207話 驚く調査団の人々
先行するのはコサギと、先程〈白い死神〉の魔法に度肝を抜かれていた豹人族の青年──レオーギス帝国からやってきた一級冒険者チーム、〈薄暮の星〉のリーダーを務めるリュトナーである。
彼らの後ろを行く、しずくとネリネの両側には、「心配」という文字を顔に貼り付けた〈烈剣〉のドウリグとギットが、そして最後尾には楯役のウバンリと、ようやく棺桶の中から目覚めたばかりの女性魔導士ニーリャが、周囲を警戒しながら後に続いている。
「本当なら、俺は君たちのような小さな子供を、こんな危険な任務に同行させたくはないのだけれどね!」
「いいか、お嬢ちゃんとちびは、絶対に俺らのそばから離れるなよ!」
当初、行方不明者を捜索しに行くのは、リュトナーとしずくたちだけの予定だったのだが、しずくやネリネの事が心配で堪らないドウリグたちが、「俺たちも一緒に行かせてくれ!」と強くごねたために、このような編成になっている。
「ごめんねー、うちらって全員、子供を見ると放っておけなくてさー」
そう言ってけらけらと笑うのは、艶やかな銀髪をツインテールにした女性魔導士のニーリャである。
目が覚めるような美しい少女だが、実は〈烈剣〉の中では最年長であるらしい。
『はーい。それじゃあ、今から転移罠を作動させるから、みんな少しだけじっとしててね』
「は? 転移罠を作動させる?! 一体どうやって──」
大部屋に入るなり、さらっとそんなことを告げたコサギにリュトナーが目を剥いていると、大小無数の転移罠が床に現れて光り出したのと時を同じくして、次々と魔物が現れた。
大部屋の外からその光景を見ていた冒険者たちが、悲鳴を上げる。
「おい、やべえぞ! 早く部屋から出ろ!」
「みんな、早く逃げて!」
だが、今にもしずくたちに襲いかかろうとしていた魔物たちは、瞬きする間もなく凍り付いて、氷のオブジェと化していた。
「は?」
「どうなっているんだ?!」
調査団の人々が唖然としている中、コサギは何事もなかったかのように指示を出す。
『じゃあ、悪いけれど、力のある男性陣は、こっちの大きな転移罠から、邪魔な魔物をどけてくれるかしら?』
「あ、ああ」
「こ、この転移罠の上の魔物をどかせばいいんだね?」
「……。承知した」
たった今目の前で起こった事が理解できずに固まっていたリュトナーとドウリグ、ウバンリの三人は、コサギの呼びかけで我に返ると、急いで凍り付いた魔物をどかし始めた。
さほど時間をかけることなく、彼らが作業をやり遂げたのを見届けると、コサギが満足そうに微笑んだ。
『じゃあ、もう一度転移罠を発動させるから、今度は、全員ではぐれないように手を繋いでね』
「わかったきゅる!」
「みんな、輪になって手を繋ごうよ!」
しっかりと手を繋いだしずくたちが乗った転移罠が再び光り出すと、次の瞬間、大勢の冒険者たちが見ている中で、彼女たちの姿が大部屋から掻き消えた。
同時に、部屋中を埋め尽くしていた転移罠も全て消え、後にはカチンコチンに凍り付いた魔物の死骸だけが、取り残された。
「……今、俺の目の前で何が起こったんだ?」
「え? ええっ? 本当にわざと転移罠を発動させて、転移しちゃったの?!」
残された冒険者たちが騒然としていたその頃、 姿を消したしずくたちは、魔物の死骸が打ち捨てられた部屋に転移していた。




