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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第二章 離別

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終わりと始まり

慌ただしく時間が過ぎた。

やっと帰還したのにだ。


まず王都に着くなりリフがやらかした。

何が、

「こういうのは派手なのがいいんですよね?」

だ。

ふざけやがって。

低空で王都へ。

それこそ防壁スレスレにだ。

市民は大騒ぎ。

パニック寸前になっていた。

事前通達が出ていなければ、雑踏事故になっていただろう。


そのまま高速で王城へ。

優雅に王城の上を二度旋回。

合間にブレスまで吹いていた。

ふと気づくとバルの肩が揺れている。

そうかよ、バルの入れ知恵か。


王城の庭園で騎士が集まり手信号を送っていたが、これを無視。

「ちょっと狭いですね。」

じゃないんだよ。

「あっ、あそこがよさそうです。」

とか言い出して、大聖堂の前庭に降り立った。

確かに二ブロックしか離れてないし、飛んでなくとも目と鼻の先ではある。

ただな、王城の人たちにも段取りってもんがあるだろうよ。

ちなみに俺の親友の顔は少し青ざめてた。

申し訳なさそうな顔で。

その顔は俺にも向けてくれ。

たまにでいいから。


慌てふためく市民と神官。

たまたま居合わせた子どもは驚いたのか怖かったのか、泣き出してしまった。

大聖堂から飛び出してきた高位の神官たち。

その後ろからゆったりと近づくのは、複数いる爺様の彼女の一人にして大神官長。

ジャスミン・メイヤーその人だった。


「あらあら、かわいい子竜ちゃんね。

ジャスミンよ、よろしくね。」

には激しい目眩を覚えた。

いきなりリフの鼻面を撫でながらだ。

まじで肝が座ってんな。

サイズ的にレッサードラゴンとはいえ、見た目凶悪な黒竜なんだが。


「はい、よろしくお願いします。

リフィルシャールです。」

丁寧だな、おい。

というかちょっと怯えてないか?

わかるのか?

