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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第二章 離別

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122/128

連合軍

あとがきの次回予告

間違って次々回のになってたんで修正しました

m(_ _)m

(5/17 12:30 修正)

そこかしこ、といっても国や勢力毎ではあるが、煮炊きの煙が立ち上っている。

ギョッとしてその手が止まるのは仕方ないだろう。

リフことリフィルシャールを連れているからだ。

摘み上げられたコルミアの指揮官殿を指さすものもいるが、遠巻きにしているのは共通していた。


リフィルシャールを伴っているにも関わらず騒ぎになっていないのは、スプリンガー老伯に頼んで魔禽を飛ばしてもらったからに過ぎない。

馬と違い、魔禽はドラゴンに怯えなかった。

理由はよくわからないが、魔物同士の何かがあるのかもしれない。


完全武装のバルが少し離れた先頭を歩いているのも、適度な威圧感になっているだろう。

勇者様。

俺。

その後ろにレミドと爺様が並んで続き、その後ろにリフがズシズシと歩いている。


前夜、こんな会話があった。

「お前さ、地響き立てないで歩けないのか?」

「?

出来ますよ、ジェス様。

こうでしょ?」

俺の問いかけに実演してみせるリフだったが、完全に無音な事に驚かされた。


「どうなってんだ、それ。」

呆れ気味に聞くと、逆に何言ってんだって感じに首を傾げられた。


「狩りをするのですから、これぐらい出来ないと獲物が逃げるじゃないですか。」

そうだけど、そうじゃない。

デカさと重さってのがあるだろうに。

竜ってのは複数の生物の特徴を持つなんて言われるがアレか?

猫科の生物の特性も持ってるってことなのか?


「それは凄いけど、今回は地響きを立てない程度に歩いて欲しいな。

どうせジェスだから、威圧感は大事とか思ってるだろうし。」

そうだけどな。

言っちまったら台無しだ、親友よ。


「演出は大事と。

お任せください、得意ですから。」

何がだ?


「父が言っておりました。

『よいか、中身が伴わなくては意味がない。

だが見せるための威厳は大事だぞ。』

と。

なので練習したのです。」

おい、竜。

言ったら台無しだっての。


「ああ、なんかわかるよ、それ。

舐められないように、俺も気を使うことあるもん。

貴族とか面倒くさいやつが多いし。」

「人類も大変ですねえ。」

何処で同調してんだよ、お前ら。


思い出して軽くめまいを覚えたが、それはおくびにも出さない。

俺も慣れたもんだ。


そんな事を思いながら本陣を目指す俺たちに駆け寄ったのは、鎧姿をした王国の若い騎士だった。

スプリンガー老伯の判断で正騎士団から二個中隊を連絡係として残していた。

百五十人程度では、四十万強まで減った連合の中では戦力として意味をなしていない。

貧乏くじとしか言いようがない彼らには、話に聞いてから少しだけ同情していた。


「勇者御一行、連絡を受けお待ちしておりました。

まずは本陣に御案内させて頂きます。」

カッと踵を合わせ騎士の礼を取る姿には緊張が見える。

年下の騎士に会うことも増えたが、ここまで緊張されるのも久しぶりだ。

まあ視線の先にはリフィルシャールがいるから仕方ない。

他国の指揮官を摘み上げているしな。


彼に先導を任せ本陣に着くと、首脳陣が天幕の外で並んで待っていた。

苦々しげに俺たちを見送った何時ぞやと違い、どこか歓迎ムードが漂っている。

どうやら何か、勘違いをしているようだ。


「お待ちしておりましたぞ、勇者アーネストリー殿。

帰陣頂けた事、一同を代表し御礼申し上げる。」

進み出てそう告げたのはコルミア同様、ザーベックと隣接している小国の一つ。

ドーヴィル王国の騎士団長殿だった。


なるほど。

詳細を知らせていなかったから、俺たちが逆侵攻に参加するために戻ってきたと思ってんのか。

心底くだらない。


「礼には及びません。

我々は帰陣したのではなく、停戦のための使者として赴いたのですから。」

代表して進み出た勇者様が満面の笑顔で答える。

瞳はけして笑ってなかったが。

こういう芸当もできるようになってたんだよな、こいつ。


それに対し待っていた首脳陣の半分は絶句で応え、残りはどこか安堵しているように見えた。


そもそも連合は一枚岩じゃない。

遠国は仕方無しに参加している所も少なくない。

アゼストリア攻防戦までもつれたら参加する、そう考えていた国もあった。

なんならアゼストリアが落ちたら考えようなんて国もだ。


逆侵攻を良しとしている国の方が少数派、のはずだが国同士の力関係がこれを複雑にしていた。

アゼストリア以東の国は、ザーベックが大国として残っていたほうが都合がいい。

アゼストリアが後背に気を使わなくてはならないからだ。

アゼストリアが外征する可能性を考慮から外すのは、それらの国々にとってあり得ないだろう。

今すぐ、近々の話じゃなくてもだ。


それにザーベック自体と交易があった国も少なくない。

負債額が大きいところはザーベックに滅んで欲しく、物資を頼っていた国は滅ばれては困る。


隣接国の内、小国はこの期に領土拡大を狙い、そこそこの規模の国はその小国の疲弊を望む。

ザーベック自体がアゼストリアを凌ぐ大国だったからこその、この成り行きだ。

そもそも戦費の負担が馬鹿にならず、これ以上は無理だって国もあるだろうしな。


魔王、怖い。

それだけが一致点。

国同士の関係を全く無視できる国などない。


国際情勢という生ものは、アイツの世界同様に複雑怪奇だった。


魔王が現れたことで、より複雑化したことは否めない。

だがその魔王はもういない。

今後も出現することはない。

俺達が全て断ち切った。

よその大陸に同様の脅威が現れる可能性は皆無ではなかった。

でもそこまでは俺たちも責任を持てん。


「し、しかし人類を脅かしたザーベックに逆撃を加える好機では御座らんか!

