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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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83話 特製ケーキを試作しよう!

 とても意外なことに、ヴィリオーサに呼ばれて参上した死神蜜蜂たちは、いずれも(こま)やかな気配りができる紳士だった。

 彼らは、腰が引けているしずくたちを驚かせないよう、適度な距離を取ると、殊更(ことさら)にゆっくりとした動作でお辞儀をした。

 そして、きちんとマスターから店に立ち入る許可を得ると、巣を小分けにして持ってきた蜂蜜を、わざわざ貯蔵庫まで運び入れてくれた。

 そこで、お礼に作り置きをしていたホールケーキを持たせてやると、彼らはしずくに何度も頭を下げ、ギチギチと喜びの声を上げて去って行った。


「なんだか、とてもいい蜂さんだったね。普段は大人しい人ほど怒らせると怖い、って良く言うけれど、もしかして死神蜜蜂さんたちも、そんな感じなのかな?」

「縄張りさえ(おか)さなければ、彼らとはよき隣人として付き合っていけるのかもしれませんね」


(あの紳士な空飛ぶ伊勢海老(しにがみみつばち)が、殺意満々で自分を襲撃して来る光景なんて、絶対に見たくないなあ)


 しみじみとそう思ったしずくは、この先何があっても、彼らの縄張りには決して踏み込むまい、と固く心に誓った。


「はちみつが足りなくなったら、またあの蜂さんたちが持ってきてくれる、ってりりちゃんが言ってるきゅる!」

「りりちゃんは、蜂さんたちのために、お花畑を作ってあげてたきゅる」

「だからずっと仲良しきゅる」

「そっか、そういうことだったんだね」


 心優しいヴィリオーサは、長い間死神蜜蜂たちを手助けしていたようで、滅多に人が立ち入らない上に、ヴィリオーサが好みの花をいくらでも咲かせてくれるポリュグ山は、死神蜜蜂たちにとっては、この上ない楽園であるらしい。

 彼らはかつて、遥か北の大陸にある神域に住んでいたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ため、わざわざポリュグ山に移住してきたらしい。


 ──さっき何匹かの死神蜜蜂が、やたらと〈白い死神〉を警戒していたように見えたのは、できれば気のせいだと思いたいしずくである。






「それじゃあ、早速新しい食材を使って、ケーキを試作してみるね!」


 全員で協力して、クリムの実を収穫してから店に戻ると、しずくはごーちゃんたちと一緒にカウンターの中に入り、ケーキ作りに取り掛かった。

 

 製作過程は前回とほぼ同じだが、今回は土台のクッキー生地に程良く塩味を利かせるようにした上で、クリームチーズ生地には〈死神はちみつ〉を使い、その上には、クリムの実の中身にサウー砂糖を混ぜて作った特製クリームを乗せた。

 そして、これらを〈白い死神〉に頼んで冷やし固めてもらうと、クッキー、クリームチーズ、クリームの三層からなる、特製クリームチーズケーキが完成した。


「すっごく美味しそうきゅる~!」

「さっきよりも、いい匂いがするきゅるよ!」

「真っ白で、ふわふわで、見ているだけで幸せになるきゅる~!」

「見た目は問題なさそうだけど、肝心なのは味なんだよね……」


 今度は、しずくもみんなと一緒に試食する。

 ほぼ一斉にフォークですくったケーキを口に入れるなり、誰からともなくため息が漏れた。

 しばらくの間、一同が無言でもくもくと食べ進める中、一番最初に声を上げたのは、マスターだった。


「これは、美味しいですね! クッキー生地の塩味と、クリームチーズ、クリームの味のバランスが絶妙です!」


 そう言っておいて、休むことなくパクついているところを見ると、余程このケーキが気に入ったようだ。


「このクリーム、お口に入れたら、しゅわわわんって溶けちゃったきゅる!」

「もったりとしたクリームなのに、口の中に入れてみると軽くてしつこくない。これは食べる手が止まりませんね」

「先輩、このクリームチーズも絶品ですよ! さらになめらかで、さわやかな甘さの中にコクがある。これなら、いくらでも食べられちゃいます!」


 ポピーやクアウラ、ワトルなどの、マスター以外の男性陣も大絶賛である。

 ちなみに、〈白い死神〉はというと、ケーキに思いっきり顔を突っ込んで、かつかつと終始無言でむさぼっている。


「見た目も綺麗で、中身もこんなに美味しいだなんて、夢のようきゅる」

「こんなに美味しいケーキを食べられるだなんて、ももは、しずくちゃんやりりちゃんに出会えてよかったきゅる!」

『すごく……おいしい……』


 ネリネ、モモ、りりちゃんたちの女性陣にも大好評のようだ。


(これなら、いけるかも!)


 皆の様子を見て確かな手ごたえを感じたしずくは、満足そうに微笑んだ。


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