その人がヤバいって、リフよ。

俺もそこの勇者様も、手合わせで何度もゲロっていうか、言葉通りに血反吐を吐かされてるからな、ジャスミンさんに。

五分以上に勝てるようにはなったけどもだ。

思い出したくもない、あの手合せは。


その脇ではバタバタと神官たちが駆け回っていた。

王城へ伝令に走るもの。

式典の準備を続けるもの。

何人かは資材を持ったまま遠巻きにしてる。

完全に邪魔になってるようだった。

すいません。


「ところであなたのお腹の中にいる、不浄に落ちた者は何ですか?」

ゆっくりとリフの鼻面を撫でながらそう言った、ジャスミンさんの瞳が金色に変わっていた。


治癒魔法を使う時、そして戦闘時。

彼女の瞳は金色になる。

ヤバいな、これ。

主にリフの命が。


「あっ。」

いや、「あっ」じゃねえよ、レミド。

早くフォローしろよ。

てか生け捕りにさせといて忘れてただろ、絶対。


その時。

何もない空間が不意に歪んだ。

それと同時に鼻をつく酸味が効いた刺激臭が辺りに満ちた。

その強烈な匂いに負けないほどの、垢臭さも漂う。

なんだよこれ。


「レミドおかえり、リッチちょうだい。」

感情も抑揚もまるでなしにそんな言葉を発して、空間の歪みからエルフの少女が現れた。

ヤケに大きな金縁眼鏡。

そしてツルペタ。

汚れた、いや汚れきった白衣だった物。

脂まみれでもつれた銀髪は腰の下まで伸びていた。


「フヒッ、ンウヒヒ。」

引き付けか過呼吸でも起こしたのかと思ったが、どうやら興奮しながら笑っているようだ。

そして間違いなく周囲に漂う激臭は、この少女から発していた。

えづきそうなほどの強烈さで。


名前を呼ばれたレミドは遠い目で空を見上げている。

そんな場合か、おい。


「あっ、ドラゴン。」

またも無表情、かつ抑揚のない声でそう言うと、眼鏡をクイッと上げてリフの周りをぐるぐると回っていた。


「ふむふむ、ほえ〜、あっ。」

おもむろにリフの尻尾の鱗を、あろう事か素手でむしった。


「ギャッ!」

小さく悲鳴を上げたリフには見向きもせずに、手にした鱗を日に透かしている。

何なのよこの子。


「おお、お宝お宝。

ああやっぱり、古竜の仔だ。

そこらのドラゴンと違って、換毛とか換羽みたいに生え換わるんだよね、鱗。」

いや、その情報は今いらない。

てか誰、このエルフ。

目に染みるんだけど。

きついなあ。


「副団長。

リッチは後で触らせますから、あなたの研究棟で待っていてください。

あと、あげませんから、絶対に。」

死んだ眼でそう言ったレミドの言葉で合点がいった。

ああ、研究バカっていう例の、と。


その副団長様はコクリと頷くと、視線を俺の横で唖然としてた親友に向けた。

「おお、勇者だ。」

またも抑揚なくそう言うと、ひどく緩慢な動きでこちらに来た。

その足はその勇者様の前で止まる。

そして前触れもなくやつの前髪を一本引き抜いた。

驚くほどの速さで。

なんだその緩急。


「フヒッ、お宝二個目。」

いや、あの、何?

マジでこの人。


「あっ、名乗るの忘れてた。

ポーラ・アシュリー”トキシン”ミシュマリルです。

副団長です。

それじゃ。」

そう言ってくるりと後ろを向くと、彼女の前の空間が歪む。

その歪みの中に足を踏み入れ忽然と消えて行った。


てか何、今の魔術?

「転移魔法か?」

思わず呟いたのをレミドが拾った。


「そうよ、あれのオリジナル。

教えないのよ、誰にも。

『急には無理、民が混乱するから』って言ってね。

他にも民間に下ろす技術は選別してるのよ。」

苦々しげに言っているが、その判断は間違ってないだろう。

アイツの世界ならまだしも、俺たちの世界では徒歩と馬車が主力の移動手段だ。

社会が壊れかねん。


とか思ってたら、大聖堂前の広場にどこかの貴族家騎士団が入ってきた。

分散して帰還していた貴族家だろう。

数はそう多くない。

ざっと五百騎といったところか。

疲れは見える。

だが安堵の色の方がより強く顔に出ていた。


駆け寄った神官に進み出たのは、実直そうな面立ちの中年貴族だった。

「事前に魔禽で連絡を差し上げた、オイラー子爵家当主メイザーだ。

王国軍総指揮、クルガン殿のご遺体をお連れした。

よしなに頼む。」

「ご苦労さまです、休まれますか?」


やりとりは続いていたが、そこからは耳に入らなかった。


どれだけ棒立ちになっていただろう。

視界の端にふらふらと歩く友の姿を捉えて我に返った。


口元が小さく動いているから何か呟いているんだろう。

でもあまりにも小さな動きで言葉までは読めなかった。


「おい!貴様!

何をしている!」

子爵が怒鳴るのも無理はない。

荷馬車に上がり込み、棺に手を掛けたのだから。


事態に気付き騎士たちが殺到してくる。

遅れること半瞬。

俺たちもバラバラに駆け出していた。

何やってんだ、あいつ!


騎士達の手が届く寸前。

棺の小窓を開けた俺たちの勇者様は、まるで勇者らしくない、

「ヒィ………。」

っという小さな悲鳴を上げて崩れ落ちた。


意識がないのかピクリともせずに荷馬車から引きずり降ろされるのを、俺たちは見る羽目になった。

乱暴されることがなかったのは、ジャスミンさんと爺様が割って入ってくれたからだ。


「勇者様が何故………。」

引きずり下ろした騎士たちも、憤慨していた子爵までも唖然としていた。


大聖堂前の象徴的な白黒の石畳の上に転がされた友は、うわ言のように何事か呟いていた。

その声は周囲のざわめきに負けるほど小さい。

なんとか聞き取ろうと、俺は耳を口元に近づけた。


「俺が………、俺の………。」

「えっ、なんだって?

おい、しっかりしろよ!?」

「俺のせいでクルガンさんが………。」


自分を責めるのかよ。

お前、悪くないんだよ。

その言葉はこいつが目覚めても口にする事が出来なかった。

俺に言う資格なんてない。


だってそうだろ、大親友。

お前を戦場に戻らせなかったのは、他ならぬ俺なんだから。

はい、なんか出て来ましたね

話題にはなっていた王道正騎士団軽騎士副団長のポーラ

キツいですね~

何気に名前も初出です


後半の落差はダメ親父的にも温度差で風邪をひきそうです


なんでと言われましてもね

脳内アニメ垂れ流しなんで、私にもわからないんですよ

狙ってる大筋・大枠には向かってるので、

「これでいいのだ!」

と開き直っています(ダメじゃん!)


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます


モチベにつながるので、ブックマークをお願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネして頂けたら、ダメ親父は一人「喜びの舞」をするでしょう


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら………

その時はそっ閉じで


それではまた次回で!

次回 「突き付けられたもの」(6/13 19:00予定)

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