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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第一章  森の中の喫茶店

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5話 聞いてません

「んんっ! まあ、色々と説明不足による誤解があったようですが──あらためて、宜しくお願いしますね、しずくさん」

「こちらこそ、どうぞ宜しくお願いします。あ、でも私、店長さんのお名前をまだ聞いていませんでした。これから何とお呼びしたらいいですか?」

「ああ、それでしたら、どうかぼくの事はマスターと呼んで下さい。それと、堅苦しい敬語は要りません。もっと気安い感じで話してもらいたいです!」

「え? でも、店長……じゃなくて、マスターは従業員の私に対して敬語ですよね?」

「これは、ぼくの口癖のようなものなので、気にしないで下さい。とにかく、そういうことでお願いしますね!」

「はあ」


 これ以上は何を言っても、雇い主が折れることはなさそうだ──そう判断したしずくは、仕方なく彼の申し出を受け入れた。


「ところで、叔母さんとマスターはどうやって知り合ったの?」


 異世界の生物(?)であるマスターと、叔母の天音(あまね)の間にどんな接点があったのだろう?

 それは、しずくが一番気になっていたことだった。


「あー……、まあ、そのことについては、今お話しするとかなーり長くなりますので、また後日あらためてご説明しますね!」


 あからさまにはぐらかされた。一瞬マスターの顔がこわばった所を見ると、あまり知られたくないことなのだろうか。それとも、もしかしたら、警戒されている?


(うーん……。他にも、マスターの名前とか年齢とか種族名とか、山ほど聞きたいことがあるんだけどなあ。でも、気心の知れないうちから無理に聞きだそうとする訳にもいかないし)


 仕方がない、今は「後日に説明する」というマスターの言葉を信じて引き下がろう、といったん疑問を飲み込んだしずくは、すぱっと気持ちを切り替えると、あらためて店内を見渡した。


「この店に入った時から、ちょっと不思議だったんだけど、この店って、カウンター以外、何もないんだね。テーブルや椅子はどこに片づけているの?」


 それに、喫茶店なのにコーヒーカップや皿のたぐいも見当たらない。カウンターの後ろには大きな棚が備え付けられているが、中には何も置かれておらず空っぽなのだ。


「実は、そのことについて、急いで相談したいと思っていたんです! 何しろ開店するのは明日なので、内装や必要な品の準備を本日中に終わらせる必要がありまして」

「今なんて?」


 思わずしずくが聞き返してしまったのは、無理からぬ事だった。




ご覧いただきありがとうございます。

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