24話 遺言状の中身
「この二枚の遺言状には、二つのことが書き記されていました。一つは、自分の権能の全てを引き継がせるので、これからは、ぼくがあの方に代わって神になるように、というご命令でした」
「でも、さっきの口ぶりだと、マスターはその神様の代わりを務める自信がないみたいだね?」
「ええ。遺言なので仕方なくその通りにしましたが──やはりこのぼくに、あの素晴らしいお方の代わりが務まるとは到底思えなくて」
「そう? そんなことはないと思うけど」
「ありがとうございます。しずくさんにそう言ってもらえるのは、お世辞でも嬉しいです」
「別にお世辞じゃないんだけどな──ええと、それじゃあ、もう一つの遺言は何だったの?」
「もう一つは、喫茶店の店長になれ、というご命令でした」
「……はい?」
予想の斜め上を行く遺言内容に、しずくの目が点になった。
「もっと詳しく言うと、喫茶店の店長になって美味しいお茶や料理を振る舞いながら、困っている客の悩みを解決してあげなさい、という内容でした」
「何で喫茶店?! あ、だからこの店を開いたんだね?」
マスターは、照れたように短い体をくねらせると、こくんとうなずいた。
「今の話を聞いて、ようやく理解できたよ。マスターは、その亡くなった神様の遺言を果たそうとした。だから、経験や知識もなしにいきなり喫茶店を開くだなんて、無謀なことをやらかしたんだね!」
「やらかしたって──まあ、確かにその通りですが、何やら言葉にトゲがあるような……」
憮然としているマスターをよそに、しずくは不思議そうに首を傾げている。
「だけど、わざわざ喫茶店を開いて客の悩みを解決するという、突飛だけどやけに具体的な発想は、一体どこからきたんだろうね?」
普通、「人の悩みを解決する仕事は?」と聞かれて、喫茶店の店長を真っ先に挙げる人はいないだろう。
「何でも、親しかった神様に「かいがいどらま」なるものを見せられた際、喫茶店の店長が客の悩みを聞きつつ颯爽と事件を解決していくのを見て、とても感銘を受けたとか」
「何なの? その俗っぽい理由は!?」
しずくは、思わず頭を抱えたくなった。
「──というか、その親しくしていた神様って、絶対に向こうの世界の神様だよね?!」
「ちなみに、実際に喫茶店を開く時は、ぜひともおしゃれなカウンターにサイフォンを並べてほしい、とも書かれていました」
「……」
主従そろって、まず形から入ろうとするところは一緒なんだなー、としずくは遠い目をした。




