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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第二章 引きこもりの竜と仲直りのチーズケーキ

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31話 草原の中の喫茶店

「え? 嘘でしょ……?」


 次の日の朝。

 しずくが、店舗二階の自室で目覚めたとき、窓の外に広がっていたのは森ではなく、澄んだ青空と見渡す限りの草原だった。

 慌てた彼女が階段を駆け降りていくと、カウンターの定位置に鎮座していたマスターが、店の外にあるプランターへの水やりを終えたごーちゃんたちを、(ねぎら)っていた。


「しずくさん、おはようございます」

「おはよう、マスター! 窓の外を見てびっくりしたよ。お店ごと別の場所に引っ越すって、言葉通りの意味だったんだね!?」

「ふふふ。しずくさんを驚かせたくて、皆が寝ている間に、こっそり頑張っちゃいました!」


 パペットのような外見の白蛇が、得意げに胸を張っている姿は、とてもかわいらしい。


「ねえ、もしかして、マスターって、実は凄い神様だったりする?」

「──それは内緒です」


 茶目っ気たっぷりにウィンクするマスターを見てしずくが笑っていると、ぽてぽてと足音を立てながら、ポピーたちが二階から下りてきた。


「あっ! あるじ様、しずくちゃん! お外に草がいっぱい生えてるきゅるよ!」

「たいへんきゅる! お外が森じゃなくなってるきゅる!」

「ももたち、寝ている間にお引っ越ししてたきゅる!」


 三匹のシュクレドラゴンたちは、しずく以上に興奮しているようだ。


「はいはい。きみたちは少し落ち着きなさい。あとで詳しい説明をしますから、今は朝食の準備を手伝ってください」

「わかったきゅる!」

「お手伝いするきゅる!」

「今日の朝ごはんも楽しみきゅる! しずくちゃん、メニューは何きゅるか?」


 食いしん坊のポピーが目をキラキラさせている。


「今日はね、バターの風味を利かせた、ふわふわのトマトオムレツだよ」

「聞くだけで美味しそうきゅる!」

「今日は、新しい場所でお店を開く最初の日だから、皆でしっかりごはんを食べて、一緒に頑張ろうね!」

「わかったきゅる。頑張るきゅる!」


 マスターの説明によると、ここは昨日までいた大陸の南西に位置する別の大陸で、店を出て南に向かってしばらく行くと、シグベルム共和国という小国があるらしい。


「シグベルムは、獣人族の一派である犬人族が建国した国で、長きにわたって守護神竜(しゅごしんりゅう)に守られていると言われています。一年を通していろいろな作物がとれるので、料理の種類がとても多く、どれも美味しいことで有名です。最近では特に、スイカやメロンなどの果物を使ったデザートがお勧めらしいですよ」

「えっ? この世界にも、スイカやメロンがあるの?」

「ええ。他に、人参やじゃがいも、玉ねぎなどの野菜もありますよ」


 驚いたことに、こちらの世界には、もとの世界の神から分けてもらった作物が数多く存在するらしい。


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