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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第一章  森の中の喫茶店

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8話 土下座する店長

「──しずくさん、ごめんなさい!」

「え? 急にどうしたの?」


 突然謝罪されて戸惑うしずくの目の前で、目を伏せたマスターがだらだらと冷や汗を流している。

 蛇なのに、まぶたがあったり冷や汗を流すのは異世界仕様なのかな? と考え込んでいると、いきなり白蛇がカウンターの上にぺったりと頭をこすりつけた。


「なんで土下座?!」

「本当に申し訳ありません!! ぼくは、一番重要な事をお伝えしていませんでした!」

「はい?」


 頭と翼をカウンターにぺたりとつけて謝罪され、驚いて目を白黒させているしずくに、マスターはとんでもないことを言い出した。


「──おそらく、しずくさんは誤解しているのだと思います」

「誤解って?」

「……実は、()()()()ではなく、()()()()なのです」

「……ん?」


 一呼吸置いた後で、言葉の意味を理解したしずくの顔から、さーっと血の気が引いた。


()()()()?! え、ちょっと待って、それってつまり──」

「そうです。ぼくが店を開くのは()()()()()()なのです。だから、メニュー表や料理のレシピはありませんし、店員はしずくさんだけなのです!」

「えええええー!!」


 畳みかけるように衝撃の事実を知らされ、思わずふらついたしずくがカウンターに手をついた。


「で、でも、さっき一緒にコーヒーの器具を見ていた時、マスターは迷わずサイフォンを選んでいたよね? それって、以前に喫茶店をやっていたからじゃないの?!」

「だって、ほら、サイフォンがあるのって、いかにも老舗の喫茶店っぽいじゃないですか」

「しょーもない理由だった──!」


 短い体をくねらせながら、恥ずかしそうに顔を赤らめるマスターに、しずくがガクリと膝をつく。

 どうやら、この風変りな店長は、形から入るタイプのようだ。


「そんなことでよく、明日開店しようだなんて思ったね?! 今から開店を延期することはできないの?」

「そうしたいのは山々なのですが、既に知り合いには明日開店すると伝えてしまったので……」

「伝えちゃったのかー……」


 先走りにも程がある。


「でも、伝えたのが全員マスターの知り合いなら、正直に事情を説明して謝ればわかってもらえるんじゃない?」

「僕もそう思うのですが、うっかり誓約してしまった以上、もう覆すことはできないのですよ」

「誓約って──もしかして破っちゃうとまずい感じのやつ?」

「ええ。破ってしまうと、それなりに厳しい罰が下ります」

「なんでまた、うっかりそんなことをしちゃったかなあ……」

「すみません。ようやく喫茶店が開けると思って、つい、浮かれちゃいまして」

「浮かれちゃったかー……」


 しずくは、項垂(うなだ)れて深く反省しているかわいらしい白蛇を見つめながら、深いため息をついた。


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