23話 マスターの身の上話
(え? これって一体どういう反応なの?)
白蛇は、目を見開いたままで、静止画像のように固まっている。
「ごめん、知り合いに大勢神様がいて、小鳥さんに強く出られるくらいだから、てっきりそうなのかなって思ったんだけど」
「あ、ああ。そうですよね。そう思うのが自然ですよね!」
マスターは明らかに動揺しながら、そこでいったん言葉を止めると、ミルクティーをちびりと飲んだ。
「んんっ! 今の質問ですが、しずくさんが思っている通り、実はぼくも、この世界において神と呼ばれる存在です」
「やっぱりそうだったんだ! ちなみにマスターは、何の神様なの?」
「済みません、その点については、お教えできません」
「……まさか、マスターって名前を聞くと呪われるような神様なの?」
顔色を悪くしたしずくに、マスターが慌てて否定する。
「ち、違いますよ! ぼくは、祟り神とか邪神のたぐいじゃありませんからね!?」
「良かった! それを聞いて安心したよ!」
「実は、天音さんとの約束で、ぼくが自分から正体を明かすことは禁じられているんです」
「え? そうなの? でもどうして?」
「多分、ぼくの正体を知ったら、しずくさんが変に気兼ねすると思ったのではないでしょうか。まあ、そもそも、ぼくみたいな者が神を名乗ること自体、間違っているんですけどね……」
「あれっ? マスター、急に影なんか背負って、どうしちゃったの?」
「せっかくですから、ぼくの話を聞いてもらってもいいですか?」
「う、うん……」
マスターは、少ししょんぼりしながら、自分のことについて語り出した。
「今からずいぶんと昔のことですが、ぼくは、とある素晴らしい神の眷属でした」
「眷属、ということは──マスターは、その神様にお仕えしていたんだね」
「ええ。ぼくがお仕えしていた神様は、とても賢くて慈悲深い方でした。ですが、やむを得ない事情により、この世界にはいられなくなってしまったのです」
「つまり、その神様は、今はもういないってこと?」
マスターは悲しそうにうなずいた。
「ですが、あの方は、この世界からいなくなる前に、ぼくに遺言状を残しました」
そう言うと、マスターは何もない空間から、B5サイズの仄かに光る紙を取り出した。
「いつもは、神域で保管しているのですが──」
「その光る紙が、神様の遺言状なの?」
マスターが静かにうなずいた。
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