210話 一級冒険者チームもびっくり
「では、出発する。全員くれぐれも警戒を怠るなよ!」
リュトナーの号令を合図に、行方不明者を全員救出したしずくたちは、迷宮の奥に続く通路を歩きだした。
あえて来た道を戻らずに、先に進むことにした理由は、トトスの権能で現在地を確かめた所、さっきまでいた小部屋が、遺跡があると見なされている迷宮の最奥にほど近い場所だと判明したからだ。
この先に進むのは危険では? と、しずくは不安に思っているのだが、ポケットの中に居るマスターは、この判断に賛成のようだった。
「ふむ。確かに、遺跡が近いとわかったからには、調査してから戻るべきでしょう。調査後は迷宮最奥に居座る魔物を倒して、出現した転移陣で一気に出口まで転移すればいいのですし」
「え? 出口に行ける転移陣があるの?」
「ええ、ありますよ。迷宮とは、もともとそういう風に作られているものですからね」
この世界のあちこちに幾つも存在する迷宮──それらは、この世界の魔力が濃い場所に自然発生する謎の空間で、「瘴気がないのに魔物が湧く」「宝箱が出る」「打ち捨てられた死骸や物は、時間と共に吸収される」「壁や床を壊しても再生する」「たまに内部の地形が変化する」などという、不思議な性質を持っている。
そして、マスターが今話していた、「最奥の部屋の魔物を倒せば、出口に繋がる転移陣が出現する」ということも、これらの不思議な性質のうちの一つなのだそうだ。
遺跡が現在地から程近くにあることを知らされた時、このまま先に進むことを最初に提案したのはサナクで、冒険者たちも反対しなかった。
サナクは念願だった遺跡調査ができ、冒険者たちは新迷宮の初踏破という栄誉を得ることができるからだ。
「確かに、迷宮初踏破という称号には強く心を惹かれるが、それよりも大切なのは君たちの身の安全だ」
「もし、お嬢ちゃんとちびが危険にさらされるようなら、すぐに引き返すからな!」
「右に同じ」
〈烈剣〉の男性陣は、最奥を目指すことに同意はしたものの、しずくとネリネに対しての過保護ぶりは全く変わらず、唯一ニーリャだけが、「あんなに凄い氷魔法があるなら、危険な目に遭うことなんてないっしょー」と笑っていた。
このまま迷宮の最奥を目指すことが決まった時、遺跡調査団の団長であるサナクは、「とうとう念願が叶う!」と興奮しながら、コサギに何度も感謝の言葉を告げていた。
「君たちが助けに来るまでは、もう生きては戻れまいと絶望していた吾輩たちに、まさかこんな展開が訪れるとは思わなかったであります! 今の吾輩の目には、君が本物の〈幸運の女神〉のように見えるでありますよ!」
『ふふっ。それは光栄ね』
そんな会話を、そばで黙って聞いていたしずくは、コーヒーをガブ飲みしながら酔っ払う〈幸運の女神〉を思い出し、思わず吹き出しそうになるのを必死に堪えていた。
「さっきの魔物は、一級の俺たちでも手こずるような、厄介な奴なんだが……」
「なあ、リュトナー。まさか、俺らを助けに来る時から、ずっとこんな調子だったのか?」
「ああ。俺がこの剣を抜くことなんて、ただの一度も無かったよ」
〈薄暮の星〉の三人が言葉を交わすうちに、また一体、こちらに気付いて咆哮を上げようとした魔物が瞬時に凍らされた。
迷宮の中心に近づくにつれ、これまで以上に強力な魔物と出くわすようになった一行だったが、ますます冴えわたるマスターと〈白い死神〉の連携により、冒険者たちが戦うまでもなく、魔物は全て氷漬けにされて、息の根を止められていた。
小鳥さんはノリノリです\(^o^)/
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