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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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59話 みんなから怒られるマスター

「おや? ようやく自分の声で話す気になったのですか?」

「あるじ様、もっとりりちゃんに優しくするきゅる」

「怖がらせちゃだめきゅる」

「そんなに意地悪そうな顔をされたら、話したくなくなるきゅる」


 シュクレドラゴンたちから抗議され、マスターが仕方なく言い直す。


「んんっ! この場にいるわれわれは、全員あなたの事情を知っています。つまり、悪い竜だと思われる心配はないのですから、いつか人々の誤解を解くときの予行練習だと思って、声を出して話してみては?」


 椅子に座ったままのヴィリオーサは、困惑した様子で視線をさまよわせている。


「あなただって、本当はこのままではいけないと思っているのでしょう?」


 マスターのその言葉を聞いて、ヴィリオーサが目を見開いた。不安そうに見つめてきた彼女に向かって、しずくやシュクレドラゴンたちが大きくうなずいた。

 お手伝いゴーレムのごーちゃんたちも、両腕で力こぶを作る仕草(しぐさ)をして、ヴィリオーサを応援している。


 〈白い死神〉は、相変わらずホールケーキをむさぼり食っている。


 とうとう覚悟を決めたのか、ヴィリオーサがゆっくりと口を開けた。





『──本当は、わたしだって自分の声でお話がしたい。シグベルムの人たちと、仲良くしたい』





 それは、地を()うような低い音に、獰猛(どうもう)な獣の(うな)り声とがなり声を混ぜたような、身の毛がよだつような怖ろしい声だった。

 しずくたちが何も言えずに固まっていると、マスターが、しげしげとヴィリオーサの顔を見ながら口を開いた。


「なるほど、 確かにひどい声ですね」

『……!!!』


 次の瞬間、金色の目に涙を浮かべたヴィリオーサは、しずくに声をかける(すき)すら与えずに、あっという間に店から飛び出していった。

 その直後、外から恐ろしくもどこか悲しげな咆哮(ほうこう)が聞こえて来た。


「りりちゃん!」


 しずくやシュクレドラゴンたちは慌てて店を飛び出したが、既にヴィリオーサは元の姿に戻って、北のポリュグ山脈へと飛び去った後だった。コウモリのような翼を生やした巨大なドラゴンの後ろ姿は、みるみるうちに小さくなり、やがて見えなくなった。




「ちょっと、マスター! さっきの態度は一体なんなの!?」


 店の中に戻るなり、しずくは厳しい顔でマスターに詰め寄った。


「し、しずくさん? そんなに怖い顔をしてどうしたんです?」

「どうしたもこうしたもないでしょ! なんであんなことを言ったの?!」

「え? なんでって、ぼくはただ、思ったことを素直に口にしただけで──」

「もー! いくらなんでも、デリカシーがなさすぎるよ!」

「いくらあるじ様でも、ひどいきゅる!」

「ねりねもぽぴーと同じ意見きゅる、さすがに、あれはないきゅるよ!」

「りりちゃんが、かわいそうきゅる!」


 怒ったしずくたちから一斉に責め立てられ、動揺したマスターが視線をさまよわせていると、ホールケーキの上で生クリームまみれになっていた〈白い死神〉と、不意に目が合った。


「な、なんです? あなたまで何か──」

『……………………どんびき』





 〈白い死神〉からの呆れた視線と言葉でトドメを刺されたマスターは、へにゃりとテーブルの上に倒れ伏すと、そのまま動かなくなった。


悪意が全くないぶんタチが悪い (=_=)

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