209話 行方不明者を発見!
『どうやら見つけたみたいね』
トトスをすくい上げて肩に乗せたコサギが、ゆっくりと両開きの扉を開けると、中は小部屋になっており、疲れ果てた姿で座り込んでいるサナク博士を守るように、肩で息をしながらこちらに武器を向ける冒険者たちの姿があった。
「リュトナー! まさか、俺たちを探しにきてくれたのか!」
「料理人の君たちが、どうしてここにいるでありますか?!」
入ってきたのが味方だと知った冒険者たちが喜ぶ一方で、驚いたサナクがよろよろと立ち上がる。
自分の仲間とサナクの無事を確認したリュトナーは、短く安堵の息を吐くと、彼らの元へと駆け寄った。
「みんな、良く無事でいてくれた──」
まるで、張り詰めていた糸が切れたかのように、目頭を熱くして床に膝をついたリュトナーの代わりに、コサギが手短に状況を説明した。
「そうでありましたか。逆にあの転移罠を利用してここへ──幾ら吾輩たちを助けるためとはいえ、それはまた、ずいぶんと無謀な真似をしたでありますね。もし転移先が全く別の場所だったら、その時はどうするつもりだったのでありますか?」
サナクから、非難めいた視線を向けられても、コサギは口元に浮かべた笑みを崩さない。
「あら。そんな心配はするだけ無駄というものだわ。だって、転移先が別の場所になるだなんて、私に限って絶対にありえないことですもの」
「? どうして、そう言い切れるのでありますか?」
両耳を後ろに反らせたサナクが、戸惑ったようにコサギを見上げると、彼女は思わず見惚れずにはいられないような、輝かしい笑顔で彼を見返して、一言だけ告げたのだった
「だって私は、〈幸運の女神〉なのだもの!」
ようやく緊張を解いたサナクと冒険者たちは、全員何かしらの傷を負っていた。そのため、しずくはネリネと手分けしながら、彼らにも上級回復薬を飲ませていった。
コサギの神力で底上げされた薬の効果はてきめんで、重傷と言っていい程のひどいけがも、あっと言う間に完治させてしまった。
「この回復薬、古傷まで綺麗に治しちまったぞ。おまけに、驚く程に飲みやすい!」
「ホント! こんなに飲みやすい回復薬は初めてだわ! 一体どこで買ってきたの?」
「ごめんなさい。私はただ、事前に用意されていた薬を持ってきただけなので、ちょっとわからないです! それよりも、今は一刻も早く調査団の皆さんと合流するためにも、とりあえずおなかを満たして体力を回復してください!」
そう言って、冒険者たちからの質問をぴしゃりと遮ったしずくは、ハムや野菜、チーズや卵を具材にした、一口大のロールサンドの詰め合わせを手渡していった。
これは、歩きながらでも手早く食べられるようにと、彼らのために急いで作った携帯食だ。
「なあ、頼むよ。さっきの回復薬、どこで手に入れたのか、俺に教えてくれないか?」
「おじさん、ちょっとしつこいきゅる!」
「そんなことよりも、今は早く食事を済ませてください!」
ロールサンドの箱を渡そうとしたしずくに、なおもしつこく絡んでくる二級冒険者の男の前に、ニーリャが割り込んだ。
「食べる事より回復薬のほうが大事ならー、その美味しそうなロールサンド、うちが代わりに食べてもいーよねー? おじさんは、回復薬があればお腹が満たせるみたいだしー」
「あっ! ま、まて、俺が悪かった! この通り謝る! だから、それを返してくれ!」
ニーリャに箱を取り上げられた男が、しずくに謝罪して慌てて取り返す。しずくが、小声で礼を言うと、ニーリャはニっと笑って、ウィンクして見せた。
優しい表情でネリネ頭を撫でる彼女は、他の仲間たちと同様に、しずくたちの事を気にかけてくれているようだ。




