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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第三章 腹ペコの虎と起死回生のカレーライス

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99話 会議は三日間

「じゃあ、くれぐれも戸締りには気を付けて! もし、知らない者や怪しい者が来たら、絶対に店には入れないように。それと、食事は三食きちんと食べて、十分に休憩を取るようにしてくださいね!」

「はいはい。わかりました。ちゃんと気を付けるから、安心して!」

「あるじ様、そろそろ出かけないと会議に遅れるきゅる!」

「転移魔法で行けるのは、会議が行われる神域の手前まできゅる。会場まで歩くことを考えたら、もう行かないとまずいきゅる!」

「しずくちゃんは、ももたちやごーちゃんたちがそばにいるから、何の心配もいらないきゅる!」


 店の全員から諭されたマスターは、「行きたくない」という思いを顔に張り付けたままで、深いため息をついた。


「……わかりました。じゃあ、もう出かけますが、何かあった時は必ず連絡してくださいね。絶対に約束ですよ?」




 不安そうな顔をしたマスターが、渋々転移して行くのを見送ったしずくたちは、困ったように顔を見合わせると、やれやれとため息をついた。


「会議のお知らせが届いてから、あるじ様は取り越し苦労ばっかりしてるきゅる」

「あはは。不在にするのは、たったの三日間だけなのにね」


 ポピーの呆れ顔を見て苦笑するしずくに、ネリネとモモが付け加えた。


「あるじ様は、昨日から不安で一睡もできなかった、ってぼやいていたきゅるよ」

「店やしずくちゃんのことが心配で、知り合いの神様に護衛を頼んでいたきゅる」

「そうなの?!」


 今回の会議は、参加する神々にしか入れない特別な神域の中で行われるらしく、時の流れが緩やかなその神域で一日過ごす間に、外の世界では三日が経過しているそうだ。

 ちなみに会議が開かれるのは明日だが、マスターやヴィリオーサたちには、事前の打ち合わせのために前日から来るよう通達があったようだ。

 その話を聞かされたしずくは、おなかが空いたら食べるようにと、マスターに料理を山ほど持たせている。


「大好きな卵料理を食べているうちに、マスターの不安が消えるといいんだけどね」

「しずくちゃんは、新作デザートのさつまいものタルトもあるじ様に預けていたきゅるね」

「うん。マスターが、今回の会議は長引きそうって言っていたから、もし小腹が減ったら、りりちゃんや小鳥さんたちと一緒につまんでもらおうと思って」

「きっと、りりちゃんたちも、大喜びするきゅるよ!」

「ふふ。そうだといいな。あ、もちろん私たちの分も作ってあるよ。夕食の後で、みんなで一緒に食べようね」

「嬉しいきゅる!」


 目をキラキラさせる食いしん坊のポピーに、思わず笑顔になるしずくである。




 明日から一週間、〈喫茶シルエ〉は臨時休業だ。既にクアウラたちを通じてシグベルムの人々には通達済で、休業中は全員で〈りりちゃん印のクリームチーズケーキ〉を作ることになっている。


 つい数日前、議事堂前の広場近くに、このケーキを販売するための小さな店舗を構えたのだが、初日から長蛇の列ができて、開店と同時に飛ぶように売れたケーキは、昼を待たずに完売してしまった。

 そのため、自分だけではケーキを作るのが間に合わないと判断したヴィリオーサは、急いでマスターやしずくに相談して、彼女自身が創り出した二十体のゴーレムたちに、クリームチーズケーキの作り方を一から叩きこんでもらった。

 そのため、今現在〈りりちゃん印のクリームチーズケーキ〉作りは、ヴィリオーサとその二十体のゴーレムとで行っているのだが、会議に出席するために、監督役で指示役のヴィリオーサが不在の間はケーキが作れないため、今回は、しずくたちが彼らに代わってケーキを作り、店に出荷することになったのだ。


「明日からはケーキ作りで忙しくなるから、今夜は夕ご飯をちゃんと食べて、しっかり眠ろうね」

「ぽぴーたちもいっぱいお手伝いするきゅる!」

「ねりねも、ケーキの作り方を覚えるきゅる!」

「ももだって、いっぱいいっぱい頑張るきゅる!」


 張り切る三匹のそばでは、ごーちゃんたちが力こぶを作る仕草(しぐさ)をしている。


「ふふ。みんなありがとう。頼りにしているからね!」


 気合十分の仲間たちを見て、しずくは嬉しそうに微笑んだ。


(頑張ってくれるみんなには、せっかくだから、何か新しい料理を作ってあげたいな)




 今夜はどんな料理を作ろうかと、鼻歌まじりで考えを巡らせていたしずくは、自分が見知らぬ国の騒動に巻き込まれる事を、この時点では知る(よし)もなかった。


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