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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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72話 やりすぎきゅる!

 あの後、遅れてやって来たマスターが、寒さを防ぐ魔法をかけてくれたおかげで、しずくたちは歯の根が合わないほどの寒さから解放された。


 間近からヴィリオーサの巨体を目の当たりにしたクアウラとワトルは、最初こそ、その恐ろしい姿を見て硬直していたが、まるで雑に梱包(こんぽう)された荷物のように氷の(なわ)でぎっちりと縛られ、止めどなく大粒の涙を零す哀れな神竜の姿を見ているうちに、恐怖心よりも同情心が(まさ)ったらしかった。


「マスター様、どうかこの氷の縄を解いていただけないでしょうか? このままでは、ヴィリオーサ様があまりにもお気の毒です」

「僕からもお願いします。僕らにお手伝いできることがあれば、なんでもいたします!」

「マスター、私からもお願い!」

「あるじ様、ぽぴーたちもお願いするきゅる!」


 祈るように必死で手を合わせる神官や、しずくたちから懇願されたマスターは、「さっさとこの吹雪を止めて縄を解かないと()()にしますよ?」と〈白い死神〉を脅し、ヴィリオーサを自由にした。

 それでもまだ震えが止まらないヴィリオーサをどうにか(なだ)め、落ち着かせたしずくたちは、小さなドラゴンに変化した彼女を抱えると、急いで店の中に運び入れた。


『~~~!』

「ああ、よっぽど怖かったんだね。だけどもう、大丈夫だからね」


 小さな紅色のドラゴンが、顔中を涙でびちゃびちゃにしている姿は、見ていてとても痛々しい。

 店内に入ると、ドアの近くで待ち構えていたごーちゃんたちが、すばやくタオルと毛布を差し出した。さすがは気配りの達人である。


「可哀そうに。すっかり体が冷え切っちゃってるよ」

「しずくさん、今ぼくが魔法で温めますから、ヴィリオーサをこちらの椅子に座らせてください」


 しずくは、カウンターに近いテーブルの椅子に毛布を敷き詰めると、タオルで濡れた体を拭いたヴィリオーサを、抱え上げるようにして座らせた。

 昨日は自力で飛んで椅子に座っていたヴィリオーサだが、今は翼が凍り付いて動かせないのだ。


 マスターにヴィリオーサの世話を任せておいて、しずくはごーちゃんたちと共に急いで食事の準備に取りかかった。

 その間、犬人族の二人は濡れてしまった床を拭いてくれており、窓際のテーブルでは、三匹のシュクレドラゴンが〈白い死神〉を取り囲んで説教していた。



「小鳥さんは、乱暴すぎるきゅる!」

「怖がりな女の子をいじめちゃだめきゅる!」

「体を凍らせるのは、やりすぎきゅる!」


 だが、どんなに非難されようとも、〈白い死神〉は不思議そうに小首を傾げるだけで、全く(こた)えていないようだ。

 しまいには、ほりほりと足で頭を()き始めたのを見て、珍しく激怒したモモが大声で叫んだ。


「りりちゃんは、〈豊穣(ほうじょう)の神様〉きゅるよ! あまりいじめると、サウーの木を生やしてもらえなくなるきゅる! 小鳥さんはそれでもいいきゅるか?!」

『!?』


 足をあげたままでピシリと固まった〈白い死神〉は、つぶらな目を見開いてモモの顔を何度も見返すと、急に落ち着きを失くしてテーブルの上をぐるぐると回り出した。


 どうやら、今回は〈白い死神〉ではなく、シュクレドラゴンたちに軍配が上がったようだった。


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