プロローグ――あの日の約束――
基本的にAIで文章作成してます。
冷たい。
石の床から伝わる冷たさに、小さな少女は膝を抱えた。
どれくらいの時間が過ぎたのだろう。
窓は高い位置に一つだけ。
差し込む光だけが昼と夜を教えてくれる。
少女は何度も扉を見つめた。
けれど、重い鉄の扉が開くことはない。
「……お父さん。」
返事はない。
「……お母さん。」
静まり返った部屋に、自分の声だけが響く。
胸が苦しい。
怖い。
涙を拭いても、また溢れてくる。
どうしてこんなところにいるのか。
どうして家へ帰れないのか。
十歳の少女には分からなかった。
ガシャン。
廊下の奥から音が聞こえた。
少女は体を震わせる。
足音。
大人の男たちの笑い声。
鍵の音。
思わず部屋の隅へ身を寄せた。
やがて足音は遠ざかり、再び静寂が訪れる。
その時だった。
「……ねぇ。」
小さな声が聞こえた。
少女は顔を上げる。
隣の部屋。
鉄格子越しに、誰かがこちらを見ていた。
同じくらいの年頃の女の子。
深くうずくまりながらも、不安そうにこちらを見つめている。
少女は恐る恐る近づいた。
「……あなたも?」
向こうの少女は、小さく頷く。
言葉は続かなかった。
何を話せばいいのか分からない。
怖いのは、自分だけじゃなかった。
しばらく沈黙が続く。
やがて向こうの少女が、小さく口を開いた。
「いたい?」
腕には痣があった。
少女は慌てて袖で隠す。
「……へいき。」
本当は痛かった。
でも、そう言うしかなかった。
「そっか。」
向こうの少女は少しだけ笑った。
ぎこちない笑顔。
それでも、その笑顔を見た瞬間、不思議と胸の苦しさが少しだけ和らいだ。
それから二人は、少しずつ言葉を交わすようになった。
「おそと、晴れてるかな。」
「晴れてるといいね。」
「おなか、すいたね。」
「うん。」
他愛もない話ばかり。
それでも、誰かが隣にいるだけで怖さは少しだけ小さくなった。
ある日。
向こうの少女がぽつりと呟いた。
「おうち……帰りたい。」
その一言で、胸の奥が締め付けられる。
「帰れるよ。」
少女は思わず言った。
「きっと。」
「ほんと?」
「うん。」
自分にも言い聞かせるように答えた。
きっと助けが来る。
きっと家へ帰れる。
そう信じたかった。
「帰ったらね。」
向こうの少女が小さく笑う。
「いっぱい、ごはん食べたい。」
「私も。」
「パンも。」
「お肉も!」
思わず二人で笑った。
ほんの数秒。
暗い牢屋に、小さな笑い声が響く。
その時間だけは、怖さを忘れられた。
しかし――。
ある日、突然だった。
ドンッ!!
建物全体が大きく揺れる。
「な、何?」
続けて聞こえてくる怒号。
「突入!」
「子どもたちを探せ!」
剣がぶつかる音。
悲鳴。
爆発音。
建物の外が騒がしくなる。
「助け……?」
少女たちは顔を見合わせた。
希望が胸に灯る。
ガシャン!!
扉が蹴破られた。
鎧を着た男が飛び込んでくる。
「無事か!」
少女は思わず頷いた。
「助けに来た!」
抱きかかえられ、そのまま部屋を出ようとした時だった。
「まって!」
少女は必死に叫ぶ。
「隣の子も!」
男は振り返る。
鉄格子の向こう。
もう一人の少女が必死にこちらへ手を伸ばしていた。
「お願い!」
男は鉄格子へ駆け寄る。
しかし。
「くそっ……!」
鍵が違う。
壊そうにも時間がない。
建物は激しく揺れ続けていた。
その時。
奥の通路から数人の男が現れる。
「このガキだけでも連れていく!」
「離して!」
少女の悲鳴が響く。
腕を掴まれ、無理やり引きずられていく。
「いやっ!」
少女は鉄格子にしがみつく。
必死に手を伸ばす。
「待って!」
助けられた少女も、男の腕から飛び降りようとする。
「お願い!」
「あの子も助けて!」
あと少し。
あと少しで届く距離。
それなのに。
二人の指先は触れることなく離れていく。
「いやあぁぁぁ!」
泣き叫ぶ声だけが響いた。
少女は何度も手を伸ばく。
何度も。
何度も。
それでも届かなかった。
「行くぞ!」
救助に来た男が少女を抱きかかえる。
「離して!」
「まだ!」
「あの子もお願い!」
「お願いだから!」
少女は叫び続けた。
涙で前が見えなくなる。
それでも、連れて行かれる少女だけを見つめていた。
やがて、その姿は暗い通路の奥へ消えていく。
静寂が訪いた。
少女は声にならない声を漏らした。
助かった。
それなのに。
心は少しも軽くならなかった。
あの日。
自分だけが助かった。
あの子は、助けられなかった。
その事実だけが、小さな胸に深く刻まれた。
――五年後。
一人の少女が村の門をくぐる。
蒼い髪をフードで隠し、片手剣と小さな盾を携えた十五歳の少女。
彼女の旅の理由は、名声でも、お金でもない。
五年前に救えなかった、あの少女を探すため。
そして、二度と同じ悲劇を繰り返さないため。
少女は静かに前を向く。
春風がフードを優しく揺らした。
その風はまだ小さい。
けれどいつか、大切な誰かを守る風になる。
これは、傷を抱えた少女たちが出会い直し、新しい居場所を見つける物語。
――『蒼と紅の冒険譚』、ここに始まる。
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