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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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79話 試行錯誤

 しずくが作ろうと決めたのは、クッキー生地をベースにして、砂糖の代わりに蜂蜜を使うクリームチーズケーキだった。


「このケーキの作り方はとっても簡単! クッキーを砕いてケーキ型に敷き詰めたら、クリームチーズで作った生地を流し込んで冷やすだけなの。これなら、あまり難しい工程はないし、りりちゃんでもすぐに覚えられると思う」

「聞いているだけで、美味しそうきゅる。味見はポピーに任せてほしいきゅる!」

「お店で出すレアチーズケーキに似てるきゅる。でも、このケーキはタルト生地じゃないし、砂糖は使わないきゅるね?」

「しずくちゃん、ももは、ケーキを冷やすのは、小鳥さんにお願いしたらいいと思うきゅる」

「そっか! 小鳥さんは氷魔法が得意だものね。大量に作ったケーキを冷やし固める時に、小鳥さんに手伝ってもらえたら、一気に作業時間を短縮できそう!」


 自分の名を耳にした〈白い死神〉が、カウンターの上に飛んで来た。


『おれ、ひつよう?』

「うん。小鳥さんの魔法で、クリームチーズケーキを冷やしてほしいの」

『こおりのまほう、おれ、とくい!』

「お礼はサウー砂糖とケーキの試作品でどう? お願いできるかな?」

『わかった! まかせろ!』

「即答ですか。ちょっとチョロすぎやしませんか?」


 マスターに呆れられても、〈白い死神〉はどこ吹く風である。彼の生きる目的はサウー砂糖を食べることと言っても過言ではないそうなので、砂糖がもらえるなら他人から何と言われようと気にしないのだろう。

 ある意味、とても潔い生き方であると言える。


 優秀な冷凍要員を確保したしずくは、まずは一人だけで試作品作りに取りかかった。

 甘さ控えめのクッキーを砕いたものに溶かしバターを混ぜて作った土台を、〈白い死神〉の氷魔法で冷やしてもらう間、貯蔵庫に据えた業務用冷蔵庫にあったクリームチーズと、生クリーム、蜂蜜、レモン汁、粉ゼラチンを溶かしたものを混ぜて生地を作る。

 その生地を、型に敷いた土台に流し込み、〈白い死神〉の氷魔法でゆっくりと冷やし固めれば、クリームチーズケーキの出来上がりである。


「小鳥さんの魔法のおかげで、あっという間に出来上がったね」

『しずくのてつだい、たのしかった』


 しずくから褒められた〈白い死神〉は、まんざらでもない表情をしている。


「おいしそうきゅる~! ぽぴーは早く味見したいきゅる!」

「ねりねも早く食べたいきゅる~!」

「小鳥さんみたいに真っ白で綺麗なケーキきゅる!」

『しろい、おいしい、とてもいいこと!』


 モモに体の色を褒められた〈白い死神〉が、ますますご機嫌になる。


「このケーキに合わせるのなら、やっぱり紅茶がいいかな?」


 少し悩んだ末に、飲み物にはディンブラによく似た風味の茶葉を選んだ。異世界の紅茶は、()()()()()()のものに負けず劣らず種類が豊富なので、選ぶのがなかなか難しい。

 もちろん、〈白い死神〉はミルクティーにして、手伝ってくれたお礼にサウー砂糖をいつもより多めに入れておく。


「んん~! ひんやりして甘くておいしいきゅる~!」

「お口に入れたとき、とってもなめらかきゅる!」

「食べたあとに紅茶をを飲むと、さらに美味しく感じるきゅるね!」

「この店で食べたレアチーズケーキよりも、すっきりとした甘みで、飽きがきませんね」

「爽やかな甘さで凄く美味いです! 僕、このケーキならいくらでも食べられそうです!」


 シュクレドラゴンのポピー、ネリネ、モモ、それに、シグベルムの神官であるクアウラとワトルの反応は上々のようだ。

 だが、一番最後にケーキを味見したしずくの表情は、あまり冴えなかった。


「うーん、これではちょっとダメだなあ……」


 かたりとフォークを置いた彼女は、頬に手を当てて、叔母譲りの端正な顔を(しか)めていた。


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