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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第四章 世界に背を向けたエイと思い出のつみれ汁

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194/222

194話 カレーに吸い寄せられる人々

「やっぱり、ミナセちゃんのカレーが一番美味しいきゅる!」

『ぷぅぷぷぷ!!』

『この辛さ、少しだけ甘くしたカフェオレと一緒に頂くと最高だわあ!』



 ──そう。彼女が作ったのは、余っていた食材をふんだんに使った、特製カレーだった。


「しずくさん、お疲れ様です。こんなに大量のたくさんカレーを作るのは、さぞかし大変だったでしょう」

「ううん、そんなことなかったよ。野菜や肉を切るのは、ネリネやコサギが手伝ってくれたし、〈刻(とき)知らずの宝具〉のおかげで、あんなにたくさんあった具も、あっと言う間に煮込めちゃったしね! こんなに便利な魔道具をもらえて、本当に良かったよ!」

「そうでしたか。では、今度ゼーヴァに会うことがあったら、皇帝に感謝していることをあらためて伝えてもらいましょう」


 マスターとしずくの目の前にある魔導コンロには、それぞれ野菜カレーと肉カレーが入った二つの寸胴鍋が並んでいて、とろ火でくつくつと煮込まれているカレーが、食欲を掻き立てる香りを食堂中に振りまいている。


「なるほど、炒めた野菜をしっかりと煮て、スープに溶け込ませることで、素材本来の旨みを引き出しているのですね! それが香辛料の複雑な味わいとうまく絡み合って、これ以上ない美味しさを生み出しています──ああ、どうしましょう。先程からスプーンが止まりません!」


 仲間たちだけでなく、ユノラもちゃっかりと同じテーブルでカレーを食べている。

 先程から、ぶんぶんと尻尾が揺れっぱなしなので、どうやらお世辞ではなく、本気で絶賛してくれているようだ。

 

 ちなみに、しずくが二日分のつもりで作ったカレーは、早くも残り半分を切っていた。

 何故なら、彼女が調理をしているうちに、カレーの香りが表通りまで漏れ出てしまい、食欲を抑えられなくなったポノックル商会の従業員たちが、大急ぎで仕事を切り上げて、そのまま食堂に駆け込んで来たからだ。


「お? あのえらく綺麗な女の子が新しい料理人なのか?」

「馬鹿! あれは、会長の恩人でいらっしゃる、ミナセ様で、今夜は特別にカレーを作って下さったんだよ!」

「これが、今ターラージャ帝国で大流行しているというカレーか! まさか、これほど美味いとは!」

「ああ。これなら、帝国民が毎日行列を作るのも納得だな」

「俺は、あまり辛い物が得意じゃないんだが、カレーは別だ! 美味すぎてついつい口にいれちまう!」

「お前が肉好きなのは知ってるけど、騙されたと思って、こっちの野菜カレーも食ってみろよ。あまりの美味さに目が飛び出るぞ?」

「ホントだ! 少しも肉が入ってないのに、なんでこんなに美味いんだ?!」


 カレーを絶賛する従業員たちが一人、また一人とお替りの列に並ぶのを、しずくはにこにこしながら見つめている。


「コサギたちだけでなく、ユノラさんやお店の人たちも気に入ってくれたみたいで、本当に良かったよ!」

「ですが、このままだと、せっかくしずくさんが作ってくれたカレーが、今回の夕食だけで無くなってしまいそうです……」


 せっかくあんなに手間暇かけて作ってくれたのに、とマスターは無念そうにしているが、しずくは全く気にしていない。


「別に構わないよ。もしそうなったら、また作ればいいだけのことだもの。料理の作り手としては、美味しく食べてもらうのが一番嬉しいしね!」

「ほう! 君は、まだそんなに若いのに、殊勝な心がけをしているのでありますなあ!」


 驚いてしずくが振り向くと、そこに立っていたのは、空になった皿を持つ、人の良さそうな猫人族だった。


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