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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第二章 離別

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合流

トゥーレの言葉から、みんなが西門に向かったことがわかってる。

そうなると自然と大体のルートもわかった。

帰還ルートをそのまま逆走するつもりなんだろう。


俺たちは帰還時、最短ルートを取ったが「最速ルート」は選ばなかった。

万が一、戦場での急変があった時、リーザ川を船で下る方法だと対応が難しいからという理由だった。

今回もリーザ川を船で遡上するより、渡河だけして陸路のほうが速いという判断のようだ。


俺の出立はざっくり一時間遅れ。

単騎で追えば馬車移動のみんなには追いつけるはずだ。

替え馬すら俺には必要ない。

手綱を通して回復させながら走らせ続ければいい。


とか思ってたが西門に着いて奴らの移動方法も騎乗での移動とわかり頭を抱える羽目になった。

バルとレミドの馬を回復させる手間を考えても、ほぼ等速での追尾になる。

面倒臭いな、マジで。

みんなも急行したいんだからあり得る話ではあったけど。


こうなると別の方法で先回りするしかない。

手はいくつかある。

だが行き違いやこちらの遅れなんかを考慮すると、取れる手段は限られる。

うだうだ言ってても仕方ないので、取り敢えず最短の渡河地点までは追尾することにして、先を急いだ。


てかもう馬を捨てて飛んで行こうか、とか考えたがやめにした。

魔力消費が馬鹿にならないし、道中のトラブルに対処できないとかになると本末転倒だからだ。

単体の戦闘力で考えれば俺が負けるような魔物など数えるほどしかいない。

数で押されても魔術でゴリ押せばなんとかなる。

エンシェントドラゴンが二体以上とかなら流石に無理だが、道中でばったりなんてのは巣から出るのが稀な彼らではありえないしな。

とはいえそのごり押しするための魔力が心許ないってのは愚かすぎる。

空の魔物もなんだかんだ多いし。


自分と馬の空腹具合と眠気を測りながら、極力休息を取らずに走り続けること十日。

西日を浴びるアゼストリア国境の大門にたどり着いた。


「勇者御一行は、昼の鐘とほぼ同時に出立されましたぞ。」

揉み手をしながら現れた、警備責任者に言われ思わず目を覆った。

引き離されてるじゃねえか。


「そういえば………。」

「まだ何か。」

先を急ごうとした俺の後ろで、立番の騎士が気になるつぶやきをした。

「バル様だけ、何故か鎧下姿だったんですよね。

なので思わずギョッとしたんですよ。」

そういうことかよ。

デカくて重いうえに重装備のバルの荷物を分載しやがったな。

俺が乗ってきた風早の仔「浮雲」も良い軍馬ではあるが、あいつら王室厩舎の最上等クラスの軍馬を回されてるだろうしな。

ロスはあっても爺様とやつの回復技術を少し甘く見ていたようだ。

それらが重なって、十日でさらに四時間の差が付いたってか、クソが。

「はっ、ははは。」

もう、乾いた笑いしか出ねえよ。


仕方ない。

こうなると普通に追尾しても絶対に無理だ。


「有益な情報をありがとうございます。

これ少ないですが、皆さんの酒代にしてください。」

そう言って周りにも見えるように大金貨を二枚、立番に握らせた。

大金だからな。

ポッケナイナイはさせん。

正直どうでもいい歓声に見送られ、俺はまたも馬上の人になった。


「二百万は流石に奮発しすぎたかなぁ。」

思わずアイツの世界換算の金額を口にして自嘲した。

まあいい。

とにかく急ごう。


最寄りの渡河地点までは一日。

渡し舟と漁業で賑わう村だ。

浮雲を潰さないギリギリの速さでもって、一人先を急いだ。


翌日。

まだ朝と言える時間に漁村に着いた俺は厩に浮雲を預けるなり、食料調達と足が速い漁船の確保に走った。

みんなの情報はすぐに入った。

昨夜遅く、無理押しして夜間に渡河したらしい。

無茶しやがって、クソ。

更に引き離されてないか、これ。


「あれ、あんた確か勇者御一行のリーダーじゃなかったか?

なんだよはぐれたんか?」

リーダーじゃねえよ。

とは言えず内心頭をかきながら、後から声をかけてきた相手に振り返った。


「所用で出遅れまして。

必死で追いかけてる最中なんですよ。」

そう答えたが見れば漁師っぽい格好をした、頭にタオルを巻いた細身の男が怪訝な顔をして立っていた。

てか年齢不詳だな。

酒焼けした感じの声や、無精髭の所為もあってマジで読めん。

バルより年下って事は無さそうだけど。


「そうかい。

そりゃあ大変だな。

勇者様たちは夕べのうちに川を渡ったから、今から追いつこうってのは厳しそうだな。」

わかってるよ。


「足の速い漁船を探してましてね。

心当たりありませんか?」

市場帰りなのか空っぽのビクを幾つも肩にぶら下げた男に、これ幸いと聞いてみた。


「でかさは?」

「乗ってきた馬を乗せられれば、それで。」

「川を渡れりゃいいのか?」

「いえ。

私が風魔法を用いて遡上しようかと。」

水魔法も合わせ技で使って、後方の水流を弄ればかなりの速度が出せる。

他にもアイツの知識に使えそうなのがあるし。

遡上するくらいなら陸上移動の方が普通は速い。

だが魔術を使って単騎移動なら川の方が船次第になるが速い。


「ふうむ、船頭も必要だなそりゃ。

なんぼ出せる?」

一日では不安か。

二日は川を登りたいところだ。

食事は船上で取るとして相手の食事もこっち持ちか?

