第一話 旅立ち
基本的にAIで作成してます。
春の風が、小さな村を優しく吹き抜けていた。
朝露に濡れた草原。
鳥たちのさえずり。
山々を渡る穏やかな風。
村外れの広場では、一人の少女が木剣を構えていた。
「はぁっ!」
鋭く踏み込み、真っすぐに振り下ろす。
続けて横薙ぎ。
盾を構え、一歩下がる。
何度も繰り返した動き。
幼い頃から続けてきた日課だった。
「そこまで。」
後ろから落ち着いた声が聞こえる。
ヴィルは息を整えながら振り返った。
「お父さん。」
父は腕を組み、静かに頷く。
「剣筋は悪くない。」
「本当?」
「ああ。基礎は十分身についている。」
その言葉に、ヴィルは少しだけ嬉しそうに笑った。
五年間。
毎日欠かさず剣を振り続けた。
雨の日も。
雪の日も。
どんな日でも。
父は木剣を受け取り、代わりに一本の剣を差し出した。
「持ってみろ。」
ヴィルは恐る恐る受け取る。
ずしり、とした重み。
鉄の感触。
鞘には傷がいくつも刻まれていた。
「これは……?」
「昔、俺が使っていた剣だ。」
父は少しだけ懐かしそうに笑う。
「派手じゃないが丈夫だ。まだ十分使える。」
ヴィルは大切そうに胸へ抱いた。
「ありがとう。」
続いて小さな丸盾も受け取る。
「盾を持つことを忘れるな。」
「攻めることだけが強さじゃない。」
「うん。」
父の言葉を、ヴィルは真剣な表情で聞いていた。
少しの沈黙。
父はゆっくり口を開く。
「十五歳になった。」
「今日から、お前は自分の道を歩け。」
ヴィルは静かに頷いた。
「はい。」
その返事には迷いがなかった。
家へ戻ると、母が朝食を並べていた。
焼きたてのパン。
野菜たっぷりのスープ。
焼いた肉。
卵料理。
食卓いっぱいに料理が並ぶ。
「いっぱい食べなさい。」
「いただきます!」
ヴィルは笑顔でパンを頬張る。
「おいしい!」
勢いよく食べる姿を見て、父と母は顔を見合わせる。
「相変わらずよく食べるな。」
「旅に出ても食べ過ぎないようにね。」
「大丈夫!」
そう言いながら、もう二枚目のパンへ手を伸ばしていた。
「……説得力がないな。」
父が苦笑する。
食卓には笑い声が広がった。
ヴィルはこの時間が好きだった。
家族で囲む食卓。
何気ない会話。
穏やかな時間。
その温かさを知っているからこそ、守りたいと思えた。
食事を終えると、荷物をまとめる。
片手剣。
小盾。
着替え。
保存食。
水筒。
荷物は決して多くない。
最後に、フード付きのマントを羽織る。
地味な茶色。
村では少し浮いて見えるほど目立たない色だった。
フードを深く被ると、蒼い髪はほとんど隠れる。
母が少し心配そうに尋ねる。
「そんなに深く被るの?」
ヴィルは少し困ったように笑った。
「……落ち着くから。」
本当は違う。
人目を集めるのが苦手だった。
知らない人の視線。
何気ない注目。
それだけで胸がざわつく。
五年前の出来事以来、自然と身についた癖だった。
父も理由は分かっている。
だから何も言わなかった。
玄関の前。
ヴィルは両親へ向き直る。
「行ってきます。」
母は涙をこらえながら笑う。
「元気でね。」
父は短く言った。
「困ったら一人で抱え込むな。」
「ちゃんと誰かを頼れ。」
「はい。」
ヴィルは大きく頷いた。
村の出口まで歩く。
何度も見た景色。
小さな畑。
川。
森。
全部が今日から少しずつ遠くなる。
村の門で足を止める。
振り返ると、両親がまだ見送っていた。
ヴィルは大きく手を振る。
二人も笑顔で手を振り返した。
そして前を向く。
行き先は、最寄りの街。
冒険者ギルド。
そこで冒険者登録をする予定だ。
風が吹く。
フードの奥で蒼い髪が揺れる。
ヴィルは空を見上げ、小さく息を吐いた。
「……行こう。」
旅立ちへの期待。
少しの不安。
そして胸の奥には、五年間消えない想いがある。
暗い部屋。
助けを求める少女。
泣いてる声。
その記憶だけは、今も鮮明だった。
「今度は……。」
ヴィルは誰にも聞こえないほど小さく呟く。
「ちゃんと守れるようになる。」
その言葉を風がさらっていく。
少女は一歩を踏み出した。
まだ小さなその背中は、やがて多くの人を救う冒険者へと成長していく。
それは、誰も知らない物語の始まりだった。
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