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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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60話 クアウラたちからの報告

 傷ついたヴィリオーサの心を、そのまま具現化(ぐげんか)したような土砂降りの雨は、夜半過ぎには止んでいた。

 だが、朝になっても、空にはどんよりとした厚い雲が垂れこめており、いつ雨が降って来てもおかしくなかった。





 開店して間もなく、〈喫茶シルエ〉を訪れたクアウラとワトルは、カウンターの角でくたりと横たわってそっぽを向いているマスターに気付くと、怪訝(けげん)そうな顔をした。


「あの、マスター様は具合でも悪いのでしょうか?」

「もしや、昨日(さくじつ)に聞こえた恐ろしい咆哮(ほうこう)と何か関係が? あれはヴィリオーサ様の声ですよね?」

「え? あの声って、シグベルムまで届いていたんですか?! 驚かせてしまってごめんなさい!」

「あ、いえ、われわれの事はともかく、しずく様たちがご無事で何よりです。もしや、ヴィリオーサ様がこちらで暴れたのかと思い、みな心配していたのです」

「ご心配をおかけして申し訳ありません。でも、りりちゃんは優しいからそんなことはしませんよ。あれは、マスターにひどい事を言われて傷ついたりりちゃんが、悲しみのあまり叫んだ声だったんです」

()()()()()──ですか?」


 首を傾げたクアウラにポピーが説明する。


「ヴィリオーサって言いにくいきゅる。だから、()()()()()って呼ぶことにしたきゅる!」

「な、なるほど、そういうことでしたか」

「すると、マスター様がヴィリオーサ様を()らしめたということですか?!」


 興奮するワトルに、しずくが苦笑する。


「違います。マスターは内気な女の子にひどい言葉を投げつけて、彼女の心を傷つけたんです。そのことで、私たちから散々怒られたせいで、今はあの通りいじけていますけどね」

「……ヴィリオーサ様が、()()()()()()?」

「ひどい言葉を投げつけられて、あのヴィリオーサ様が逃げ出した?」


 しずくとマスターを何度も見比べた二人は、戸惑った様子で立ち尽している。


「お客様、こちらのお席にどうぞきゅる」


 だが、モモに案内されて、カウンター近くのテーブル席に腰を下ろした彼らは、ここに来た本来の目的を思い出して表情を改めた。


「ところで、お願いしていた件は、どうなりましたか?」

「ええ。全て調べがつきました──ですが、正直に申し上げて、かなり驚きました」


 二人に淹れたてのコーヒーを出したしずくが、カウンターの中から問いかけると、すぐにクアウラが答えを返す。まるで、質問されるのを待ちかねていたかのようだ。


 二日前、しずくがメモに書いて二人の神官に調査を依頼したのは、次の四つの事だった。


 一、赤子を生贄にされた家族がその後どうなったのか

 二、百五十年前に孤児院に預けられた子供の記録

 三、シグベルムで育つ作物の収穫量と、周辺国の収穫量との比較

 四、周辺国の大まかな気候について


「一と二に関しては、少々込み入った話になりますので、まず先に、三と四についてご説明いたします」


 クアウラはそう言うと、しずくによく見えるように、カウンターの上に資料を広げた。

 そこには、シグベルムと周辺国における、直近十年分の作物の収穫量が、分かりやすく数字で示されていた。


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