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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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36話 元凶はやはり……

「今現在は、長命種族の古い文献に(わず)かに記録が残っているだけで、ヒト族が生きているという話は聞いたことがありません」

「それなら、何故あなたは私を見て、ヒト族だと思ったのですか?」


 しずくが首を傾げながら尋ねると、シェパードの犬人族は、何故かマスターに目を向けて、ごくりとつばを飲み込んだ。


「それは、ここが()()()でしたので──私は、そちらにおられる神が、ヒト族が絶滅する前にあなた様を救い出し、そばに置いて保護しているのかと思ったのです」

「え? じゃあ、あなたたちは、この店に来た時から、マスターが神様だと気付いていたんですか?!」


 驚くしずくを見た犬人族たちが、何故かひどく困惑した様子で、互いの顔を見合わせた。

 黙り込んでしまった彼らに慌ててしずくが説明する。


「ええと、実は私、まだこの世界の事情に(うと)くて、マスターと知り合ったのもつい最近のことなんです」

「──ああ、そういうことでしたか!」


 ほっとした顔をした青年に、すかさずマスターが補足する。


「今の話でわかったと思うが、彼女はこの世界や神々の事について、まだよく知らないんだ。だから、ぼくの事も、今は()()()()と呼んでもらっている」


 その言葉を聞いた犬人族の青年たちは、ハッとした顔になって少しだけ考え込むと、やがて緊張した面持ちでうなずいた。


「あの、さっきの話の続きですけど、どうしてあなたはマスターが神様だと気付いたんですか?」


 しずくからおずおずと話しかけられた青年たちが、慌ててマスターから視線を戻して説明する。


「その、正確に申し上げますと、われわれは昨日のうちから、この店に神がおわすことに気付いておりました」

「え? どうして?!」


 思わず素の口調に戻ってしまったしずくに、シェパードの青年が少し言いにくそうな顔をした。


「実は昨日、わが国になんの前触れもなく強大な神気(しんき)が降り注いだせいで、恐慌(きょうこう)をきたす者が続出しまして」


 そのせいで、国中が大騒ぎになったのだという。


「そこで、急いで有識者や高位冒険者を招集して、神気の出所を調べさせたところ、北の草原に見知らぬ建物が現れて、その周辺に恐ろしいほどの神気が満ちている、という報告が──」

「え……」


 思わずしずくが視線を向けると、本物のぬいぐるみのように微動だにしないマスターが、たらりと冷や汗を流した。


「……ますたー?」

「いやいや! 誤解です! 騒ぎの原因はぼくではありません! ぼくは、普段から神気が漏れないように心がけていますし、引っ越しの時だって、きっちり神気は抑えていましたから!」


 マスターは慌てて否定すると、助けを求めるように犬人族たちに視線を送った。


「そ、そうですね、マスター様からは、ほとんど神気が感じられません。私は、特に神気に敏感なのでどうにか気付くことができましたが、普通の者であれば絶対にわからないと思います!」

「じゃあ、この店の周りに神気が満ちているっていうのは──」


 その時、しずくの黒いコックコートの(すそ)を、しっかり者のネリネがクイクイと引っぱった。


「しずくちゃん、しずくちゃん。その神気って、きっと小鳥さんの神気きゅる! 昨日店に来たお客さんは、小鳥さんだけだったきゅる」

「あ。そういえば、確かに」

「きっと、彼のことですから、サウー砂糖欲しさにこの店を探すのに夢中で、神気を抑えることをすっかり忘れていたのでしょうね……」

「あー……」

「ももは、小鳥さんが店に入って来た時、ちょっとだけ気持ち悪くなったきゅる……」

「それはきっと、外から入り込んだ神気に当てられたきゅるねー」

「小鳥さん、店に入ってからは神気を抑えていたきゅる。きっと、あるじ様に怒られると思ったきゅる」


 犬人族の二人を除いた全員が、一気に疲れた顔になって、ため息をついた。


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