それは勇者様方が何より理解しておられるでしょう、違いますか!」

「違いますね。」

ゆるゆると首を振り答えた俺たちの勇者様を、理解できない何かを見るような目でその男は凝視していた。


「魔族は人類の一員。

それは首脳陣の皆様も理解されておられるでしょう。

ザーベックなどと大きな括りで見るから目が曇るのですよ。

ドーヴィル国騎士団長殿。

魔王の被害者に過ぎないのですよ、魔族も。

あなたたちの言い方を使うならザーベックがね。」

強制力に縛られた魔族は確かに被害者といえた。

自害した少女を例に出すまでもなく、おしなべて意識外で支配されていたのだから。


感情面を考えればドーヴィルやコルミアを含めた一般論は理解できる。

市井の魔族に対する偏見も根強い。

だがそれを無駄な戦争継続の理由にさせるつもりは毛頭なかった。


それにだ。


「見たところ首脳陣の皆様も、随分と人数を減らされているご様子。

我々が再び参陣したところで勝利を望むのは厳しそうですが?」

俺は友の隣に進み出てそう告げた。

何も本陣で刃傷沙汰があったからだけじゃない。

それも原因の一つだろうが、リフィルシャールの背に乗り上空から見てわかっていた。

既に幾つもの国が、勢力が撤退を始めているのだ。

四十万強。

それは最早、形式上の数字に過ぎず、実数は半分にも満たなかった。


同様に魔族軍も、後方では撤退を始めていた。

おそらくだが元々兵士ではなかった民衆から。

魔族軍の中では戦闘が続いてもいるようだった。

魔王の強制力で組み込まれた、魔物を退治しているのだろう。


とっくに対魔王軍との戦争は終わってるのだ。


「続けられるのなら各国が独自になり共闘するなり、好きになさるがいい。

しかし魔王軍との戦いは終わっております。

このまま連合軍を形成している意味など、もうとうにない。

故に止まぬ戦火を消しに来たのですよ、我々は。」

各国の後ろ盾があればこそ鼻息を荒くしていられた小国の指揮官たちは、俺の言葉に色を失った。

小国だけで連合しても五万に満たない戦力では、継戦なんて無理な話だった。


その中で最大戦力だったコルミアも、今や半数しか残ってない。

ほぼ都市国家に過ぎないコルミアの国力で考えれば、一万もの戦力は過剰だった。

まあ適正になったともいえたが、皮肉が過ぎるか。


「しかし!」

そこに一歩踏み出した、胆力は認めよう。

とっくに詰んでいるのにだ。

胸元の紋章はオニアザミを模したコルミアのもの。

残っていたコルミアの指揮官も、どうやら継戦派のようだ。


反応せずに後ろに合図を出した友に応え、リフィルシャールがずいと踏み出し摘んでいた指揮官を差し出した。

その喉からはグルルと獰猛そうな唸りが響いている。

演出上手いな、マジで。


「アゼストリア王国軍の後背を脅かしていた貴国の指揮官殿です。

お返ししますよ。

貴国の兵たちは、このリフィルシャールと八匹の竜に追い散らされました。

他の個体は討伐済みですのでご安心を。

アゼストリア王国軍には、離散した兵を見つけたら原隊復帰を促すようにと伝えてあります。

道々、立て看板を設置して同様の内容を周知するようにとも。」

コルミアの指揮官二人は、互いに赤くなったり青くなったり忙しそうだ。

街道上に点々と、自軍と国の恥を晒されてるって事になるからな。


それを見ていた親友がゆっくりと振り返る。

そして一歩二歩とリフィルシャールの前に近づいた。

心得たように掌の上に乗せると、眼前に掲げるリフィルシャール。

ゆっくりと。

ことの成り行きを遠巻きに見ていた、兵たちに向き直った。


「聞け!

勇者アーネストリー・トルレイシアが告げよう!

争いは今、ここで終わりだ!

停戦は我らが責任を持って取り付ける!

今後を、未来を、みんなはこの先を考えるんだ!」


最初は静寂だった。


そして………。

僅かの間をおいて、それは辺りを揺るがすほどの歓呼の声に変わった。

高く、長く。

しばしの間、喜びの声は響き渡っていた。

はい

今回も無事に投稿できました

いかがでしたか?


アーネスに言わせたかったセリフは全て詰め込めました


ダメ親父、スッキリです


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます


モチベにつながるので、ブックマークをお願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネして頂けたら、ダメ親父は一人「喜びの舞」をするでしょう


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら………

その時はそっ閉じで


それではまた次回で!


次回 ばかしあい(5/17 19:00予定)

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