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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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47話 やっぱり違う気がする

 ギラギラとした金色の眼が、瞬きもせずに店の中をのぞき込んでいる。

 ふと気付くと、そばにいたはずのマスターが窓際に移動して、〈白い死神〉と共に警戒態勢をとっていた。


「この金色の目は……まさか、本当にヴィリオーサなのか? だが、どうしてここに──」


 マスターが(いぶか)し気な顔で金色の目を見つめ返している。確か、ヴィリオーサというのは、シグベルムを守護する火炎竜の名前だったはずである。

 どうやら、今も聞こえている「カフー、カフー」という不気味な音は、その火炎竜が漏らす吐息の音で、先程まで聞こえていた轟音や、地震のようなひどい揺れは、巨大な竜が歩く時の地響きだったようだ。


「もの凄くおっきなおめめきゅる」

「こっちを見てるきゅる。ごはんが食べたいきゅるか?」

「でも、大きすぎて、お店には入れないきゅる」


 椅子から転げ落ちたクアウラとワトルが、尻尾を巻いてガタガタと震えている一方で、シュクレドラゴンたちは特に怖がることもなく、のんびりした様子でおしゃべりを続けている。

 見た目はぽやぽやとしているのに、案外肝が太いのだろうか?


「ま、まさかヴィリオーサ様がこんなにも巨大だとは──」

「こ、こんなにも恐ろしい竜を、僕らでどうこうできるわけがありませんよ……!」


 絶望感を漂わせている彼らの近くでは、お手伝いゴーレムのごーちゃんたちが、さっきの揺れで動いてしまったテーブルや椅子を、せっせと元の位置に戻している。


(こんな時でも、ごーちゃんたちは働き者だなあ……)


 ちょこまかと動く彼らを見ているうちに、しずくはすっかり落ち着きを取り戻していた。

 そうだ、自分もごーちゃんたちを手伝わなくては、とカウンターの中から出ようとすると、ぱたぱたと小さな翼をはためかせながらマスターがやって来た。


「大丈夫ですか? しずくさん。驚いて心臓がおかしくなったりしていませんか?」

「うん。さっきはびっくりしたけど、今は平気。心臓も何ともないよ。そういえば、こちらの世界に来てからは、嘘みたいに心臓の調子がいいんだよね」

「……良かった。意外と落ち着いているようですね。怖がっているのではないかと、心配していたんですよ」

「まあ、あんなに大きな眼で見つめられたら、びっくりするけどね」

「たとえ相手が竜であろうと、この店やしずくさんたちには手出しはさせません。だから、安心してくださいね!」


 巨大な竜がうっかり身じろぎした弾みで店を壊されたら嫌だなあ、と心配していたしずくだが、竜は先程から店の中をじっとのぞき込むだけで、特に何もしてこない。

 奇妙な膠着(こうちゃく)状態が続く中、マスターは厳しい顔で竜の目を(にら)みつけている。


「ヴィリオーサは、一体どういうつもりで、この店に来たのでしょうね。生贄(いけにえ)の件でシグベルム人が自分に害を及ぼそうとしていることを知って、威嚇(いかく)しに来たのでしょうか?」


 もしそうならこちらもやり返してやる、と言わんばかりの白蛇に、思わずしずくが苦笑する。


「多分、そんなつもりはないと思うよ。単にこの店が気になって、見に来ただけじゃないかな?」

「え?」

「だって、もし私たちを脅すつもりなら、咆哮(ほうこう)を上げたり、店を壊そうとするはずでしょう?」

「ふむ。言われてみれば確かにそうかもしれません。今もこうして店の中を見ているだけですしね」


 マスターにうなずいたしずくは、こうして実際に竜と対面して思ったことを、素直に口にした。


「何というか、最初はあまりにも巨大だから怖ろしく思えたけど、やっぱりこの竜って、クアウラさんたちが話していたほど悪い竜じゃないのかも」


 すると、その言葉を聞いたクアウラが、怯えていたことも忘れて声を張り上げた。




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