21話 盛況の理由
開店初日につき、招いたのはマスターの知り合いの神だけである。だから、こんなにも疲れ果てるほどに店が賑わうのは、本来ならあり得ないことだった。
だが実際には、侍ゴーレムたちが店を訪れたあたりから急に客足が伸び始め、遂には外に待機列ができるほど、店には大勢の客が詰めかけた。
「最初はてっきり、知り合いのみんなからこの店のことを聞いた神が、物珍しさでやって来たのだとばかり思っていたのですが──」
だが、店内が満席になり、外に客が行列を作るほどの盛況ぶりは、どう考えても異常だった。
そこで、疑問を覚えたマスターが、全く面識の無い客にそれとなく尋ねてみたところ、意外な答えが返って来た。
──実は、あの〈白い死神〉が、『おさとう、さうーのおさとう!』と狂ったように連呼しながら飛んで行くのを見かけましてね。それで、何ことかと思って、興味本位であとを追って来たら、この店にたどり着いたのですよ!
「つまり、ぼくらが開店初日から目を回すような状況に陥ったのは、全てあのバカ鳥──〈白い死神〉のせいだったんですよ!」
当の〈白い死神〉は、閉店間際になってマスターに叩き出されるまで、ティーカップに顔を突っ込みながら、自分が飲み干したサウー砂糖入りミルクティーの残り香を味わっていた。
ちなみに、そんな彼とやむを得ず相席になった客は、『おさとう、おいしい』というつぶやきを繰り返し聞かされる羽目になり、食事をしながら怯えていたので、見ていて気の毒だった。
「お店が大繁盛したのは〈白い死神〉さんのせいだったきゅるか~」
「もう少しで、忙しすぎて倒れるところだったきゅる……」
「まあ、確かに凄く大変だったけど、お客さんたちはみんな喜んでいたみたいで良かったよ」
「ドリンクも軽食もデザートも、どれもおかわり続出でしたからね。よっぽどしずくさんの料理が美味しかったのだと思います」
「ぽぴーは、しずくちゃんの料理を見ていたら、おなかがすいたきゅる……」
「ねりねは、オムライスが食べてみたいきゅる」
「ももは、プリンが気になるきゅる」
ポピー、ネリネ、モモの三匹が、物欲しそうな顔でぽっこりとしたおなかをさすっている。
その時しずくは、忙しさのあまり昼食をとっていなかったことに、ようやく気が付いた。
「うわっ、ごめんね! お昼抜きで働いてたら、おなかがすくのも当然だよね」
「でも、貯蔵庫にあった料理やデザートは全て出し尽くしてしまいましたから、もう食べられる物がありませんよ?」
「きゅる~」
「悲しくて力がでないきゅる……」
「おなかがすいたきゅる」
「大丈夫! それなら、残っている食材で何か作るよ。だからみんな、もう少しだけ待っててね!」
空腹のあまり、へなへなと床に座り込んでしまった三匹のために、しずくは貯蔵庫に行って食材を見繕うと、急いで料理を作り始めた。




