第十二話 新たな目標
翌朝。
いつものようにヴィルとアイナはギルドへ足を運んだ。
前日のゴブリン討伐もあり、ギルドでは二人の働きが少しずつ話題になっていた。
「おはようございます!」
「……おはようございます。」
受付へ向かうと、アッシュが二人を見るなり笑みを浮かべた。
「お前たち、最近はいつも一緒だな。」
ヴィルは首を傾げる。
「そうですか?」
「依頼も食事も帰り道も、ほとんど一緒だろ。」
「まあ……そうですね。」
「だったら、臨時じゃなく正式にパーティーを組めばいい。」
その言葉にヴィルは目を丸くした。
「パーティー?」
「ああ。正式に登録しておけば依頼も受けやすいし、ギルドとしても管理しやすい。」
ヴィルはすぐ隣のアイナを見る。
「アイナ。」
「……うん?」
「私とパーティー、組む?」
少しだけ緊張した声だった。
アイナは一瞬驚いたように目を見開く。
だが、すぐに柔らかな表情になる。
「……うん。」
小さく、それでも迷いなく頷いた。
「組みたい。」
その返事を聞いたヴィルは思わず笑顔になる。
「よろしくね!」
「……よろしく。」
二人は軽く笑い合った。
アッシュは満足そうに頷き、一枚の用紙を差し出す。
「じゃあ、この登録用紙に名前とランクを書いてくれ。」
「はーい。」
ヴィルは迷いなくペンを持つ。
『ヴィル Fランク』
アイナも続けて書く。
『アイナ Eランク』
そこまで書いたところで、ヴィルの手が止まった。
「…………え?」
何度も紙を見直す。
「ええっ!?」
ギルド中に響くほど大きな声だった。
周囲の冒険者たちが何事かと振り向く。
アイナはきょとんとしている。
「どうしたの?」
ヴィルは震える指で紙を指した。
「アイナ……Eランクなの!?」
「え?」
「え?」
二人で顔を見合わせる。
「ヴィル、知らなかったの?」
「知らないよ!」
ヴィルは思わず頭を抱えた。
「ずっと同じFランクだと思ってた……。」
アイナは少し困ったように笑う。
「私……少し前に昇格した。」
「言ってなかった?」
「聞いてないよぉ……。」
ヴィルは肩を落とす。
一緒に依頼をこなし、一緒に戦ってきた。
だから自然と同じランクだと思い込んでいた。
まさか自分だけが一つ下だったとは。
その様子を見て、アイナは少し慌てる。
「でも。」
ヴィルが顔を上げる。
「ヴィルならすぐ上がれるよ。」
「本当に?」
「うん。」
アイナは真っ直ぐ頷いた。
「私よりずっと前で戦ってる。」
「だから大丈夫。」
その言葉にヴィルの表情も少し明るくなる。
「ありがとう。」
今度はアッシュへ向き直った。
「アッシュ!」
「なんだ?」
「どうしたらEランクになれますか?」
アッシュは少し笑う。
「昇格試験を受ければいい。」
「試験!」
ヴィルの目が輝く。
「私、受けられますか?」
「受ける資格は十分ある。」
その言葉を聞いた瞬間、ヴィルはぱっと表情を明るくした。
「やった!」
しかしアッシュは続ける。
「ただし、試験は毎月一回だ。」
「次は……。」
書類を確認する。
「ひと月弱先になる。」
「ひと月かぁ……。」
ヴィルは少し残念そうな顔をした。
だが、すぐに拳を握る。
「その間にもっと強くなればいいんだ!」
「試験で絶対合格する!」
その力強い声に、アッシュは満足そうに頷いた。
「その意気だ。」
アイナも小さく笑う。
「私も手伝う。」
「本当?」
「うん。」
「一緒に頑張ろう。」
ヴィルは嬉しそうに何度も頷いた。
「ありがとう!」
その日も二人は依頼を受けるため掲示板へ向かう。
正式に登録された新しいパーティー。
そしてヴィルには、新たな目標ができた。
Eランク昇格試験。
ひと月後のその日に向けて、ヴィルはさらに努力を重ねることを心に誓うのだった。




