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蒼と紅の冒険譚  作者: レイヴン
旅立ち
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第十四話  Eランク昇格試験

休日を挟んでからも、ヴィルとアイナは変わらず依頼をこなし続けた。


薬草採取。


街道の見回り。


魔物討伐。


依頼を重ねるたびに二人の連携は磨かれ、ヴィル自身の実力も着実に伸びていく。


そして――。


昇格試験当日。


朝早くから冒険者ギルドは多くの受験者で賑わっていた。


ヴィルは深呼吸を繰り返している。


「緊張する……。」


隣ではアイナが静かに微笑んだ。


「ヴィルなら大丈夫。」


「ありがとう。」


その一言だけで、不思議と肩の力が抜けた。


受付ではアッシュが試験の説明を始める。


「Eランク昇格試験は二つ。」


「一つ目は実技試験。」


「試験官を相手に一定時間戦い続けること。」


「勝敗は問わない。時間内に実力を見せれば合格だ。」


ヴィルは真剣な表情で頷く。


「二つ目は試験用依頼。」


「今回はゴブリン五体の討伐だ。」


「今回はパーティーで挑んでも構わない。」


「ただし、ヴィル本人の働きもしっかり確認する。」


「はい!」


ヴィルは元気よく返事をした。


アイナはすでにEランクのため、実技試験は免除される。


「ヴィル。」


「うん?」


「いつも通りで。」


「……うん!」


◇ ◇ ◇


訓練場。


試験官の男性冒険者が木剣を構える。


「準備はいいか?」


ヴィルは剣と小盾を構えた。


「お願いします!」


開始の合図と同時に試験官が踏み込む。


速い。


ヴィルは盾で受け止め、その衝撃に驚く。


(これがEランク……!)


しかし慌てない。


父との修行。


冒険者になってからの実戦。


アイナとの数々の戦い。


積み重ねてきた経験が身体を動かしていた。


「風よ。」


足元へ風をまとわせる。


一歩横へ。


木剣をかわし、反撃の斬撃を放つ。


試験官は笑った。


「いい判断だ。」


再び打ち合いが始まる。


盾で守り、風魔法で位置を変え、隙を見つけて剣を振るう。


何度も攻撃を受けそうになりながらも、ヴィルは最後まで集中を切らさなかった。


やがて終了の鐘が鳴る。


「そこまで!」


ヴィルは大きく息を吐いた。


試験官は満足そうに頷く。


「十分だ。」


「実戦経験がよく分かる戦いだった。」


ヴィルは笑顔で頭を下げた。


「ありがとうございました!」


外で待っていたアイナが迎えてくれる。


「お疲れ。」


「終わったよ!」


「よかった。」


アイナも安心したように微笑んだ。


◇ ◇ ◇


休憩を挟み、試験用依頼が始まる。


目的地は街道近くの森。


「いつも通り行こう。」


「うん。」


森へ入り、慎重に周囲を警戒する。


しばらく歩くと、ヴィルが小さく手を上げた。


「いた。」


木陰の先にはゴブリンが三体。


棍棒を持ち、辺りを見回している。


ヴィルはしゃがみ込み、小声で話す。


「まだ気付かれてない。」


その時だった。


さらに奥の茂みが揺れる。


「あと二体。」


アイナが静かに呟く。


合計五体。


依頼の討伐数と一致した。


ヴィルはアイナを見る。


「先に数を減らそう。」


「うん。」


二人は同時に頷く。


「行くよ!」


ヴィルが風魔法で一気に飛び出す。


「はあっ!」


最前列のゴブリンへ斬撃を叩き込む。


一体目が魔石へ変わった。


同時にアイナが弓を放つ。


ヒュッ!


矢は二体目の胸を貫き、そのまま火魔法が炸裂する。


「炎よ!」


爆炎に包まれたゴブリンも魔石へ変わった。


残る三体。


「ギャアア!」


怒ったゴブリンたちが突撃する。


ヴィルは前へ出る。


盾で棍棒を受け止め、剣で牽制する。


三体を自分へ引き付ける。


「アイナ!」


「任せて!」


後方から矢が放たれる。


ヴィルの隙を狙おうとした一体の肩へ命中。


体勢が崩れたところへ火球が炸裂する。


三体目撃破。


残る二体。


ヴィルは一体を押し返しながら位置を調整する。


「今!」


アイナはもう一本の矢を放つ。


ゴブリンの脚へ命中。


動きが止まる。


ヴィルはその隙を逃さない。


「風よ!」


一気に踏み込み、剣を振り抜く。


四体目が魔石へ変わる。


最後の一体だけが残った。


ゴブリンは仲間を失い、焦ったように棍棒を振り回す。


しかしもう連携は崩れない。


ヴィルが正面から攻撃を受け止める。


盾で弾き返す。


大きく体勢を崩したゴブリン。


「終わり!」


ヴィルの剣が一直線に振り下ろされた。


鋭い斬撃が決まり、最後のゴブリンも光となって魔石へ変わる。


「やった!」


ヴィルは剣を納める。


アイナも安堵の息をついた。


「依頼達成。」


二人は五つの魔石を回収し、ギルドへ戻った。


◇ ◇ ◇


「報告します!」


ヴィルが魔石を受付へ並べる。


アッシュは数を確認し、静かに頷いた。


「五体、間違いない。」


試験官も隣で報告書を確認する。


「実技試験も問題なし。」


「依頼も達成。」


しばらくの沈黙のあと、アッシュは笑みを浮かべた。


「ヴィル。」


「はい!」


「Eランク昇格、おめでとう。」


その瞬間、ヴィルは目を大きく見開いた。


「……本当に?」


「ああ。」


ギルドカードが新しいものへと書き換えられる。


刻まれた文字は――Eランク。


ヴィルはカードを胸に抱きしめた。


「やった……!」


隣ではアイナが優しく微笑んでいる。


「おめでとう。」


「ありがとう!」


ヴィルは嬉しそうに笑った。


「これでやっとアイナと同じランクだ!」


その言葉にアイナも思わず笑みをこぼす。


アッシュはそんな二人を見ながら満足そうに頷いた。


「ここからが本当の冒険者だ。」


「慢心するな。」


「でも、お前たちならもっと上を目指せる。」


ヴィルは力強く頷く。


「はい!」


ギルドを出ると、夕焼けが街を赤く染めていた。


「今日はお祝いしよう!」


「うん。」


二人は笑いながら、いつもの食堂へ向かう。


冒険者になってから初めての昇格。


それはヴィルにとって努力が実を結んだ証であり、アイナと共に歩んできた日々が確かな力になっていた証でもあった。


こうしてヴィルは新たにEランク冒険者となり、二人の冒険は次のステージへ進んでいくのだった。

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