問題は下船のポイントだな。


「テリミノ方面に抜けるのに都合のいい場所まで行きたいんですよね。」

「ああん?

だとしたら三日は川登りになるじゃねえか。

ああ、その先のミレリア王国の方がテリミノに近えか。

だとしたら風向きが良くても最低で四日だな。

魔法で速くなるってんなら一日二日は変わるだろうがよう。」

う〜ん。

街道は川から遠ざかるルートになってるからそうなるか、ふむ。


当たり前だが下りのほうが早い。

となると行き来で七日分の上がりを保証して、食事はこっち持ちって感じか?

金額が読めんな。

そのまま伝えるか。

早く着いてもその金額を約束するって感じで。


「こんな条件でどうでしょう?」

「悪くねえが、手間賃の色を付けちゃくんねえか。」

「では現地までの日数一日に大銀貨一枚でどうでしょう?」

「半金は前払い出来るか?」

がめついな。


「いいですよ。」

「よし、決まりだな。

付いてきな。」

てかこの人が船を出すんか?

熟練感はそこはかとなく感じるけども。


言われるがまま船着き場に付いていくと、見慣れない船が停っていた。

知識にはある。

アイツの知識にだ。

左舷に張り出した浮舟の細い船体。

本体もこの辺の平船と違い、細造りになってる。

「アウトリガーじゃねえか。」

漁船としてならアリなんか?

横波や船上での引きの際に転覆しづらいらしいし。


驚いていると男がニヤつきながら出航準備を始めた。

「とりあえず、馬を連れてこいよ。

船尾に藁を敷いておいてやるからよ。」

屋根から短い帆柱が立った、キャビンっていうか、小屋っていうかが船体中央より前にあるから、取れた魚を積むスペースに浮雲を乗せるつもりなんだろう。


これならかなり速度を上げても転覆しないな。

よしよし。

俺は適当に返事を返して、半金を渡すと浮雲を連れに厩に走った。


「おっ、おおい!

なんだよ、この速度!?

危ねえって、おい!

跳ねてる!波で跳ねてるっての!」

「櫂の舵取りミスらないでくださいよ。

まだ上げますから。」

振り返らずにそう返した俺の口元はニヤついていただろう。


俺は四つの魔法を同時起動していた。

船体を空気でラッピングするように覆い、水の抵抗を殺すのが一つ。

後方の水流を整え速度を上げるのが一つ。

帆に風を送るのが一つ。

前方から風を遮るエアカーテン的なのが一つ。

アイツの知識様々だ。

しかも一つ一つの魔法はそこまでコストの掛かるものではない。

川の流れを逆流させるのとは理由が違う。

物理法則を捻じ曲げているわけじゃないからだ。


まあ、何事かと周りの小舟の船員が振り返るほどには速度が出てるけどな。

波で船体が浮き上るほどの速さでかっ飛んでいるし。

モーターボートかって位の速さは出てる。

あいつらと一緒の時は、ここまでの知識チートは使えなかったからな。

ちょっと気持ちよくなってる。


浮雲だけは呑気に敷き藁に寝転んであくびをしている。

肝が座ってんな、マジで。


「おいっ!

今通り過ぎたのレリック領の漁村だぞ!

なんで一日かかる距離を昼前に通り過ぎてんだよ!

飛ばしすぎだっての、聞いてんのか!

おい、聞けよ!」

「舌噛みますよ。

もうちょい上げるんで、静かにしててください。」


喚く漁師を無視して、更に加速する。

船首に立つ俺は、向かい風もなく快適だ。

浮き上がらないように後方斜め上から風を送る。

水の反力が加わり更に速度が伸びる。

船体を空気でラッピングしてるから、水面を滑ってるのに近い。

それを斜め上から押さえてるからな。

そりゃあ速度も乗るってもんだ。


結局、漁師の男が喚く気力も失せ、静かになって数時間後。

西日が川面の向こうに沈み切る前に目的のミレリア王国の桟橋に接岸した。

やり過ぎたかな?


「はいこれ、残りの半金。」

「要らねえよ、馬鹿にすんな。

勇者一行は化物揃いって聞いちゃいたが、無茶しやがって。

帰りは普通に三日かけて帰らあ。

それでも半金とトントン以上だ。」

げっそりした表情だった男はニヤリと笑うと、拳を突き出してきた。

こちらもニヤリと笑い返して拳を合わせる。


「そういや名乗ってもなかったな。

パイロだ。

次、会うことがあったら今度は本職の方の魚を食っていってくれよ。

なんなら勇者様と一緒にな。」

それには答えずに笑顔だけ返して別れた。

なんて答えていいかわからなかったしな。


結局、仲間たちと合流出来たのはテリミノに入ってから、三日も待たされることになった。

最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます


モチベにつながるので、ブックマークをお願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネして頂けたら、ダメ親父は一人「喜びの舞」をするでしょう


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら………

その時はそっ閉じで


それではまた次回で!


次回 停戦に向かって(4/19 19:00予定)

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