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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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66話 明かされた真実

「当時、実際に何があったのかは、今現在もご存命のアリン夫人の兄君が教えてくれました。せっかく生きて戻ったわが子を、自分が眠っていた(すき)に夫のジャガンに捨てられた夫人は、連日必死になって赤子を捜し回ったそうです。そして、その懸命な捜索の末にようやく孤児院に行き着いた彼女は、わが子を引き取ったその足で兄夫婦に助けを求めました」


 その時、すっかり痩せて別人のようになっていたアリンを見た彼らは、驚きのあまり言葉を失ったという。

 そんな兄夫婦から、一体何があったのかを尋ねられたアリンは、顔中を涙でぐしゃぐしゃにしながら訴えたそうだ。


「この子がせっかく生きて戻ったのに、ジャガンは少しも喜ばなかったの。それどころか、彼は私たちを冷たい目で見ながら、こう言ったのよ!」


 ──なんてことだ! ただでさえ、(いまし)めを破った愚か者だと、周りから白い目で見られているのに、生贄(いけにえ)に差し出したはずの赤子が家に戻って来ていると知られたら、きっとこっそり連れ帰ったと誤解されて、ますます居場所がなくなるじゃないか! 



 話を聞いていたしずくとシュクレドラゴンたちの顔から、表情が抜け落ちた。


「なんですかそれは。控えめに言っても、クズですね」

「クズきゅる」

「最低きゅる」

「いっそ頭の毛を全部、むしりとってやりたいきゅる」

「残念ながら、ジャガン神官長の毛根は全て死滅していたので、それは難しいかと」

「……クアウラさん、そこは受け流していいですから」



 アリンは夫の冷たい態度に傷ついたが、「それなら、家族三人で国を出ればいいじゃない!」と、なおも食い下がった。 

 だが、「せっかく店が軌道に乗ってきたのに、お前はそれを捨てろというのか!」と言われて口汚く罵られた挙句、「子供が欲しいのなら、また産めばいいだろう!」と、吐き捨てられたそうだ。


「アリン夫人の兄君は、当時の事を思い出すと、『今でも奴の首をへし折りたくなる』と言って、激怒しておられました」

「でしょうね!」


 しずくと同様に、シュクレドラゴンたちも、かわいい目を三角にして怒っている。


「ですが、兄君は賢明な方でした。彼は、『もし赤子が生きていると知れれば、ジャガンが奪い返しに来るかもしれない』と危惧して、隣国に住む親戚の元にアリン夫人たちを逃がすことにしたのです」


 その後アリンの兄は、わざわざジャガンの元に出向いて頭を下げ、「どうやら妹は新しい恋人と共に国を出たようだ」と、何食わぬ顔で嘘をついて離婚を承諾させ、二度とジャガンが妹のアリンを捜すことがないように立ち回った。


「つまり、ジャガン神官長が、『最愛の妻は恋人を作って家を出た』と公言していたのは、アリン夫人の兄君の嘘を、そのまま信じ込んでいたからだったのです」

「アリン夫人と彼女のお兄さんは、たとえ自分たちが不名誉を(こうむ)ろうとも、赤ちゃんの身の安全を図ろうとしたんですね」

「ええ。でも、その甲斐(かい)あって、夫人と赤子は、無事に他国の親戚の元に逃げ延びて、幸せに暮らすことができたそうです」

「そうなんですね! それを聞いてほっとしました!」


 しずくやシュクレドラゴンたちに、ようやく明るい笑顔が戻る。


「その後、クズ神官長はどうしたきゅる?」

「ちょ、ポピー! その呼び方はダメ!」


 慌てるしずくに、クアウラが笑い出す。


「本当の事なのですから、別に構いませんよ。アリン夫人がシグベルムを脱出した後、結局ジャガンの店は一年も持たずに潰れました。当時からやり手の商人として名を()せていた夫人の兄君が、それとなく手を回したようです」

「兄君、なかなかやるきゅるね!」

「いい気味きゅる!」

「もしこの店に兄君さんが来たら、しずくちゃんのコーヒーをサービスするきゅる!」


 シュクレドラゴンたちの間で、アリン夫人の兄への評価が爆上がりしていた。




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