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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第二章 離別

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ずれ

二人の老人が眉をひそめていた。

どうやら爺様も、この老将もこいつの一瞬の表情を見ていたようだ。

まだ俺がキレた時のわだかまりが残ってた。

モヤモヤはある。

だがそう思うことにして飲み込んだ。


「ごめん、ビックリしちゃって。」

珍しく苦笑いを浮かべてそう言ったこいつに、おかしなところは見えなかった。

少なくとも今は。


「こっちこそ悪かった。

なんか子供のお前を思い出して、つい手を触ったりして。」

俺の表情も苦笑いになってただろう。


なんかヘラっとした笑顔を返してきたから、取り敢えず拳を出しておいた。

フンッと鼻を鳴らして、少しドヤ顔で拳を返してきた。

なんだよ。

情緒が迷子にでもなってるのか、こいつ。

いや元々、顔に出やすいやつではあるか。


「もう一つ、よろしいですかな。」

老将が穏やかな笑顔で聞いてきた。

微笑ましいと顔に書いてあるかのようだった。

一方で爺様は表情こそ笑顔だったが、目は笑ってなかった。

爺様的には、さっきのこいつの反応が気になるってことか。


「クルガン殿の最期の言葉ですが、もう一つ意味があるように思ってましてな。」

先を促すとそのように告げた老将は、一口水で口を潤した。


「むしろこちらの意味合いの方が大きかったのではと。

というのはクルガン殿は、王命の発案者の一人に勇者の参謀殿を見ておられたようで。

他にいるとすれば、そうですな。

モレッド前侯爵かバーレスト侯、その辺りでしょうかの。

そうはおらぬでしょうなぁ。」

そこで言葉を切った老将は、残りの水を美味そうに飲み干した。


「無駄死が増えることを勇者殿はことの外厭う。

そう老いた耳にも届いておりますぞ。

拗れれば不和の種に繋がるのでは。

クルガン殿がその懸念を持たないのは、実直な御仁らしからぬかと。」

返す言葉もない。

実際に揉めたしな、俺達は。


「心配していたのは何もクルガン殿だけでは御座らん。

知己の無い私もですし、ほれ。

そこの自縁と他縁の徒と呼ばれたお方も、どうやら。」

そう言って爺様にチラリと視線を送った老将は、少しだけ悪戯をしているような顔つきだった。


「なに。

少しくらい揉めたほうがよい。

変に溜め込むぐらいじゃったらのう。

アーネス、ジェス。

なあ、そうじゃろう?」

話を振られた爺様も、悪戯っぽく笑ってそう言った。

だから返す言葉もないっての。


バツが悪そうに横で頭を掻くのをなんとなく眺めていた。


だが。


俺たちは同時に立ち上がった。

バネで弾かれるように。


そこへ転がるように伝令が駆け込んで来た。

鋭く避け、走り出す親友の背を見て、

「バル!」

と声をかけた。


バルは俺の声より早く、荒く椅子を倒し立ち上がってた。

巨体に似合わぬ素早さでその背を追う。

さっきまでニヤついていた顔を、瞬時に引き締めて。


「スプリンガー伯、奴らが戻って来ました!

しかし様子がおかしいです!」

まだ若い伝令に、老将の怒声が飛ぶ。


「報告は正確にせい!

どうおかしいのだ!」

「武器も構えず、一目散に突っ込んで来ます!」


俺と一緒に、爺様とレミドも駆け出した。


そんな状況、あるならこれだ。

四千余りの兵が、全く手に負えない「何か」に追われてるんだろう。

何かは、うん、考えたくもないな。

どうせろくでもない。


背後から指示の声が叫びのように響く。

「構うな!素通りさせろ!」

「奴らは放置だ!準備急げ!」

慌ててはいるが、混乱はないな。

ならば俺も集中だ。


街道のど真ん中。

剣を抜き地面に突き立てるようにして立っているのは、我が友にして勇者様。

その少し後ろに、槍を背に腕組みして仁王立ちのバル。


その遥か向こう。

街道上に土煙が立っている。

ギリギリ先頭が視認できるかどうか。


二人の背後に迫った時、バルが呆れたように呟いた。

「どうなってんだ、アレ。」


直後。

まだ遠い彼らの背後で火の手が上がった。

一つ、二つ、三つ。

………増えた。

爆発的に。


「え〜と………、ブレス?」

小首を傾げて呟くのはまだいい。

ただ緊張切れてないか、こいつ。


「なんじゃ。

支配から解けて徘徊した、竜種とでも鉢合わせたか。

しかもどうやら群れの様じゃのう。」

爺様、何を呑気な。


「群れるとなると、下級種かしら。

まあ数がいれば厄介ではあるけど、情けないわね。」

お前もかよ、レミド。

なに言ってんだ。


「ドラゴンか!

いいな、やる気出てきたわ!」

いや、嬉しそうにする場面じゃないんだって、バル!


