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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第四章 世界に背を向けたエイと思い出のつみれ汁

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204/211

204話 コサギの正体

『つまり、彼らは魔物と一緒に転移してしまった、ということかしら?』

『たぶん、そう』

『ぷ!』

「なるほど。では、こうして全員が通路に退避しているのは、いつまた転移罠が発動するのか、判断がつかないからなのでしょうね」


 神々のひそひそ話を耳にしたしずくとネリネは、さっと顔色を変えた。


「じゃあ、今すぐにでも、サナク博士たちを助けにいかないと!」

「いまごろ、転移先で魔物に囲まれて、大変な事になっているかもしれないきゅる!」


 だが、あわあわと焦る彼女たちを落ち着かせたのは、コサギの一言だった。


「大丈夫。こ(・)の(・)私(・)が(・)い(・)る(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)彼らは無事よ。だから、今は先にけが人を治療しましょう」


 確信に満ちた顔でそう告げるコサギに、しずくとネリネは、思わず顔を見合わせる。


「どうしてコサギは、転移してしまった人が無事だとわかるの?」

『だって、私(・)の(・)権(・)能(・)が(・)あ(・)れ(・)ば(・)、(・)最(・)悪(・)の(・)事(・)態(・)は(・)起(・)こ(・)ら(・)な(・)い(・)のだもの。だから、ほら。ここには大勢のけが人がいるけれど、薬や魔法で完治できない程の重傷を負った人はいないでしょう?』

「そう言われてみると、確かに──」

「どういうこときゅる?」


 ぐるりと周囲を見回して、ますます困惑するしずくたちに、苦笑したマスターが種明かしをする。


「しずくさん、実は、コサギの持つ権能は、〈良い運を呼び込む力〉なんです」

「……良い運を呼び込む力?」

「まだわかりませんか? 彼女の正体は──」





「幸運の女神?!」


 〈幸運の女神〉ミューレ──それが、コサギの正体だった。




「その名前、どこかで見た覚えがあるきゅる」

「確か、チャルトリク王国の神殿に神像があった女神様だよね?」


 目を丸くしているしずくたちにうなずくと、コサギは美しい女神の微笑みを浮かべた。


「〈幸運の女神〉ミューレ──彼女は、この世界で名の知れた神の一柱で、強い神力を持っています。これまでの旅で、ぼくらがいつも幸運に恵まれたのは、実は彼女の権能のおかげだったんです」

「そっか。それで今まで、運よく宿が取れたり、旅を助けてくれる人たちに巡り合えたんだね!」


 思い返してみれば、最初からコサギは「自分なら旅の役に立てる」と自信満々だった。確かに、〈道案内の神〉のトトスと同様に、彼女が最強の助っ人であることに間違いはない。


『私の〈幸運〉の権能にかけて、絶対に死人は出させないわ!』


 力強くそう告げたコサギは、しずくがけが人の治療用に預かっていた回復薬に、自分の神力を込めると、わざとらしく驚いてみせた。


『あら? しずくが調査団から預かっていた回復薬は、幸(・)運(・)に(・)も(・)全て上級回復薬だったようねえ』

「! ありがとう、コサギ!」


 〈幸運の神〉の加護がかかった上級回復薬を手に、少しも休むことなくけが人たちを治療して回ったしずくとネリネは、混戦の中で手持ちの回復薬を使い切ってしまった者や、魔力切れを起こしていた治癒魔法使いたちから、手放しで感謝された。


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