↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第四章 世界に背を向けたエイと思い出のつみれ汁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
200/214

200話 いま南大陸で話題になってるアレ

 それから小一時間後。

 大部屋の壁際に設けられた、横長の調理台の上にある魔導コンロには、五つの巨大な寸胴(ずんどう)鍋が並んでいた。

 しずくが調理していた時から、部屋中に広がるスパイスの香りを嗅いでいたせいで、冒険者たちの胃袋は、とうに我慢の頂点に達していた。


「皆さん、お待たせしました! 料理を配りますので、済みませんがお皿を持って順番に並んでください!」


 しずくがそう叫んで、鍋の蓋(ふた)を順番に開けていくと、食欲を刺激するカレーの香りが、一気に部屋の隅々まで広がっていった。


「待ってました!」

「このうまそうな香りは一体何なんだ!?」

「カレーっていう料理らしいぞ」

「カレー?! もしかして、いま南大陸で話題になってるア(・)レ(・)か!」

「マジか! 実は俺たち、ついこの間、わざわざターラージャまで行って行列に並んだのに、結局食えなかったんだよ!」

「種類は、肉と野菜と魚介の三種類か。お! 辛い物が苦手な奴のために、シチューまであるのか!」


 シチューは、肉がほろほろになるまで煮込んだデミグラスソースのシチューと、肉が苦手な人のための、野菜たっぷりのホワイトシチューの二種類だ。ホワイトシチューにも肉を入れたい人のために、塩コショウとブイヨンで下味をつけて焼いた鶏肉も用意している。


「付け合わせにはパンとごはん、どちらかお好きな方を選んでくださいね」

「おお! 迷宮の中なのに、白パンが食えるのか!」

「カレーにパンを浸すのもいいですけど、ごはんにかけても美味しいですよ」

「ごはんというのはライスのことか。せっかくだから、両方試してもいいか? カレーは肉のやつで頼む」

「もちろんいいですよ──ドウリグさん! こちらの方はごはんとパンの両方、それと肉カレーです!」

「承知した!」


 料理を配るのは、しずく一人だけではなく、〈烈剣(れっけん)〉の三人が手伝ってくれている。

 見上げるほどにガタイの良い竜人族や、口の良く回る狐人族を相手に、難癖をつけようとする冒険者はいないようで、誰もがおとなしく列に並んでいる。


『はい、どうぞ。飲み物は、自分でコップに入れて持って行ってちょうだいね』

「お酒はないきゅるが、飲み物の種類はいろいろと取りそろえているきゅるよ!」


 シチューを配るコサギの隣では、ネリネが飲み物の案内をしている。


「まあ! お水やお湯以外にも、牛乳や果物ジュース、それにコーヒーや紅茶まであるのね!」

「コーヒーや紅茶には、牛乳やお砂糖を入れてもおいしいきゅるよ! カレーを食べる人は、少し甘くするのがお勧めきゅる!」

「え? 砂糖まであるの?! それなら、コーヒーに牛乳と砂糖を入れることにするわ!」


 まさか迷宮の中で、高価なコーヒーが飲めるだなんて! とウキウキ顔の獣人女性は、砂糖入りのコーヒー牛乳をなみなみと注いで去っていった。

 魔物と戦って汗をかいたせいなのか、冷たい飲み物を希望する者が圧倒的に多く、〈白い死神〉に作ってもらった氷が、もう少しで無くなりそうだった。


「お嬢ちゃんが作った、このカレーって料理、どれもびっくりするほどに美味しいな! さっきは、失礼なことを言っちまって、悪かったよ」

『ふふん。まあ、わかればいいのよ』

「別に気にしていませんから、謝らないでください。それよりも、さっきはお手伝いしてくれて、どうもありがとうございました!」


 得意げに胸を反らすコサギに苦笑しながら、しずくがコーヒーを飲んでくつろいでいる〈烈剣〉の面々に礼を言うと、彼らは、大したことはしていない、と笑いながら首を横に振った。

 ギットも、くしゃりと笑いながら皿を床に置くと、まるで幼い妹に接するように、しずくの頭をフードの上から優しく撫でた。


「お嬢ちゃんのおかげで、こんなに美味い夕食が食えたんだから、ほんの少し手伝う事ぐらい、どうってことないさ──しっかし、本当に美味いなあ。もし、家で待ってるちび共に食わせてやったら、きっとあいつらの事だから、無言のままでがっつくだろうなあ」


 肉と野菜と魚介、三種類のカレーを少しずつよそって食べ終えたギットは、故郷で待っている弟妹を懐かしんでいるのか、とても優しい兄の顔をしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。