44話 しずくの提案
「もしマスターが、その竜の住処に殴り込みをかけたら、ぷちっと踏みつぶされるか、口から炎を吐かれて一瞬で焼き蛇にされそうだよね……」
「しずくさん? さりげなくひどいことを言っていませんか?」
しずくのつぶやきを聞いたマスターが、憮然としている。
「……ごめん。でも、もしもマスターが、巨大な竜と戦うことになったら、体格の差からして、そうなりそうじゃない?」
「む! 確かに体の大きさでは負けていますが、ぼくには魔法があります。たとえ相手が竜でも負けることはありえません!」
「おお! では、マスター様は、われわれの頼みをお引き受けくださるのでしょうか?!」
途端にクアウラとワトルが目を輝かせながら席を立つ。
だが、そんな彼らに釘を刺したのはしずくだった。
「ちょっと待ってください。クアウラさんたちの依頼をお引き受けするかどうかを決める前に、その竜の言い分も聞いてみたいのですが、それは可能でしょうか?」
「は? それは、ヴィリオーサ様に直接会って話をしたい、ということでしょうか?」
意外なことを言われて目を丸くする二人に、しずくがうなずいた。
「どちらか一方だけの意見を聞いて判断を下すのは公平じゃないですよね? だから、竜がどうして生贄を求めてくるのか、まずは理由を確かめるべきだと思うんです」
「ふむ。しずく様の言い分には、確かに一理あるかもしれませんね」
「ですが、ヴィリオーサ様に関する話や文献を見る限り、僕らの質問に答えてくださるとは、到底思えません!」
理解を示すクアウラとは対照的に、否定的な言葉を吐くワトルにしずくが言い返す。
「あの、さっきからずっと気になっていたんですけど、さっきからワトルさんたちが竜について話していることって、どれも人づてに聞いたり、文献に書かれていたことばかりですよね?」
「まあ、確かにその通りですが──」
「それならやっぱり、話が真実かどうかは、実際に神竜に聞かないとわからないのでは?」
すると、やり取りを見ていた三匹のシュクレドラゴンが、きゅるきゅると騒ぎ出した。
「確かにしずくちゃんの言う通りきゅる。噂だけで物事を判断するのはダメって、普段からあるじ様が言ってるきゅる」
「もし、火炎竜さんが悪い竜じゃなかったら、大変なことになるきゅる」
「ももは、何も悪いことをしていないのに懲らしめられたら悲しいきゅる」
その言葉を聞いたクアウラとワトルが、困惑して顔を見合わせた。
彼らは、今までに聞いた話や文献の内容が間違っている可能性については、少しも考えたことがなかったようだ。




