。「う、く……っ」ベッドから起き上がることすらままならない。下腹部を金属のヘラで内側から抉られるような激痛。追い打ちをかけるように、スマホの画面には「国際アニメ映画祭(ANIAFF)運営委員会・最終プレゼン 13:00〜」の文字。彼女がHAL名古屋の4年間、そしてクリエイターとしての人生をかけて挑んできたプロジェクトの、まさに集大成となる日だった。声が出ない設定の俺に代わり、発表自体はグループリーダーの佐藤が担当することになっていた。しかし、メインデザイナーである「世古真鈴」がその場に立ち、質疑応答(筆談やチャット画面の投影)に対応しなければ、委員たちの信頼は得られない。『……あなた、生きてる?』俺のスマホから、俺の低い声をした真鈴が、緊迫した声で話しかけてくる。「世古……正直、意識が飛びそう。下着の中が、もう、何か出るたびにジュブジュブ言ってて……漏れてないか不安で一歩も動けない」『薬は飲んだ? 夜用の、一番長くて吸収力がある40cmのナプキンを2枚重ねにして穿いて。あと、私のクローゼットの奥に、黒のサニタリー用のオーバーパンツ(黒スパッツ)があるから、それをデニムの下に絶対に穿いて。万が一漏れても、黒なら外には見えないから』彼女の声は、まるで戦場に赴く指揮官のように冷徹で、かつ的確だった。『いい? 今日のプレゼンには、愛知県や名古屋市の行政関係者、そして国際映画祭の重鎮たちが並ぶわ。私の4年間が、今日のあなたの1時間に懸かってるの。……お願い、耐えて』「……わかった。意地でも、その席に座ってやるよ」




