61話 四つの質問
「……これを見れば一目瞭然ですね」
「ええ。ご覧の通り、わが国の収穫量だけが、異常に突出しているのです」
「二倍──作物の種類によっては、三倍近くも収穫量が違うきゅるね」
いつの間にか、ちゃっかりとカウンターチェアに座り、資料をのぞき込んでいたネリネがそう指摘すると、興奮したワトルが椅子から立ち上がった。
「そうなんですよ! 作物だけに限定すれば、わが国は他国に比べてかなり勝っていると、僕は常々思っていましたが、まさかこれほどまでに差があったとは、考えてもみませんでした!」
「でも、ちょっとおかしいきゅるね。この、四番と書かれている表を見ると、お隣のマウナ王国はシグベルムと大して変わらない気候なのに、どうして収穫量にこんなにも差が出てるきゅるか?」
思慮深いネリネが、違和感を覚えた部分を指摘しながら、しきりに首を傾げている。
「この四番の表は、シグベルムと周辺国の気候について書かれたものですよね?」
しずくがそう尋ねると、クアウラは真剣な顔でうなずいて見せた。
「ええ。そちらの店員殿がおっしゃる通り、マウナ王国だけでなく他の国についても、気候にそれほど大きな差はないのです。それなのに、これほどまでに収穫量が異なる理由は一体何なのか──わが国の高名な学者たちが必死に調べておりますが、今のところ、まだはっきりした答えは見つかっておりません」
「……そうですか」
「ですが、しずく様は、既に答えを知っているのでは? われわれにこのような調査を依頼してきたのも、ご自分の考えが正しいかどうかを、確認するためだったのではないですか?」
焦れた様子のクアウラが問いかけると、テーブルのそばで黙って会話を聞いていたモモとポピーが、おねだりするようなかわいらしい目で見上げて来た。
「そうきゅるか? しずくちゃん。だったら、ももに教えてほしいきゅる」
「ぽぴーも知りたいきゅる!」
しずくは、淹れたてのコーヒーをトレイに載せてごーちゃんたちに手渡すと、三匹に笑いかけた。
「当ててみて? 答えのヒントは、シグベルムにはあって、他の国にはないものだよ」
質問されたシュクレドラゴンたちは、目をぱちくりさせながらお互いの顔を見ると、きゅるきゅると騒ぎながら、ああだこうだと答えを探し始めた。
「シグベルムにあって、他の国にはないものって、いったい何きゅるか?」
「もしかして、おいしいごはんきゅる?」
「シグベルムには、牛さんや羊さんがいっぱいいる、ってマスターは言ってたきゅる」
「残念ですが、それは違うかと。他の国々にも美味しい名物料理は数多くありますし、ジュライア共和国やグレム王国でも、わが国と同じように、盛んに牧畜が行われていますからね」
「おそらく、もっと広い意味を持つ何かではないだろうか? 例えば法制度や、人種の違いはどうだ?」
クアウラやワトルも加わり、様々な意見を出し合い始めたが、それでもなかなか答えが出ないようだ。
「答えは、ただのものだとは限らないよ? シグベルムだけに強い繋がりのある存在──それは誰のことだと思う?」




