37話 もう一度やったら出禁!
「まさかこの店には、マスター様以外にも、神がおわすのですか?!」
「この店の者ではないけれど、常連客の中に困った神がいてね。昨日神気を振りまいたのは、彼で間違いないと思う。これからは二度とこんなことを起こさぬよう、このぼくが、よ~く言い聞かせておくから、どうか今回だけは大目に見てやってほしい」
「わ、わかりました! まさか、神自らが事情をご説明くださるとは──そのお心遣いに感謝致します!」
「原因がわかって安堵いたしました。これで僕らも、不安がっている国民を安心させることができます!」
「万が一、彼が再びシグベルムの民に迷惑をかけるようなことがあれば、即刻出禁にするから、どうか安心してほしい」
「で、出禁、でありますか!? わ、わかりました! 国民にもそのように伝えます!」
目が据わっているマスターの容赦のない物言いに、犬人族たちが動揺している。
新規開店した時のことといい、今回のことといい、不用意に騒動を招く〈白い死神〉に対し、マスターが腹を立てているのは明白だった。
そのうち、小鳥さんは、激怒したマスターに焼き鳥にされるのではないだろうか。
とても心配なしずくである。
「ところで、マスター様のような神が、何故このように辺鄙な辺境の地へ?」
「ああ、実はしばらくの間、ここで喫茶店を開こうと思ってね」
「ははあ、そういうことだったのですね」
「事後承諾になってしまって、済まないね」
「いえ、この場所は、わが国が定めた国境の外ですから、何の許可も要りません」
「むしろ、マスター様のような神が、たとえ短い間でも、わが国の近くにご滞在くださるのは、とても有難いことです!」
聞けば、彼らはシグベルムの神殿に仕える高位神官で、新たにやってきた神と突然出現した謎の建物について、国を代表してわざわざ確かめに来たらしい。
(そっか。だから、この店に入って来た時、あんなに緊張していたんだね)
いくら国から指示された事とはいえ、恐慌をきたすほどの神気を持つ神がいると思しき店に入るのは、さぞかし恐ろしかったことだろう。
彼らを気の毒に思ったしずくは、せめてものお詫びにプリンを持って行ってあげた。




