↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼と紅の冒険譚  作者: レイヴン
旅立ち
1/31

プロローグ――あの日の約束――

基本的にAIで文章作成してます。

冷たい。


石の床から伝わる冷たさに、小さな少女は膝を抱えた。


どれくらいの時間が過ぎたのだろう。


窓は高い位置に一つだけ。


差し込む光だけが昼と夜を教えてくれる。


少女は何度も扉を見つめた。


けれど、重い鉄の扉が開くことはない。


「……お父さん。」


返事はない。


「……お母さん。」


静まり返った部屋に、自分の声だけが響く。


胸が苦しい。


怖い。


涙を拭いても、また溢れてくる。


どうしてこんなところにいるのか。


どうして家へ帰れないのか。


十歳の少女には分からなかった。


ガシャン。


廊下の奥から音が聞こえた。


少女は体を震わせる。


足音。


大人の男たちの笑い声。


鍵の音。


思わず部屋の隅へ身を寄せた。


やがて足音は遠ざかり、再び静寂が訪れる。


その時だった。


「……ねぇ。」


小さな声が聞こえた。


少女は顔を上げる。


隣の部屋。


鉄格子越しに、誰かがこちらを見ていた。


同じくらいの年頃の女の子。


深くうずくまりながらも、不安そうにこちらを見つめている。


少女は恐る恐る近づいた。


「……あなたも?」


向こうの少女は、小さく頷く。


言葉は続かなかった。


何を話せばいいのか分からない。


怖いのは、自分だけじゃなかった。


しばらく沈黙が続く。


やがて向こうの少女が、小さく口を開いた。


「いたい?」


腕には痣があった。


少女は慌てて袖で隠す。


「……へいき。」


本当は痛かった。


でも、そう言うしかなかった。


「そっか。」


向こうの少女は少しだけ笑った。


ぎこちない笑顔。


それでも、その笑顔を見た瞬間、不思議と胸の苦しさが少しだけ和らいだ。


それから二人は、少しずつ言葉を交わすようになった。


「おそと、晴れてるかな。」


「晴れてるといいね。」


「おなか、すいたね。」


「うん。」


他愛もない話ばかり。


それでも、誰かが隣にいるだけで怖さは少しだけ小さくなった。


ある日。


向こうの少女がぽつりと呟いた。


「おうち……帰りたい。」


その一言で、胸の奥が締め付けられる。


「帰れるよ。」


少女は思わず言った。


「きっと。」


「ほんと?」


「うん。」


自分にも言い聞かせるように答えた。


きっと助けが来る。


きっと家へ帰れる。


そう信じたかった。


「帰ったらね。」


向こうの少女が小さく笑う。


「いっぱい、ごはん食べたい。」


「私も。」


「パンも。」


「お肉も!」


思わず二人で笑った。


ほんの数秒。


暗い牢屋に、小さな笑い声が響く。


その時間だけは、怖さを忘れられた。


しかし――。


ある日、突然だった。


ドンッ!!


建物全体が大きく揺れる。


「な、何?」


続けて聞こえてくる怒号。


「突入!」


「子どもたちを探せ!」


剣がぶつかる音。


悲鳴。


爆発音。


建物の外が騒がしくなる。


「助け……?」


少女たちは顔を見合わせた。


希望が胸に灯る。


ガシャン!!


扉が蹴破られた。


鎧を着た男が飛び込んでくる。


「無事か!」


少女は思わず頷いた。


「助けに来た!」


抱きかかえられ、そのまま部屋を出ようとした時だった。


「まって!」


少女は必死に叫ぶ。


「隣の子も!」


男は振り返る。


鉄格子の向こう。


もう一人の少女が必死にこちらへ手を伸ばしていた。


「お願い!」


男は鉄格子へ駆け寄る。


しかし。


「くそっ……!」


鍵が違う。


壊そうにも時間がない。


建物は激しく揺れ続けていた。


その時。


奥の通路から数人の男が現れる。


「このガキだけでも連れていく!」


「離して!」


少女の悲鳴が響く。


腕を掴まれ、無理やり引きずられていく。


「いやっ!」


少女は鉄格子にしがみつく。


必死に手を伸ばす。


「待って!」


助けられた少女も、男の腕から飛び降りようとする。


「お願い!」


「あの子も助けて!」


あと少し。


あと少しで届く距離。


それなのに。


二人の指先は触れることなく離れていく。


「いやあぁぁぁ!」


泣き叫ぶ声だけが響いた。


少女は何度も手を伸ばく。


何度も。


何度も。


それでも届かなかった。


「行くぞ!」


救助に来た男が少女を抱きかかえる。


「離して!」


「まだ!」


「あの子もお願い!」


「お願いだから!」


少女は叫び続けた。


涙で前が見えなくなる。


それでも、連れて行かれる少女だけを見つめていた。


やがて、その姿は暗い通路の奥へ消えていく。


静寂が訪いた。


少女は声にならない声を漏らした。


助かった。


それなのに。


心は少しも軽くならなかった。


あの日。


自分だけが助かった。


あの子は、助けられなかった。


その事実だけが、小さな胸に深く刻まれた。


――五年後。


一人の少女が村の門をくぐる。


蒼い髪をフードで隠し、片手剣と小さな盾を携えた十五歳の少女。


彼女の旅の理由は、名声でも、お金でもない。


五年前に救えなかった、あの少女を探すため。


そして、二度と同じ悲劇を繰り返さないため。


少女は静かに前を向く。


春風がフードを優しく揺らした。


その風はまだ小さい。


けれどいつか、大切な誰かを守る風になる。


これは、傷を抱えた少女たちが出会い直し、新しい居場所を見つける物語。


――『蒼と紅の冒険譚』、ここに始まる。

面白いと思っていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。