「げっ。」

思わず声が出た。

近づいてくる集団の先頭。

ほぼ泣き顔。

決死の形相で駆けてくるのは、さっきの指揮官だった。


街道中央に陣取る俺たちには目もくれず、脇を抜けて……行けなかった。

ひょいと突き出したバルの槍に足を取られ、派手に転んだ。

宙を舞い、一回転して転がると綺麗に立ち上がり、すぐに走り出そうとする。

その鎧の襟首を、無造作に掴んだのもバルだった。


「よう、さっきブリだな。

何から逃げてやがんだ、おっさん。」

獰猛な笑顔でそう聞くバルに、情けない悲鳴を上げて震えだした。


「ドラゴンだ、一匹二匹じゃない!

群れとかち合ってしまったんだ!

頼む!

この手を離してくれい!」

そうこうしてるうちにも、次々とコルミア兵は通り過ぎていく。

構ってられないようだ。


まあ、そうだろう。

土煙の向こう。

エルダードラゴンの番。

それに続く七匹のレッサードラゴンの黒光りする鱗が、俺の目にも見えたからな。


魔術師が見当たらないこのおっさんの混成部隊じゃ、逃げ出したとしても責められない。

魔法なしじゃ、あの規模のブレスを食らえば消し炭だからな。


「指揮官殿!

こいつ、やるわ。」

呑気にそう言ったバルに応え、準備を終えて構えていた老将は近くの騎士に短く命じた。


そうしてる間も追いつかれた最後方のコルミア兵は、蹴散らされていった。

助けてやりたいが、逃げてくる兵たちが邪魔で近付けない。

俺の横では焦れてるのか、突き立てた剣の柄頭を強く握り、奥歯を噛み締める友の顔があった。


思わず漏れたため息をそのままに、一歩下がってレミドに耳打ちをする。

「周りを巻き込むなよ。

絶対いい顔しないから。」

「あら。

あたしだけにやらせるつもり?

あなたもやりなさいな。」

「わかってる。」

それだけ言って魔法の構築に入った。


まず止める。

だがここで逃がすわけには行かない。

わずか一日の距離には街がある。


迷わず俺は、先頭で暴れていたエルダードラゴンの眼前に氷の壁を打ち立てた。

ブレスで溶かされるのは承知の上だ。

コルミアの兵が逃げるだけの時間稼ぎに過ぎない。


レミドがきっちりタイミングを合わせてきた。

地面から鋭利な岩の槍が何本も突き出す。

その幾つかが竜の腹を抉った。

それを見て駆け出したバルと友の背に、俺と爺様が続く。


「弩、魔術師隊、放て!」

一瞬陰るほどの大量の矢が、俺たちを置き去りにして飛ぶ。

それが着弾すると同時。

上空から岩の槍が降り注いだ。

背中を狙ったのは比較的薄い翼の皮膜を狙ってのことだろう。


レッサードラゴンでも飛べる。

地面にいたのはたまたま食事をしていたか、狩りをしていたかだ。

コルミアの皆さんは、運がなかったとしか言いようがない。

まあ気持ち的には「ざまあ」だが。


痛みによる悲鳴か。

怒りによる咆哮か。

竜たちが強烈な鳴き声を上げ、一斉にブレスを吐いた。

周囲の温度をみる間に上げる勢いで吐き出された炎は、氷の壁をまたたく間に溶かしきった。


「ここ!」

ブレスを吐き終えた後の一瞬の弛緩を、バルが見逃すわけもない。

直後。

人間離れした、跳躍を見せた。

喉元の、鱗が薄い一点に迫る。

唸りを上げる槍が、捻り込まれて刺し貫いた。


長年の親友は動きに微塵の迷いもない。

前に出たレッサードラゴンの前足に取り付き、腱を斬り裂く。

たまらずバランスを崩し前のめりになったところを、狙いすましてバル同様に喉を突く。


その横を抜け、俺は竜たちの後背に回った。


竜ってヤツは理不尽だ。

デカく、重く、速い。

目もいい。

まんまバルの評価だな。


そんなどうでもいいことを考える俺を捉えようと、竜たちが猛る。

尾を振り、爪で抉り取ろうと迫りくる。

地面に膝を擦りそうなほど身を低くして、尾を躱す。


同時に。

暴風を伴って頭上を行き過ぎる尾の腹にそっと手で触れた。

「ぐっ!」

革手袋をしてたのにそれごと手のひらの皮を持っていかれた。

だが相打ちでは済まさなかった。

触れる前から魔力の波長を読んでいた。

その魔力の波長を、変えてやった。

おかしな鳴き声を上げもんどり打って倒れるレッサードラゴンを横目に、俺は治癒魔法で掌を癒す。

この程度なら、数秒も要らない。


てか爺様、素手でドラゴン殴って拳に傷一つないのよ。

おかしいだろ、なんだそれ。

しかも一撃でぐらつかせてる。

過回復使ってるな、あれ。


その後。

レミドと王国軍の魔法の援護もあって、多少の負傷者を出しながらも、二時間とかからずに竜九匹を余さず屠った。

前回に続き、今回も戦闘パートアリ!

いかがだったでしょうか?


ダメ親父的には花丸評価です

えっ?

もっと頑張れ?

はい、精進します

m(_ _)m


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます


モチベにつながるので、ブックマークをお願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネして頂けたら、ダメ親父は一人「喜びの舞」をするでしょう


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら………

その時はそっ閉じで


それではまた次回で!


次回 三度の決戦場(5/9 19:00予定)

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